5日目 12時から13時 VS黒騎士
真っ二つにされた黒騎士が馬から落ちる。
着地し後ろを振り返れば、エリノスたちも馬を止めて駆け寄ってきた。
「待て」
黒騎士の体は真っ二つになっていたが、鎧の中は真っ黒な闇が広がっていた。霧のような影のようなものがゆらゆらと蠢ている。黒騎士からいまだに流れてくる気配を思えば、殺せたとは思えなかった。
「ルセオンを退けただけのことはあるというわけか」
ふわりと浮き上がると影と影が職種のように伸びて互いの体を結びつける。そうして元の状態に戻る黒騎士に騎馬が嘶いた。
「あれは何だ?」
「デュラハンの一種かと」
「それって確か首無し騎士じゃなかったか。いや、それはどうでもいいか。あれはどうすれば殺せる」
「デュラハンには実態がありません。ですので通常の物理攻撃、魔法攻撃も効きません。唯一効果があるのは神聖術だけです」
「なら問題ないな」
エリノスに向かってそういって不敵に笑うと、鉄の剣に神聖術を付与した。
淡く光る剣先をデュラハンに向ける。一度目の剣は槍に止められた。神聖術iを付与したとしても剣を当てることができなければ意味がない。
俺の突撃を黒騎士はやすやすと防ぐ。
「神聖術まで操るか。流石は勇者と言ったところだな。だが、甘いな」
「真っ二つにされた奴が吼えるな」
「かかっ、鎧を切ったところで意味はないわ」
そうだろうなと俺も思う。
黒騎士の体を切り裂いたのは水と風魔法の合わせ技である。イーナに風刃を教わったが、どれだけ試行錯誤してもイメージがわかなった。そこで物理的なものを風で打ち出す方法を取った。使える魔法で作れるものと言えば水だけである。圧縮して密度を高めた水をブレード状にして打ち出している。斬撃の先に発動するようにしたのはイメージを容易にするため。
だが、そこに神聖術を付与することは出来ない。
水魔法と風魔法の同時行使はそれほど難しい話ではないのだ。そもそも、ただの水球を操るのも、火球を打ち出すのにも風を使っている。本来の魔法の使い方と同じかはわからないが、俺はそうしている。
「うぉおおおおおおおお」
森に響く剣戟の音。
甲高い金属と金属のぶつかり合う音が響くが、俺の剣は黒騎士を捉えることはない。俺が斬られることもなかったが事態は拮抗していた。セシルは弓を構えて隙を伺っていた。必殺の一撃は使えないが、彼女の援護はありがたい。一瞬でも隙を作ってくれれば、忌々しい黒騎士を葬れる。そう思っても、その一瞬は中々生まれない。
一般兵たちはそもそも当てにならない。
が、ここにはもう一人いるわけだ。
「神聖なるエイジスの光よ。邪悪なる存在を磔にしたまえ、『ホーリーディバイン』
闇を討ちあ払うような清浄な十字の光が黒騎士の背後に現れる。
「……!?」
「勇者にばかり意識を集中しすぎだ」
俺の剣が鎧の隙間から黒い影を貫いた。この程度で幹部だというのなら魔王に届くのも近いかもしれない。日本に帰れる希望が湧いてきた。
剣に付与した神聖術の光が、強烈な光を発し黒騎士の隙間から広がった。
地面に中身を失った黒い鎧が崩れ落ちた。




