二十七
街を出てスミスさん達と共に二人の元へと駆ける。近付いて行く事にホウセンさんの状態が、八雲さんの様子がしっかりと分かって行く
…ホウセンさんは身体中血塗れになっていた。今闘っている魔物に遣られたのか?あのホウセンさんが?
ホウセンさんがここまで遣られるのは考え難い……何か理由が有る筈だ。中央に居るのが二人だけになったのもそれが関係してるんだろう
……そして
……八雲さんは此方を振り返った。目の前に居る魔物の事を失念して
駆け寄る俺達を見て肩を震わせている。顔を歪ませながら…必死に涙を堪えている
……八雲さんはホウセンさんの命を護る事を優先した。決してダイオンの人達の命を軽視していた訳じゃ無い、顔を見れば直ぐに分かる
…選ばせた。選ばせてしまった。選択を強いてしまった
……俺がもっと早く、上手くやれていればそんな選択をさせなくて済んだ。八雲さんがこんなに心を痛める事も無かった
俺の世界で何度も経験させてしまった事を…この世界の八雲さんにもさせてしまった
「すみません。遅くなりました」
すみません八雲さん。貴女に辛い選択をさせてしまって
「ありがとうございます。ホウセンさんを助けてくれて」
貴女がホウセンさんを選ばずにいたら、ホウセンさんを助ける事は出来なかった。俺達はきっとホウセンさんを喪っていた
「街に現れた魔物は心配しないで下さい。一体たりとも城には辿り着けません」
「れ゛ぇッ、や゛ぁっ……!わ゛た、しッ……!私ッ…!!」
泣かないで下さい。貴女は護ってくれたんですよ
俺達が護ろうとしたものを。命懸けで護ろうとしたものを
誰の命も奪わせない、喪わせない…命を懸けて命を護る。俺達が為そうとした事を
貴女は泣かなくて良いんです。泣かなくて良かったんです…その涙は、その心の痛みは来るのが遅れた俺の所為です
「二人は休んで下さい。俺が闘います」
「…ゼロ、油断すんな。こいつ強いぜ」
ホウセンさんがそう忠告してくれる。そうだろうな、俺が来てからずっとこいつは警戒している
掛かる事をせずにじっと俺の事を見定めている。俺の動きを注視している…俺が仕掛けても対応出来るように。逆を言えば構えていれば対応出来ると思ってる…それだけ自分の強さに自負が有る
一気に魔物へ肉薄し、大剣を真横に振るう。その俺の一撃を躱した魔物は八雲さんへと標的を定め跳び込もうと地面を強く踏み抜いた
「一撃躱せば抜けれると思ったか?」
横を抜けようとする魔物へ大剣を振り抜く。その場で身体を回転させ、二度目の横一閃ーーー八雲さんを噛み砕こうと口を開いていた魔物の上顎と下顎を分断し、そのまま身体を真っ二つに斬り裂いた
断末魔の声を上げる事無く、魔物は黒紫の煙を上げて消滅する
遅いんだよ、お前。その程度じゃリオの疾さに遠く及ばねぇよ
動くのも、仕掛けるのも遅い。創った奴に似ちまったのかな
見てんだろ?見てるよな?お前が大好きな光景が見れる筈だったんだから
斬り裂いた大剣の切先をそのまま向ける。迫り来る魔物達にでは無く、その魔物達の最奥に立つ奴へと
此処からでも分かる、苛立ちが募り募っている事が。奴から滲み出る…溢れ出す圧がそれを雄弁に語っている
お前の事だ、戦力の差に楽観してそこで悠々と皆が苦しむ顔を眺めてたんだろ?最後の最後までお前は最低の糞野郎だったな
ありがとうよ、そうしてくれて。その〝お陰〟で俺達は足りない戦力を揃えられた。魔物に抗える、打ち勝てる戦力を
今からお前を殺しに行く。この闘いに、全てに終止符を打とうぜカープリート




