二十八
秤に掛けさせた。選ばせた。救う者を、棄てる者を
どちらを選んでも良かった。強いて言うのなら覇王を選ばずにいた方が後々を考えれば始末が楽になる程度……覇王が戦線に戻れば〝少々〟面倒になりますから
八雲は思っていた通りの表情をしてくれた。頬が緩んだ、愉しかった。天災と呼ばれている八雲の苦渋に満ちた顔。絶望に満ちた顔。他者を見棄てた顔。どれもこれもが全て……全てワタシが求めていたものでした
漸くワタシの思い描く展開になると……そう思っていた
何なんデスか?これは。
ワタシの創った玩具を壊し、そのまま大剣の切先を向けている。向かう魔物へと…では無いデスね。間違い無くあれはワタシへと向けているんでしょう
はい。はいはい。はいはいはい。アナタが此処に居なかったのはそういう事だったんデスね
右方、左方、中央…それぞれに異なる種族達が駆け付け、魔物達と応戦している。あれだけの戦力を街に隠す事など出来る筈が無い、それだけの余裕は彼方には無かった。眼を通してしっかりと確認している
……増援を呼びに行っていたんデスね、アナタ。このままでは勝てないからと、力を貸してくれと…全ての種族を回っていたんデスか
これだけの戦力を直ぐに整えられる訳が無い。計画していたんデスね?いつ呼んでも良いように、駆け付けられるように
一歩、歩を進める。じゃり、と地面が音を立ててワタシの歩みに返して来る
歩を進める。地面が歪む
歩を進める。地面が割れる
歩を進める。進める。進める。進める。潰れる
ああ、つい。うっかり。
潰してしまいました。駒を。何の役に立たない虫螻を
ああ、つい。うっかり。
〝元〟に戻ってしまいました。隠していたのに。アナタ達を驚かせようと、最期の最期にとびきりの絶望を感じて貰おうとしていたのに
いいや、もう良いでしょう。ワタシの正体を知っているのならアナタはワタシのこの姿も見ているのでしょう?
何故アナタがそれを知って、何故アナタがそれを見ているのか……その理由は今も分からないままデス
ワタシを追い続けてきたアナタ。ワタシの前に幾度と無く憚って来たアナタ。ワタシの邪魔ばかりして来たアナタ
アナタ、アナタ、アナタ。アナタはワタシの企みをぶち壊す、アナタはワタシの愉しみを奪う、本当に本当に本当に本当に本当に忌々しい
その仮面の下の顔をぐちゃぐちゃに潰してやろう、四肢を折って、捥いで、アナタの護ろうとした人を動けなくなったアナタの目の前で一人ずつ殺そう、そうしよう
どんな声で乞いますか?止めろと言いますか?頼み込むのデスか?泣いて赦しを乞うのデスか?
愉しみにしましょう。きっとこの闘いの終わりに相応しい…ワタシのこの苛立ちも、胸の靄もきっと晴れる
互いが互いの元へ駆けている
迫り来る駒を斬り捨て進んでいる。勢いは全く衰えない……それどころか斬り進んでいるのに更に疾くなっている
ああそうデス、その強さがワタシは本当に目障りで鬱陶しくて大嫌いだったんデス!!憎々しい程に!!殺してやりたい程に!!
互いが互いの眼前へと迫っている。右腕を振り上げる、彼方は大剣を振り上げている
「全部!!!全部全部ぜぇぇぇぇぇぇんぶ!!!壊して潰して終わらせてあげますねぇぇぇッッ!!!!」
「ああそうだな!!お前の野望を全部壊して潰して終わりだ!!カープリート!!」




