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6日目 0時から1時 魔王襲来(9)

「な、なんなのだ! 貴様は」


 攻撃に転じたからといって、急に俺が練度が上がったわけではない。連続する連撃の合間を縫って魔王の大鎌が俺の体を切り裂く。

 だが、その傷は瞬く間に修復していく。

 

 裂傷が走り血が噴き出す。

 しかし、次の瞬間には傷口から光があふれだし血の跡を残して皮膚が元通りに塞がっていく。

 まるで不死身の化け物を相手にしているようで、その姿を見れば魔王と言えども顔が変わるというもの。実際には傷はつけられ、血を流している以上、ダメージは負っている。

 さらに言えば、回復するために魔力も消費している。

 このままの状態がいつまでも続けられるはずもないのだが、微塵も感じさせないように余裕の表情を崩さない。


「だんだん慣れてきたな」

「っく」


 大鎌との戦闘経験の低さを感じていたが、繰り返していれば慣れるというもの。それもそのはず、身体能力だけを切り取ってみれば魔王に十分に届くのだ。


「ぐはあ」


 初めて魔王の体に裂傷が走った。

 返しの大鎌を振り下ろし、俺に回避行動をとらせて魔王が大きく距離を取る。逃げる先はまたしても俺の間合いの埒外。跳び上がれば届かなくはないが、自由に戦えないリスクを背負うのは危険すぎる。


「エリノス。結界で俺と魔王を閉じ込めろ」

「は、はい!!」


 膝を崩していたはずの彼女もいつの間にか立て直して戦闘の様子を見ていた。そして俺の指示で素早く動き出す。しかし、動き出すのは何もエリノスだけではない。

 こちらの意図に気がついた魔王が舌打ち一つその場から掻き消えた。


「おせぇ」


 エリノスの眼前に現れた魔王を横凪の剣で弾き飛ばす。そのまま追撃を仕掛けて攻防を広げているところでエリノスの結界魔法が完成する。

 周囲に生まれた不可視の壁。

 それが俺と魔王から逃げ道を塞ぐ。


「術者を狙わず、しっぽ撒いて逃げればよかったんじゃないのか?」

「ぬかせっ」


 激しい怒気に顔中に刻み込み振り下ろされる斬撃は鋭く重い。エリノスを狙わずに逃げようとしても叩き落せた自信はあるが、空中戦にならずに済んだと密かにほっとしている。


「閉じ込められたのは貴様も同じだろうが!!」

「そうでもないさ」


 並列思考の生み出すもう一人の俺に回復魔法を使わせる必要はない。激しい斬撃の応酬をしながらも俺は別の魔法に意識を集中させる。

 動ける範囲は半径5メートル程度しかない。

 爆発系の魔法を使えば、余波で自分自身すら傷つけかねない。それがわかっているからこそ、魔王もまた近接戦闘に集中していた。金属の打ち合う甲高い音、汗が飛び散り、互いの息づかいが聞こえてくる。 荒々しい呼吸がどんどん激しくなり、そしてついに光の剣が魔王の胸を貫いた。


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