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2日目 18時から19時 戦いの後

 目が覚めた。

 どこか知らない部屋の中で、俺はベッドの上に寝かされていたらしい。見知らぬ場所にいるということとは別に、どこか違和感を感じる。ベッドから起き上がって体の調子を確かめてみるが、特に問題はなさそうだ。そもそも、怪我をした記憶はないんだから当然か。

 外を見れば日が沈みかけている。時計を見れば18時22分。日付の表示がないから確かめようがないが、6時間以上意識を失っていたらしい。


 部屋を出てみると騎士が二人も立っていた。見張りということだろう。


「おお勇者様、お目覚めになられたのですね」

「ああ、悪いが状況を教えてくれるか」

「それではこちらに」


 案内されて階段を下りていくと、たくさんのベッドが並んだ大部屋に連れていかれた。そこに寝ていたのはルセオンとの戦いで傷ついた兵士たちである。この世界の治癒魔法であれば、大怪我でもたちどころに直せるらしいが、包帯やギプスで固定しているところを見ると治療が間に合っていないようだ。エリノスが転移したため、この場にいる神官では全員の面倒を見るのは無理なのだろう。


「ルドア様。勇者様がお目覚めになりましたのでお連れいたしました」

「ご苦労」


 左腕を三角巾でつるした偉丈夫。戦闘のサポートメンバーではなく、行軍の指揮を執っていた男だったと思うが、鋭い視線で俺をにらみつけていた。


「ようやく目覚めたか」

「ああ、それで。状況を説明してほしい」

「その必要があるとは思えないのだがな、勇者殿。戦いが始まってすぐに逃げる算段を取り始めた貴様に、何の説明が必要だというんだ? 何が知りたい? あの戦いで死んだ者の名前か? あの戦いで四肢を欠損させたものの名前か? 

 それとも貴様のことだ。この状況でも先に進むことを考えるのか? 再出発の日程? はっ!! そんなものは不可能に決まってるだろうが!! この状況を見ればわかるだろう。 王都の近くで堅実にレベルを上げていればよかったものの、貴様のために無茶な行軍をした結果がこれだ!!」


 周囲に目を向ければ、ベッドの上の者たちも一様に俺に対して憎しみのこもった目を向けている。俺が次の場所を求めたのは事実だ。日中夜の移動を提案したのも事実だ。だが、それと魔王軍幹部の襲来の因果関係はどこにもない。

 大体、戦いの「た」の字も知らない人間を、異世界から拉致して戦いを強要しているお前らにこそ言いたいことは五万とある。

 だけど、興奮している彼らにそれを言ったところで何も聞いてもらえないのはわかり切っていた。ブラック企業で働く俺は理不尽には慣れている。そう、俺にできることはたった一つだけだ。


「済まなかった。みんなを危険な目に遭わせて本当に申し訳なかった」


 ルドアにむかって頭を下げた後は、全員に向かって頭を下げた。それでも足りないのならと、膝をついて頭を地面にこすりつけた。地面しか見えないが、空気が変わったのがわかった。


「許してくれ。俺には死んでいった仲間たちに合わせる顔もない。だけど、俺は勇者なんだ。俺は魔王を倒さなきゃならない。頼む。お願いだから協力してほしい」

「貴様に……貴様に魔王が倒せるのかよ。敵を前に逃げ出すような貴様に!!」

「わからない。いまの俺には多分無理だろう。だからこそ、みんなの協力が必要なんだ。頼む。力を貸してくれ」


 この世界に土下座があるかはわからない。だけど、頭を地面に擦りつけるという状態にはそれなりの効果があったようだ。ルドアが立ち上がると、俺の肩に手入れ立たせてくれた。まだ、その顔から怒りが消えたわけじゃないのはわかった。


「俺には頭を下げなきゃいけない人たちがここ以外にもいるよな。そこに案内してほしい」


 彼の目を見てそういうと、ルドアが黙って背中を見せた。「ついてこい」ということだろうと、ついて行った先にルセオンとの戦いで命を落とした者たちがいた。俺は彼らに向かって同じように頭を下げ、冥福を祈った。


 

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