4日目 15時から16時 ギガートン(2)
考えるよりも先に行動する。
勇者という称号があったところで超重量の足に踏まれてしまえば、地面に俺の魚拓ならぬ人拓ができるだけだ。身体強化に魔力を出来るだけ注ぎ込み、思考加速も発動させる。
上から落ちてくる足の裏を見やり、どの方向に逃げればいいかを瞬時に判断する。人間の足とは違ってほとんど丸に近い形をしたソレから逃げるには、三本ある指のうち、真ん中と右の付け根を目指すのが最善だと、エリノスを突き飛ばすようにしてダイブした。
直後に地響きを感じれば、ぺしゃんこにならずに済んだのだと安堵する。
が、それで攻撃が止んだわけではない。
「エリノス離れろ」
「でも……」
「援護を頼む」
押しのけるようにしてエリノスの離脱を促し、俺はほとんどダメージを与えることのできなかったギガートンに再度挑みかかる。
巨体だからといって動きが遅いわけでもない敵を相手に、どれだけ立ち回れるか疑問だが、少なくとも思考加速と身体強化をしていればギガートンの動きについて行けるという確信はあった。
エリノスは神聖術を操る神官としての力はかなり高い。防御結界や回復魔法、デバフの付与、さらにはアンデッド系の敵に対して大きなアドバンテージがある。だが、単純な直接戦闘の力量としてみれば、この世界に召喚されたばかりの俺でもいい勝負ができる程度だった。
エリノスがデバフを魔法を準備している間に、俺はどう戦うべきかを思案する。単純な斬撃では足りなかった。ならば身体強化したうえでの裂破であればどうだろうか。その上、エリノスのデバフが入ればギガートンの防御力も低下するだろう。
だが、ほかにも何かないだろうか。
俺たちの世界のサイも分厚い皮膚と鋭い角が特徴の生き物だが、確か温度変化に弱かったはずである。このままうまくサイを暴れさせ続ければ、熱中症なり脱水症状なりを誘発できるかもしれない。
だったら、この森を焼くのも一つの手だろうか。
いや、そこまで回りくどい真似をせずともギガートンを火だるまにしてしまえば早い。火魔法の練度が上がった俺の生み出す火球は直径5メートルを超える。つまり、十分な力があるということ。
「神聖なるエイジスの光よ。邪悪なる存在から力の根源を奪いたまえ、『ホーリーウィークニング』
光りがギガートンの大きな体を包み込む。
アンデッド以外の魔物にも聖なる力というのは影響を及ぼすものだ。体内にある魔石が純粋な魔力ではなく呪いと呼ばれる不浄なものを含んでいることからもわかるように。
つまり、神聖術による弱体化が可能ということ。
一定以上の効果を発揮したのは、ギガートンの突進の速度を見れば一目瞭然である。目算で2割から3割は力が減少している。
ここまでお膳立てされれば俺の攻撃が通る可能性も高い。
緩慢にすら思えるギガートンの攻撃を回避しつつ、懐へと飛び込むと身体強化を使いながらスキル『裂破』で剣を振りぬいた。




