二十三
ホーが叫んでいる。早く行けと
魔物に肩を噛み付かれ…それでも槍を振るい、魔物に一撃を加え……飛び退く魔物に追撃を掛けようと踏み込んで行く
一撃を貰い一撃を加える……致命傷となり得る攻撃以外を全て受けて反撃を繰り返している
自分の身体の状態を理解しているからこの闘い方をしているんだ……傷付く事を顧みず、魔物を斃す為だけに
後方の魔物が……辿り着いてしまう。ホーの元に
………すまない皆。私はやっぱり駄目駄目だ
護ると言いながら…助けると言いながら結局私は何も出来なかった。為せなかった
駆け出す。全力で一直線に…ホーの元へ
腕を引き絞り、ホーへと掛かる魔物の腹部に思い切り拳を打つ。鈍く強い音を立て魔物が吹き飛び地面を転がる
「…八雲…!何…やってんだてめぇっ…!!」
「私はっ…!!私は嫌なんだっ!!私を私として見てくれた人が死ぬ事がっ…!!」
「馬ッ鹿野郎…!!早く戻れっ!!ダイオンを棄てる気かてめぇはっ!!」
声を荒げ、ホーは何度も私へ戻るよう言い立てる。立つ事すらままならない筈なのに…切り裂かれ、噛み付かれ身体からは多くの血が流れている
今治癒魔法は唱えられない。それを許してくれるような隙をこの魔物は見せちゃくれない
私は何も護れない。自分の言った事も、零也の大切な存在も…何も護れなかった、救えなかった
弱い、ちっぽけな存在だ。私が護れるものなんて高が知れている
……それならば私は…
………私は、自分の目の前で喪われてしまう命を護る。目に映らないものではなく、今目に映る大切なものを
都合の良い考えだと言うだろう。責任を放棄したと言うだろう。分かっている、充分に。それだけの事をした、してしまった
すまない、皆。私は棄ててしまった。皆が護ろうとしたものを。命を懸けて護ろうとしたものを
背中から断末魔が聴こえている。唇を噛みながらその声を一身に受け止める。それ等全てが私の起こした行動によって喪われた……
………断…末魔…?
……聴こえる筈が無い。街の人達は皆城へと避難している…城下町には今誰も居ない筈だ。そして此処からダイオン城は大分距離が有る、ネルネルやリオ…獣人でもなければその声が聴こえる筈が無い
なら……今の声は……?
また…また聴こえた。闘っている音だ、街の中で誰かが闘っている、間違い無い
魔法の気配を感じる。街の方から次々と……沢山の転移魔法が使われている
振り返ってしまった。魔物の事など忘れて…街の方を
「………ぁ……っ……」
駄目だ、泣いちゃ駄目だ
魔物と対峙しているんだぞ、そんな隙を晒しては不覚を取ってしまう
…だが……私がそんな隙を晒しても、魔物がその隙を突いて襲って来ても……お前はきっと護ってくれるんだろう
ーーーその、漆黒の大剣を振るって




