6日目 0時から1時 魔王襲来(7)
力がみなぎってくると同時に脳裏に知識が流れ込んできた。出来るという感覚に従って力を込め光り輝く剣が顕現していた。
「!!?」
魔王の目が大きくなった。驚いているのは魔王だけではない。俺自身もそうだがエリノスやセシル、イーナも全員の目が俺の手の先に注がれている。
「なんだそれは?」
「……光の剣と呼ぶらしい」
俺の中に流れてきた知識によれば、『真なる勇者』に覚醒したものにのみ使えるユニークスキルらしい。ステータスを確認することはできないが、新たな力に目覚めたということだろう。
俺の中に起こった変化はスキルだけじゃない。
身体能力も大幅に上昇したのがわかった。
視力が大幅に跳ね上がり、攻撃の際に生じた粉塵の粒子すら視認できた。人々の呼吸音や集中すれば心臓の鼓動すら聞こえそうなほどに音を拾ってくる。肌感覚は空気の流れから人の位置を知らせ、鼻は戦場のあらゆるにおいを感じ取った。
力強く大地を踏み込むと僅か一歩で魔王の懐まで移動した。驚愕に彩られる魔王だが、予想以上のスピードについてこれなかった俺は絶好の機会を逃してしまう。
ワンテンポ遅れて放った斬撃は後ろに飛びのいた魔王にやすやすと躱される。
「バカな」
いや、避けきれてなかったらしい。
薄皮一枚程度だが、魔王の腹部に赤い線が走っていた。
驚きから怒りへと変化する魔王の顔を見ながら俺は自分の肉体に起きた変化を確かめるように、あえて魔王の周囲を回るように全力で走った。
土煙を上げながら駆け抜け、数周したところで軌道を変えて魔王に背後から切りかかる。
剣の腹を殴りつける様にして受け流すと、魔王が反撃してきた。
遅い。
それが今の俺の正直な感想だ。
さっきまでの魔王の攻撃には速度も膂力も負けていたが、完全に逆転していた。俺の攻撃をギリギリのところで捌き躱そうとしているが、少しずつ魔王の体に傷が刻まれていった。
光の剣は鉄の剣とは桁違いの切れ味を誇るらしい。
それも勇者の特性なのだろうが、あらゆる攻撃をはねのけていた魔王の体を豆腐を切るように切り裂いていた。
「舐めるな!!」
ほんのわずかなスキをついて、魔王が翼を広げて大空に飛び上がった。いろいろと能力の上昇した俺だが、空を飛ばれたら成すすべがなかった。
魔法で遠距離から仕掛けるか、あるいは斬撃を飛ばすか。
どうしようかと思案していると魔王の顔に大きな皺が刻まれた。それとともに増幅する濃密な気配。体から溢れるほどの魔力が紫色の靄となって立ち上る。




