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4日目 14時から15時 宝石

 宝箱を開けると同時に俺はエリノスの体を抱き上げ大きく距離を取った。腕の中でエリノスが小さな悲鳴を上げたが、ひとまず聞かなかったことにする。

 思考加速している俺の目には宝箱が大きな口を開ける瞬間が見えていた。真っ暗な箱の中に日の光が差し込んで、中を照らしていく様子がゆっくりと見える。

 そこから煙が上がってきたわけでも、ニードルが飛び出してきたわけでもない。

 だが、すぐに距離を取った方がいいというような勘のようなものが俺の体を突き動かしていた。

 目にしたものは何もない。

 にも関わず、何かが出てきたようなそんな感覚が肌を舐めていた。


「あ、あの……」


 腕の中から上がった声に、今度はしっかりと目を向ける。加速した思考を通常に戻してみると、エリノスが耳まで真っ赤にして腕の中に納まっていた。

 あまりに軽かったせいで、うっかり忘れていた。

 

「ああ、悪い」


 そういってエリノスを下ろしながらも、俺の意識は宝箱に集中していた。


「何かあったんですか」

「いや、何も……ただ、何かがあったような……」

「そう……ですか。でも、気を付けてください。アキラ様らしくありませんよ。罠か判明していない宝箱を不用意に開けるなんて。もしも、何かがあったらどうするのですか」

「あ、いや、そうだな……」


 何もなかったからよかったのだ。と改めて思う。家族の元に帰るために慎重に慎重を重ねてきたつもりだったのに、どういうわけか安易な考えをしてしまったものだと不思議に思う。


「とりあえず宝箱の中を見てみよう」


 これ以上何かが起きることはないだろうが、それでも慎重に宝箱に近づいて中を覗き込んだ。宝箱の大きさは横幅が50センチくらいの長方形であるのに、中に入っていたのは小さな指輪が一つ。エメラルドのような色合いの宝石だが、日本でよく見るような四角形のカットではなく楕円型に仕上げてある。


「きれいですね」


 俺が手に取った指輪をうっとりするような目でエリノスが覗き込んでいる。王族なら貴金属に囲まれていそうなのに、戦いに赴くということもあり装飾品は控えめだった。女子はやっぱり宝石が好きということだろう。

 奏も普段からアクセサリーをつけているわけじゃないけど、それなりの数を持っていたしデートの度に違うのをつけていた。


「俺がもらっても」

「ええ、構いませんよ。でも、ちょっとうらやましいです。その宝石をプレゼントされる奥様のことが」

「エリノスにはそういう相手はいないのか」

「うぅ、アキラ様は意地悪です」

「ん。おい、どうした?」

「知りません」


 急にずかずかと俺の前を歩き始めるエリノスを慌てて追いかける。

 なんなんだ?

 俺は何か気に障ることを言ったのだろうか。

 ああ、王族であるエリノスには政略結婚しか道がないということだからか。相手のことをあまり好きじゃないということかもしれない。


「悪かったよ」

「いいですよ。アキラ様には関係のない――」


 ――ズン。

 腹に響くほどの大きな地鳴りが聞こえてきた。

 

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