4日目 23時から24時 担ぎ込まれた勇者
アキラ様はご無事でしょうか。
あのお方は少々、いえ、かなり無茶をされるお方です。イーナさんがついてくださっているのでもしものことはないと思いますが……。
「お嬢様、そろそろお休みになられた方がよろしいかと存じます」
「ええ、そうね。リリア、白湯を一杯お願いできるかしら」
「かしこまりました」
イーナさんと交代して街に戻ってきた私たちは伯爵のお屋敷で埃を落としてそろそろ休もうかというところ。私がアキラ様と一緒にダンジョンに潜っている間に、皆が様々な支度を整えてくれていた。本当にいつもいつも有難いと感謝しています。
「お嬢様、こちらを」
「ありがとう」
侍女のリリアが持ってきた白湯で薬を流し込む。
アキラ様と一緒の強行軍にはどうしても体力がついていけません。でも、正直言ってどこまでアキラ様についてけるのかわからないのです。
「リリア、アキラ様は――」
「夜分に失礼いたします。お嬢様、イーナ様と勇者様が戻ってまいりました」
「アキラ様が?」
私ははしたないと思いながらも、扉を自らの手で開けた。早朝までダンジョンに潜るといっていたアキラ様が戻られた。それはつまり何かがあったということ。扉の先にいたエーシャという侍女に案内させてアキラ様の元へと急ぐ。
「それで一体何があったのです」
「お怪我はなされていないようですが、詳しくはイーナ様にお聞きくださいませ」
「わかりました」
アキラ様はベッドの上で静かに眠られていました。その横にはイーナがいたので話を聞いてみます。
「それで何があったのですか」
「レベル酔いですよ」
「レベル酔い? ギガートンを倒した時は大丈夫だったのですが、それほど高レベルの魔物が出たのですか」
「グラストブルがね」
「グ・グラストブル!!」
予想外の答えに王女にあるまじき声が出てしまいました。グラストブルといえば厄災の名を冠する魔物です。王国内でもその被害は数度報告されていますが、一度として討伐されたことはありません。ですが、そんなことよりも。
「セーデガーのダンジョンにそのような魔物が出没したという報告は一度も聞いたことがありません」
「ですよね。ボクもそう思ったんだけど、赤い稲妻に黒い牛に似た体躯は間違いないかと。それにこの魔石です」
イーナさんが取り出した魔石からは尋常ならざる魔力が発せられていた。確かにこれほどの魔力の含有量だとすれば、相当な高レベルの魔物だというのは間違いがないと思われます。
「姿を確認していませんが、森では魔力妨害をする魔物の存在もありました。セーデガーのダンジョンに何かあったのでしょうか」
「ちょ、ちょっと、待ってください王女様。魔力妨害する魔物? そんな話聞いてませんよ。そんな魔法使いの天敵がいるかもしれないところにボクを派遣したんですか?」
「あれ、アキラ様にお聞きになりませんでした?」
「は、いや、そうなの。いや、そうなんですか、いや、え、あいつ……」
「これも魔王の影響なのでしょうか」
「……かもしれないですね。魔王の持つ魔力は生態系に影響を与えるといいますから」
「一刻も早く倒さなければならないということですね。イーナさん。状況はわかりました。アキラ様のことは私にお任せください」
「お願いします。では、ボクも休ませてもらいます」
部屋から出ていくイーナさんを見送り、アキラ様に目を落とす。
本当にご無事でなによりです。こんな風に心の底から心配しているというのに、私はアキラ様に無理難題を押し付けているのです。
アキラ様、私はどうすればいいのでしょうか。




