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6日目 0時から1時 魔王襲来(6)

「終わりか?」


 笑みを浮かべて魔王がゆっくりと歩み寄ってくる。

 セシルや数人の騎士は無事だったが俺の方へ歩み寄ってくる魔王を止めようと動くものはなかった。エリノスだけは唯一何かをやろうと動いている。おそらくは結界か何かだろう。

 

「なぜ人族を襲う」

「ん?」


 不思議そうな顔をして魔王が歩みを止めた。

 言葉を交わしたところで意味などないだろう。いたずらに時間を稼いだところで光明が差すとも思えなかった。武器はなくとも魔力にはまだ十分余裕があったが、渾身の一撃が通じなかったというのに何をすればいいのだろうか。


「なぜ人間を襲う? 喧嘩を売りたいのなら龍種にでも挑めばいいだろ」

「龍種か……それも一興だろうな。だが、キエン大陸に挑むのは人族を従えたそのあとだ。まずは貴様ら人族を我の支配下に置かねばならん」

「何のために?」


 龍種という神にも等しいものに挑むのに人間の手が必要とは思えなかった。


「貴様ら人族を奴隷としなければ我らは衣食住のすべてが滞る」

「は?」

「我らは畑を作ることも、家畜を育てることも、糸をつむぐこともしない。欲しいものは力ずくで奪う。それが我々魔族だ」

「なん……」


 自分勝手で程度の低い理由に呆れて言葉を失った。豊かな土地や資源の奪い合いというような戦争ではなく、ただひたすらに搾取するためだけに起こされた戦争。

 魔族は狩りをするか採集によって暮らすような原始的な生き物ということか。そんな刹那的な生き方を変えたいのなら、村を作り国を作り生産力を上げていけばいいのだ。だが、そうするよりも生産力のある人間を奴隷として支配下に置くことを選ぶ。そこに行きつく思考が理解できない。


 四天王というものを組織し、魔王軍を構成して戦争を仕掛けているのだ。

 統治ができないとは思えない。 

 欲望の赴くままに生きるために奴隷を欲している。


「ああ、そういうことか」


 人族と魔族との間に和解の道はない。

 魔族を排除するか、奴隷となるか二つに一つしかないのだろう。

 俺にとっての魔王討伐は元の世界に帰るための手段に過ぎなかった。だが、いま、この瞬間、俺は魔王を倒すことを、倒さなければならないと心の底から思った。


 折れた心に力が戻ってきた。


 いや、それ以上の力を感じられる。

 


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