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寝て起きたら異世界  作者: 634
救う者、救えぬ者
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776/824

二十



五大属性の一つ、炎ーーーその最高位魔法〝迦具土神〟。



俺を知る人間…それも昔から知る奴等しか俺がこれを唱えられる事を知らねぇ



そう、今居る俺の配下やレイラ…ライオネル達と出会う前の奴等しか



こんなもんを今回の闘いの計算には入れられなかった。相手の勢力も、強さも分からない以上少しでも魔法を使う事を余儀無くされればこれを唱える事は出来なくなる。そうなったらその計算は何の意味も無くなっちまう



カープリート、闘いながらお前が引き連れて来た奴等を観察させて貰ったぜ。お前は先ず俺達の事を数に物を言わせて体力を、気力を削ごうとしたんだな。そしてその後に…恐らく今転移魔法から現れた魔物で俺達を殲滅するつもりだった




「ッ……ふぅ…っ…!」




結果として勝てばそれで良いと、弱い奴が幾ら死のうが構いやしねぇと…戦力を駒としか見てねぇ。だからこの策が打てたんだろう


優秀な駒を先に送って殺されるよりも、疲弊した状態で闘わせた方が優秀な駒を喪う可能性が低くなるからと



自分が八雲の相手にしておけばその駒を一気に潰される事は無いと踏んだから。そんな魔法を唱えられる奴はもうこの場に残っていないと思っていたから




「どう…だよ…?その考えを根底から覆された気分は?」



武器を杖の代わりにして何とか立ちながら呟く



焼け、溶け…濛々と煙が巻いている。この煙が晴れた時に俺の目の前には何も残っていないだろう


…あの現出した魔物が居た辺りまでは、だが。あれ以降は威力が弱まった迦具土神じゃカープリートに対処されちまってんだろう。そんな事は分かり切ってる





気合いを入れろ。ここからだ、大切なのは



ゼロが来るまで持ち堪えろ。側には誰もいねぇ、俺の後ろには八雲しか残ってねぇ…俺が此処を突破されちまったらそれこそ唱えた意味も無くなる



〝数〟は潰した。左方はレイラが、右方はルシフェルと配下達が、そして正面は今俺が……なら次は〝力〟の有る奴を潰す



来てんだろう?生憎未だ煙が晴れずに見えちゃいねぇが…とんでもねぇ疾さでこっちに来てんのが分かる。地を駆ける音がそれを物語っている




「…ッらぁっ!!!」



煙を切り裂き跳び込んで来た魔物へと槍を突く。それを魔物は身を捻るようにして回避し、俺の顔を噛み砕こうと牙を剥いて来た


首を傾けてそれを躱す。牙の当たる音が耳元で聴こえた


もう一度攻撃を掛けたがそれも魔物に当たる事は無かった。槍の持たない手で放った鉄拳は空を切った…魔物はひらりと身躱し、俺から距離を取ってしまった



…くそっ!分かっちゃいたが身体の動きが悪ぃ…!今くらいの距離なら確実に当てられた筈なのに…!



金色の毛色をした四つ足の魔物…獣のような外見をしてる。大きく裂けた口に真っ赤に血走った瞳、大きな耳…まるで変化したライオネルを見ているかのようだ


俺の周囲を回るように動きながら睨み、低い唸りを上げている…今の攻防で俺の状態は分かってんだろう、それでも安易に掛かって来ない辺り徹底してやがる




「!」




後ろ足で地を蹴ったと思った時には魔物は俺の目の前に肉薄し爪を振り翳していた。咄嗟に身を引いたが…躱し切れなかったか、肩を切り裂かれちまった


直撃はしなかったが…切り裂かれた肩からは血が流れ地面へと落ちて行く。まともに一撃貰えば致命傷は避けられねぇ…か



今の疾さ、そして一撃の強さ……俺の考察は間違って無かったようだ。後から転移魔法から出て来たこいつ等がカープリートの〝力〟って事か



ならやる事は決まってる…その〝力〟を潰す。そうなりゃ残ってるのはカープリートだけだ



 

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