6日目 0時から1時 魔王襲来(8)
「第二形態だと!? おいおい、ゲームじゃないんだ」
魔力が肉体を守る鎧のように実体化し、爆発的に増大した魔力が圧となって襲い掛かる。さっきまでの威圧にどうにか耐えていたエリノスたちもひざを折っていた。
だが、
「それで終わりか?」
強がりでもなく俺は口にする。
確かに魔王から感じる力は跳ね上がっているのだが、それでもまだ覚醒した俺の方が上だと思えた。
「ほざけっ!」
魔王は叫ぶと両手に魔力の塊を生み出し投げつけてきた。魔力弾を光の剣で打ち払うと、追いかける様にして魔王自身も上空から鋭角に飛び込んでくる。どこから取り出したのか俺の持つ光の剣とは対照的な闇色の大鎌が振り下ろされる。
「ちっ」
真正面から受けるのをさけて大きく飛んだ。
剣や槍と違って攻撃の軌道が読みにくい。刃先を受け止めることはできないが、柄を受け止めたところで刃は俺の体に届くのだ。
しかも早い。
上空から眼前に迫るまでのほんの瞬きの時間。そこから繰り返される連撃も重く鋭い。武器の性質上、振りぬく弧の動きだけかと思えば返しで槍で言うところの石突による突きも入り混じる。
慣れないという意味で言えば剣と剣の戦いですらわずか数日の経験。
それでも剣の動きというのは剣術スキルのお蔭か、軌道を読むのも容易いが鎌は違った。
「がっ」
「アキラ様!!」
わき腹を大鎌の刃先がえぐり取っていった。
鋭い痛みに顔をしかめるも、傷の深さを確認する余裕は一瞬たりとも与えてもらえない。止まらない連続攻撃を凌ぐので精いっぱい。
否、傷は一つに収まらない。
次から次に裂傷が増えていくのがわかる。
「くかかっ、さっきまでの余裕はどうした?」
魔王の口が弧を描く。
対応できない速度ではない。どうしても練度が足りなかった。ステータスだけでは測り切れない付け焼刃のレベルだけの俺と略奪し戦うことで頂点を極めた魔族の王との差が如実に出ていた。
だからといって諦めることはできない。
剣と大鎌の近接を繰り広げながら並列思考で生み出したもう一人の俺が魔法を放つ。至近距離で放たれた火球に魔王も虚を突かれてダメージを負った。
左手をわき腹に添えればどくどくとねっとりして液体がこぼれていた。
傷は浅くない。
だが、わずかに生まれた間隙で頭がクリアになる。
俺は今、魔王から距離を取るために魔法を使ったわけだが近接戦をしながらでもそれができるなら、神聖術もまた然り。戦いながらでも回復は可能ということだ。
それを理解した瞬間、こちらから魔王に飛び込んでいった。もう一人の俺は回復に力を注いぎながら。




