5日目 23時から24時 夜
馬車がガタガタと音を立てながら夜の帳に覆われた街道を進んでいる。
俺の自主トレに触発されて、訓練を始めたセシル。
エリノスも負けてられないと神聖術による結界の展開速度を一秒でも早くしようと結界を張っては消してを繰り返していたが、二人とも魔力の消費が激し過ぎたため早い時間に眠りについた。
静かな馬車の中で一人素振りを続けていたけども、ふと手を止めて馬車の小窓を開ければ涼しい風が入ってきた。俺の知っている夜空と同じように月が浮かび星が輝いている。
星を見ていると奏のことを思い出した。
新婚旅行で行ったドブロブニクでは国境を超えてコトルという街まで小旅行をした。あの街も同じような古都でとても雰囲気がよかった。夜の街を二人で散歩しながら見上げた空には、同じような星空が広がっていたように思う。
穏やかな気持ちが広がっていた。
この世界に来てから奏と子供のために帰ることに支配されていた頭がクリアになったような気がする。呪いを抑える薬の効果もあるのかもしれない。
あの薬は精神安定剤のようなものなのだろう。
もちろん、日本へ戻りたいという意思が薄らいでいるわけではないのだが、気持ちに余裕ができてきたと思う。
それでも考えるのは奏とこれから生まれてくる子供のことばかりだ。
エリノスやセシル、イーナはたぶん一人でも生きていけるタイプの女性だと思う。でも、奏には俺が必要なんだと思う。もちろん奏だって社会に出て仕事をしていたことはあるし、何も出来ないわけじゃない。でも奏にはすごく脆い部分がある。
俺がいなくなって5日も経つけど奏は大丈夫だろうか。
すごく心配だ。
でも、待っていてほしい。
俺は必ず帰る。
だから、もう少しだけ頑張ってくれ。
この空が俺たちのいる世界とつながっているかはわからない。
でも、あるいは広い宇宙の別の場所で奏も空を見上げているのかもしれない。そんな風に思いながら星空を眺めていた。
――――――――――ガッ。




