5日目 11時から12時 馬
セシルの知人というミーシャの元へ俺たちは向かっていた。
昼前に戻ってきたセシルに俺が呪われたことと、もしかしたら呪を解く方法があるかもしれないという話をした。
それは可能性というレベルのものでしかないし、本来魔力を枯渇させる行為というのは危険を伴うものである。魔力が枯渇すれば気絶してしまうのは身をもって体験している。
だが、それでも厳密に言えば体内の魔力は0になっているわけではないらしい。生命維持に必要なレベルで魔力を維持されているらしいが、これから行うことに関して言えば完全に魔力を0にしようという試みなのだ。
まずはその治療法が有効か試したいというのが俺たちの考えだった。もちろん、ミーシャが断る可能性もあるのだが、こうして足を運んでいる理由は一重にそこに症状を緩和する薬があるからだ。エンブルームに薬が売っているのであれば、わざわざセシルも馬を走らせる必要はなかった。
エリノスやイーナから見て、俺にはなるべく早めに薬を服用したほうがいいらしい、というよりも正直自覚しつつあった。エリノスの指示で兵士が薬の購入に向かっているけども、セシルの友人の元に向かったほうが早く、さらに言えば治療法を試してくれるかもしれない貴重な人がいるというので馬を走らせている。
「もうちょっと速度を落とせないのか」
「時間を惜しむアキラ様らしくありませんね」
「そう言われると返す言葉がないな」
「ふふふ、冗談です」
そういいながら手綱を捌いて馬の速度をほんの少し緩ませる。
馬というものがこんなにも早くそして揺れるものだとは思わなかった。現代日本に生きる一般人に馬に乗るスキルがあるはずもなく、俺はエリノスの腰に腕を回していた。
「本当に俺と相乗りして問題なかったのか」
「セシルさんとの方がよかったんですか」
「いや、そういう意味じゃなくてだな」
王女であるエリノスと二人乗りとか問題ないのだろうかと思うけども、エリノスが頑として譲らなかったのだ。どうも俺に好意を寄せているらしいことは流石に気付いているのだが、その理由がさっぱりわからなかった。そもそも、俺には嫁がいるわけで知らないふりをする以外になかった。
「どれくらいかかりそうなんだ」
「セシルさんの話では徒歩で半日と言ってましたから一時間もかからないと思いますよ」
「結構かかるな」
「ふふ、一時間なんてあっという間じゃないですか。ほら、横を川が流れていて空気も気持ちいいですし」
鍛えていないと走る馬に乗るのは中々難しいと聞くけども、案外ついてこれているのは高いステータスのお蔭なのだろう。呪いというステータス変化に気を取られていたけども、かなりのレベルアップで身体能力はかなり上がっていた。
「なあ、よく考えたら今の俺の身体能力なら並走できるんじゃないのか」
エンブルームに向かう途中に走った時も相当な速度が出せていた。今ならさらに速度を出せる気がする。
「もう、私と相乗りが不満なのですか」
「い、いや、そういう意味じゃ」
「でしたら、どういう意味です?」
「ほ、ほら、走れば鍛えることもできるわけだし」
「はぁ、アキラ様らしいといえばそうですが、体を休ませることも大切ですよ。二人きりの遠乗りだと思って楽しみましょう」
そうだな、と俺は頷くしかなかった。揺れる馬上で腰に手を回せば、柔らかなものが当たるのを回避する術はどこにもなかった。これは浮気には成らないよなと思いながら、珍しく押しの強いエリノスに言われるがまま俺は馬を降りることを断念した。




