6日目 0時から1時 魔王襲来(10)
自身の胸を貫く光を見て驚愕に彩られる魔王の首がそのまま地面に落下しバウンドする。剣を手放すと同時に新たな光の剣を生み出すと魔王の首を切り落としたのだ。
心臓一つ潰したからと安心はできない。黒騎士のような例外を別にすれば魔王も所詮生き物の理から外れていないことはわかっていた。だからこそ策が効いたのだから。
それでも俺は念のためにと転がる生首を光の剣で貫き力を解放した。
光が魔王の体を侵食していく。ハラハラと魔王の体が端の方から灰になって風に流されていく。すでに死んでいるはずのその顔が何か言いたそうに動いたような気がした。
魔王のいた場所には漆黒の石だけが残っていた。
「アキラ様!!」
俺たちの周囲に張っていた結界を解除してエリノスが飛び込んでくる。
彼女の柔らかい体を抱き留めながら改めて思った。
終わった――。
訳の分からな世界に呼ばれて戦いを強いられ、それでも何とか子供が生まれる前には魔王を討伐しようと思っていた。一か月以内に成し遂げたいと思っていてもそれは難しいだろうなと、心のどこかで考えていたのに結果は僅か6日。
上手くいった方じゃないだろうか。
「怪我はないか」
「ええ、私は何ともありません。それよりアキラ様の方が……ってこともなさそうですね。本当に滅茶苦茶な方ですね。戦いながら自ら治癒魔法を唱えるなんて」
「上手くいってよかったよ。それと結界もな。おかげで倒せた」
「いえ、私は魔王が逃げられないようにしただけです」
「それだけじゃないさ」
結界が閉じ込めたのは俺たちだけじゃない。
物理結界の神聖術は一言で言えば透明な壁を作ることにある。光以外は何も通さない。つまりは密室なのだ。そんな場所で激しく戦えばいずれ酸素はなくなる。それを俺は利用した。密室の酸素濃度を魔王の周りだけ薄くし、俺の周りは一定に保ち続けた。
果たして魔王は酸欠になったのだ。
気づいた時に手遅れ、光の剣が胸を貫いていた。と、そういうわけだった。
「こんな話をするよりも、まずはけが人の治療を先にしよう」
「ふふ、そうですね。アキラ様に偉業を称えるのは城に戻ってからに取っておきましょうか」
明るい笑顔を見せてエリノスが背中を見せる。
魔王との戦いは壮絶だった。俺が力に目覚めるまでは押されていたのだ。その間にやられた仲間は少なくない。辛うじて命をつなぎとめているものもいる。
だとしたら、彼らの治療をしなければならないだろう。それもまた”勇者”の役目じゃないだろうか。そう考えて俺は倒れている兵士の元へと歩いて行った。




