最終話 カナデ(5)
探偵さんには引き続きの調査をお願いしたけどもあれから何も進展はなかった。
私だってすぐに結果が出ないことくらいわかってるつもりだ。だけど、最初の調査では悪い結果だったけども、一つの答えを出してくれたからちょっと期待していた。
それでも警察と違って経過報告だけはしてくれるのだけど。
アキラ君がいなくなって明日で10日。
私以外の誰も事件や事故を疑っていないのがすごく悔しい。最初のころはアキラ君に限ってと言っていた友人たちも、アキラ君の意思でいなくなったんじゃないかと思ってるみたい。
父や母も実家に帰ってくるように強く言うようになった。
身重の私を心配してのことだろうけど、もうアキラ君が戻ってくると信じてないんだと思う。やっちゃんも同じような感じだ。
私は信じてる。
アキラ君は必ず帰ってくると。
でも、それでも不安で胸が締め付けられるように苦しくなる。
自分の足で探すことはできないけども、家にいても何もする気になれなかった。お腹の子供のためにも食事や運動を欠かしたことはない。でも、大半の時間はただ座ってアキラ君の無事を祈っているだけだ。
本当は何か出来ることがあるのだと思う。
でも、いつもなら「こうしたら」と言ってくれるアキラ君がいないと私は何もできない。これから母親になるというのに頼りないのはわかってる。
必ず戻ってくる。
そう信じていても時折に脳裏をかすめるのは「このまま戻ってこなかったら」という不吉な思い。嫌な気持ちに気分がより一層下がってきたところで、体に異変を覚えた。
「うそ!」
濡れた下腹部に手を伸ばすと血が流れていた。もしかして切迫早産だろうかと想像する。妊娠八ヶ月というのは普通に考えて出産時期とは言えないけど、早産が起きる可能性は決して少なくない。それにこんな風に毎日毎日不安に苛まれていれば何が起きてもおかしくないと思う。
「でも、まだ準備できないよ」
赤ちゃんを迎える気持ちはある。でも、その時にはアキラ君が当たり前のようにいて決して一人で向き合うことじゃないと思っていた。
どうしたらいいのかな。
とりあえず病院に電話。それともタクシーで向かったほうがいいのかな。
ああ、もう、わからない。わからないよ。
「アキラ君!! お願い帰ってきて!!」
そんなことを叫んでもしょうがないのはわかっていた。
でも、その時、光とともに聞こえるはずのない声が耳を優しくなでていた。
「……奏。悪い。遅くなった」




