二十二
……驚いた。
思わずその場で見呆けてしまう程…ホーの放った魔法は衝撃的だった
何かしらの策は有るのだと思った。中央の勢力全てをルッシー達の居る右方へと回したのだから
襲い来る魔物達の動向までしっかりと見極め、唱えられるまでの時間を確保し…尚且つ多くを屠れる瞬間を見出し、放った
…炎の最高位魔法、迦具土神を。
間違い無い、見間違える筈が無い。あの青色の炎、周囲を灼き尽くす焔は迦具土神以外有り得ない
使えるなんて思わなかった。ホーはそんな素振りなんて一度として見せていなかった
魔法を使った戦闘も…いや、ホーが魔法を使った所すら見た事は…
……いや。ホーは…何だったっけ、煙草…だかを吸う時だけ炎魔法を使っていた。詠唱などせず当たり前のように、慣れたように、然も自然に
最近はそれを吸う所すらあまり見かけなかったが……魔力の温存をしていたのか?
真意はホーに訊かなければ分からないが…ホーの一撃で中央から向かって来る魔物は殆どが殲滅された。ただホー自身も…やはり魔法は使い慣れてはいない、迦具土神はホーの魔力全てを注ぎ込んだ一撃だったんだろう
後ろ姿を見れば分かる。立つ事すらやっとなのだと…何とか膝は崩れずいるようだが…!?
「ホー!」
私の声が耳に入ったのかは分からないが、ホーは煙を裂き襲い来る魔物の奇襲に掛かる事は無かった
槍を突き、回避した……だがやはり本来の動きとは程遠い、魔力を消耗し過ぎている
…まずい!ホーが魔物の一撃を受けてしまった!直撃はしていないようだが…このままでは…!!
助けに行かなくては…!だが今此処を離れればっ…!
ルッシーの方に向かって来た魔物二匹は互いを犠牲にしながら再生を繰り返し此方へと少しずつ迫って来ている…そしてレイラ達の方からは少数ではあるが抜け出た魔物達が此方へと
動く事が…出来ない…!!動けばカープリートは魔法を放つ、動けばがら空きになった此処を魔物達は難無く抜け街へと入ってしまう…!
だが……!だがこのままではホーが…ッ!?
「…ふ、ざ……けるなよっ……!」
…正面に転移魔法の渦が現出している。そこからまた魔物達が現れている…ホーが殲滅した魔物の数に比べれば少数ではあるが、それでも今闘っている魔物に加えて相手にするのは不可能だ
…駄目だ。助けに行かねば
助けに行かねばホーが死ぬ。速攻で殲滅し街に入り込んだ魔物も全て殲滅する…!!カープリートの魔法は闘いながら食い止める!!
やれるか、じゃない。やるんだ、絶対に!!
「…ぁ……」
そう決めて足を踏み出した瞬間……
直ぐ近くに魔法の気配を感じた。左方でも、右方でも、中央でも無く…私の背後から
……転移魔法の渦が現出している。そこから魔物達が現れ……直ぐに散り散りとなって街を壊し始める……魔皇達に破壊され、無惨な姿になった街を…更に
「八雲ぉっ!!俺に構うなっ!!街の魔物の殲滅を優先しろぉっ!!!」
…ホーの声に顔を向ける。魔物と槍で組み合い…その前方からは現れた魔物達が迫って来ている
街へと顔を向ける。魔物達はどんどんその足を城へと進ませている…街に残る人達が居ない事を理解したんだろう、向かう途中にあるものを手当たり次第に……半端に壊しながら向かっている
どう……したら良い…んだ
足が動かない。どちらにも向かえない。何をしているんだ八雲、早く動かねばならないだろう
何の為に此処で闘っている。
護る為だろう、此処に居る者達を。
打ち勝つ為だろう、此処で闘う者達と。
事態は一刻を争う。早く決断しなければいけない
……決断?何の決断を…?
…ああ、分かっている。分かっている、私は迫られている
私が向かう先が、私が助けると決めた命だ
私が向かわなかった先が、私が棄てると決めた命だ
秤に掛けられている。城に居る人達の命と、ホーの命を
「……はぁっ……はぁっ……!」
息が苦しい。身体が動かない。頭が回らない。
早く動かねば。早く決断しなければ。早く決めないと。早く助けないと。早く見棄てないと。
早く。早く。早く。
歪む。顔が歪んでいく。酷く、酷く
遠くで嗤い声が聴こえた気がした。私の事を嘲笑うかのような……下卑た高笑いが




