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6日目 0時から1時 魔王襲来(2)

「何がそんなに可笑しい」

「かかっ、己と我との力の差も理解できぬほどの小物がよく吼えたと思うてな」

「そうかもな。だが、引けない。ただそれだけの話さ」


 目の前の敵を倒さなければ家族の元に帰ることはできない。逃げることもできない状態なら戦って道を切り開くしかない。

 魔王と言葉を交わすとは思っていなかったのか、魔王を取り囲んでいる皆も手を出していいのか迷っているようだ。あるいは隙がなさすぎて手が出せないのか。

 それでもイーナを筆頭とした魔法使いやエリノスはひっそりと呪文の詠唱を始めている。


「ならばかかってこい。貴様に絶望を与えてやろう」


 一撃目は受けてやるぞと言わんばかりに両手を広げて仁王立ちになる魔王に向かって、身体強化を発動して一気にトップスピードで間合いに飛び込んだ。

 剣を失った俺には拳しかない。

 素振りは長い時間やっていたけども、徒手空拳の戦い方はほとんど検証できていない。体術スキルの補正でどうにか拳に体重を乗せることが出来た。


「こんなものか」


 スピードの乗った拳はやすやすと魔王に受け止められると、逆の手が俺の腹に突き刺さった。今まで受けたことのないような衝撃に腹に大きな穴が開いたのかと思ったが、そんなことはなかった。だが、それを確認するまでもなく追撃が入る。

 連続して受けるダメージはもはやどこに攻撃を受けているのか理解できないほど、体中を打ち据えられ続け、最後に左肩に鋭い痛みが走ると同時に体が地面を転がった。


 辛うじて体を引き起こしてみれば、雨あられのように火球や氷塊、稲妻が魔王に向かって降り注いでいた。鋭い痛みの走った左肩に手をやれば、そこには矢が突き刺さっていた。矢はすぐに消滅する。

 魔力の矢。魔王に向かって放たれたセシルの矢を、俺を盾にして躱したのだろう。


 エリノスが走り寄ってくると、俺の状態を見て息をのむのがわかった。


「治療しますね」


 彼女の掌から流れてきた温かい光に包まれる。体中を苛む激痛が少しずつ緩和するのがわかった。骨、筋肉、内臓とズタボロにされた体は徐々に修復されていく。

 だが、俺は立ち上がれないでいた。


 圧倒的だった。

 剣を失い慣れない格闘に挑んだから反撃を受けたというのはただの結果に過ぎない。問題は魔王の攻撃力に対して俺の防御力がまるで通じていないことだ。身体強化魔法は使用している。これ以上、ステータス上の数値を上げることは現状できないのだ。

 それはつまり絶望だった。


 勝てないのか。

 俺は死ぬのか。

 奏や生まれてくる子供に会えないのだろうか。

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