閑話 カナデ(3)
アキラ君がいなくなって三日が経った。
警察からの連絡は期待していなかったけど、その通り何の連絡も来なかった。
両親に相談すると、すぐに実家に帰ってくるようにと言われた。出産のときは実家に帰るつもりだったから少し早まるだけといえばそうだけど、アキラ君のことは私たちの家で出迎えてあげたいからと断った。
「アキラ君に限って……」
失踪したことについては、言葉を濁していたけども、私ほどアキラ君のことを信じていないのかもしれない。
「いっそのこと、探偵でも雇ってみたら?」
一人で大丈夫だとは言ったけども、時々どっと不安が押し寄せきてどうしようもなくなる。私と娘を捨てたとは一ミリも考えられないだけに、アキラ君が何かの事件に巻き込まれたんじゃないかと不安になる。そんな私のことを見かねて親友のやっちゃんが昨日から家に来てくれていた。
「探偵?」
「そ、ドラマみたいな探偵はいないかもしれないけどさ、彼らだって人探しのノウハウは持っているんでしょ。警察が何も教えてくれないから、何が起きたかわからなくて不安なんだよね。解決するかはわからないけど、少しはさ”何か”は見つけてくれるかもしれないよ。カナッペの不安も、それでいくらかはマシになるかもしれないし」
「そう……だね。私がこんな精神状態じゃこの子にも悪いし」
「うん、そうだよ。暗い顔はカナッペには似合わないもん」
ほっぺをうりうりとしてくる親友の手を止めて真剣に考えてみる。
探偵か……。
考えたこともなかった。時々新聞の折り込み広告や、ポスティングされているチラシで探偵を見かけることはある。ああいうのは、ストーカーに悩まされる美人さんや、資産家のマダムが旦那の浮気を調査するのに利用するところで、私のような一般人が関わるところだとは考えたこともなかった。
「探偵って高くないのかな。私たちそんなに貯えないよ。赤ちゃんのために用意していた分はあるけど」
「高かったらやめればいいじゃない。考え過ぎはよくないよ。今は特に考えるよりまず行動したほうがいいと思う。私もついて行ってあげるから」
「……ありがとう。でも、探偵なんて知らないし」
「それなら私が知ってるところに行ってみよう」
「そうだな。それなら安心かも」
やっちゃんはいつも私をぐいぐい引っ張ってくれる。私は引っ込み思案な性格が大人になっても治りきってない。もうすぐ子供が生まれて母親になるのに、こんなんじゃだめだと思うけど、なかなか性格というのは治らない。
「ねえ、ところでやっちゃんは何で探偵のことを知ってるの?」
「へ? いや、それはえっと……えへへ」
下手な愛想笑いでごまかされるほど、私とやっちゃんの付き合いは短くない。
「なんで相談してくれなかったの。探偵を雇うほどの何かがあったら、まずは私に相談してよ。私たち親友だよね」
「……ごめん」
「今回だけだからね」
「うん」
「じゃあ、いまからでも何があったか教えてよ」
「うん。えっと二年前何だけど――」
私の家を出た後は、やっちゃんが以前利用したことのある探偵社に向かって歩きながら彼女が探偵を雇った時の話を聞いた。




