三
虚の両掌から放たれた球のような形状をした塊ーーーそれを私達へと同時に投げ付けて来る
捻りの無い単調な攻撃だ。これを私達が回避出来ないとは思っていないのだろう、だとしたら虚の狙いは…
思った通りだ、回避を取ろうとその場を離れるとその塊は私達を追うようにその方向を変えた。延々と追われるのは面倒だ、早々に消してしまった方が良いか
「ヴェルファウド!罠だ!」
「!」
此方に迫る塊が突如その形を変えた。目の前で弾け、眩い閃光が一面を包み私の目を眩ませる
しまった…!まさかこんな使い方をするとは…!
「…ここら辺?」
「ッ!!?」
視界が安定しない最中に私の目の前で声がした。間違い無い、今の声は虚だ
その声が聴こえたと思うが先か、腹部を強い衝撃が襲う。そのまま凄まじい勢いと共に吹き飛ばされ、城の壁に背中を激突してしまった
「当たってた。ん……まだ目がくらくらする…これはもう止めた方が良さそう」
「ヴェルファウド!!」
私の元へシノノメが駆け寄って来る。虚は俯きながら手で目を押さえて小さく首を振っている
…大した度胸だ。危険を顧みずに敵の懐へ飛び込んで来るとは
先の口振りからするに虚自身も閃光の所為で私の事を視界にはっきりと捉えてはいなかったのだろう、恐らくは閃光が放たれる直前の私の位置を大まかに記憶して魔法を放った
…そうか。虚がそれを出来るのは識らないからか
「おい!大事無いか!?」
「…ああ、すまない」
「……魔法の知識が足りないな。あれがどんなものか魔法を理解していれば不用意に接触しようなどとは考えんぞ」
「……耳が痛いよ」
シノノメが対処出来ていたのはあの塊の性質を理解していたからか…放った本人である虚よりもしっかりと対処出来ている
……私達を相手に虚は自分の思った事を次々試している。どれが私達に効果的なのかを探るように
探りながら楽しんでいる。闘いながら遊んでいる。そうさせた私がこう思うのは何だが…
……侮られているな。自分に湧いた感情を識る為の材料にされている
「んー…うん、戻った。次はどうしようかな」
「…虚」
「何?」
「闘いにおいて一番危険な事は何だと思う?」
「……危険な事?」
首を傾げながら僅かに唸り、虚は思考する。自分の中の答えを探している
答えなど見付からないだろう、それを君は識らないのだから。経験していないのだから。だからそれをする事が出来た
「識らないのならば教えてあげよう。それは相手を見縊る事だ」
「…見縊る?」
「君が今相手にしているのは誰だ」
「竜王サマとおじさん」
「私達二人を相手に遊ぶ余裕など、試す余裕など無い。君は今の一撃で私を屠るべきだった」
虚、君は識らな過ぎる。感情も、戦闘も…あらゆる事を
敵の懐へ飛び込む。相手が隙を見せたのならそれはまたと無い好機だろう
…だが、自身の状態が万全では無い状態でそれを行う?敵がわざと誘き寄せているかも分からないのに?
自分の強さに自負が有るのか、好奇心に負けてなのかは分からないが……君は識るべきだ。それを易々と行う事がどれだけ重大な事なのかを
教えてあげよう、虚。未だ君の識らない感情を
竜王ヴェルファウドが、君に〝恐怖〟を。




