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4日目 11時から12時 エンブルーム

 予定よりも早くエンブルームの街に到着した。

 新婚旅行で行ったドブロブニクの街並みを思い出させるような場所で、無性に奏に会いたくなってきた。その街を選んだのは奏が好きな映画のモデルの街かもしれないという触れ込みだったんだが、生まれてくる子にたくさんのジブリ作品を見せるんだろうなぁと思うと、その時は意地でも横にいたいものだと思った。


「それじゃあ、私はここでいったんお別れですね」

「ええ、明日の昼過ぎに東門前で待ち合わせということでお願いします」

「わかりました」


 街に到着して早々セシルは一頭の馬を借りてどこかに向かっていった。彼女との合流は丸一日後。目的のダンジョンはここから一時間ほど掛かるらしいので、俺たちも休んでいる暇はない。


「じゃあ、俺たちも行くか」

「はい。では、この街の領主へのご挨拶から済ませましょうか」

「え?」

「え?」


 俺が何言ってるんだ? という顔をすると、その顔を見てエリノスもまたきょとんとした顔を返してきた。


「領主への挨拶をする暇なんてないだろ」

「で、ですが、今日はこの街に滞在するのですから――」

「滞在? 何言ってるんだ。ダンジョンに行くという話だっただろ」

「そ、それはそうですが、夜は帰ってきますよね」

「いや、往復二時間も掛かるんじゃ時間がもったいない。しかも明日の昼までしか時間がないんだ」


 エリノスだけでなく、ほかの兵たちまで目を丸くしている。

 昨夜、エリノスたちとはダンジョンに行く話で合意していたし、そのことは今朝には全員に伝えられているはずなのだ。どこで齟齬が起きた。

 今後は議事録でも取った方がいいんだろうか。


「……わかりました」

「ちょ、ちょっと、エリノス様。納得しないでください」

「いまはダンジョンに潜るためのチームがないんです。昼と夜の交代要員がありません」


 交代要員か。それは忘れていたな。だが、大した問題でもないだろう。


「とりあえず今からダンジョンに向かって、エリノスと二人で入るだろ。夜になったらエリノスとイーナを交代する。で、朝になったらまたエリノスとイーナを交代させる。それじゃダメか」

「ア、アキラ様と二人きりですか……」


 なぜ、そこで赤くなる。

 もう一人顔を真っ赤にしているのがいた。


「ちょっと、ちょっと、勝手にボクをチームに入れるな。ボクは隊の護衛はするけど、レベル上げのチームには入らないって言ったじゃないか」

「それは『幽遠の尖塔』の話だろ。とりあえず今日一日の話じゃないか。とりあえず夜までは寝てていいから」

「寝てていいからとかそういう問題じゃない!!」

「エリノスはどうだ?」

「喜んでお供しますわ」

「ボクを無視するな!!」


 まったく何が不満なのかさっぱりわからん。王女様ですら文句を言わないのに、ただの魔導士が文句を言うとは、会社なら専務がオッケー出しているのに社員がぶつくさ文句を言うようなものだ。


「そうか、よし、それでいこう。ダンジョンに潜って夜9時ごろに一度入り口まで戻ろう。そこでイーナと交代だ」

「はい」

「はいじゃなーい。だから、ボクを無視するな」

「何だよ。セーデガーのダンジョンが怖いのか?」

「そんなわけあるか。天才魔導士たるボクに怖いものはない」

「じゃあ、いいだろ。よし、とりあえずこのままダンジョンに向かうメンバーと、街に残って物資の買い出し及び夜の交代メンバーに別れよう」


 手をぱんぱんと打ち鳴らして、みんながきびきび動くようにと促した。目指すはセーデガーのフィールドダンジョン。ここで訓練の成果を試そうと思う。

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