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2日目 11時から12時 幹部襲来(2)

 敵が圧倒的に強くて絶望的な状況だからって諦めてたまるか!!


「エリノス。俺を逃がすことは可能か?」

「は……い?」


 何を言っているんだこの人はと、そんな表情でエリノスが俺を見た。強敵を前に勇者が逃げる。そんな状況が理解できないのだろう。


「いまの俺は弱い。目の前で繰り広げられている激闘に飛び込んだところで意味がないことくらいわかってる。だが、レベルさえ上げれば魔王にも届くんだよな。俺なら魔王を倒せるんだよな。だったら、いま優先すべきは四天王をここで殺すことじゃなく、俺を生かしてこの場から撤退させることじゃないのか?」

 

 自分の言葉に反吐が出る。

 こんな英雄譚を娘に語ることなんか絶対にできない。だけど、それは無事に帰ることができたらの話なんだ。ここで、俺は死ぬわけにはいかない。家族のためなら汚名でもなんでも浴びてやる。


「それは、そうですが……」


 エリノスは異常なほどに俺に対して期待していた。その熱が徐々に失われていくのがわかる。俺のレベル上げのために遣わされた精鋭たち。それを見捨てて自分ひとり逃げるというのが許しがたいのだろう。

 騎士たちは圧倒的四天王を前に善戦しているように見える。だが、それでも一人、また一人と傷つき地に伏していくのが見えている。全滅するのも時間の問題だった。


「聞いてくれ。何のために俺を召喚したのか、もう一度思い出してくれ。俺が死ねば、また次の勇者を召喚するのか? 魔王を倒せる勇者っていうのは何度も呼び出せるものなのか。もしもそうでなければ、ここで俺を失うことはこの国、いや、この世界すべてに対する裏切りじゃないのか。エリノスは王女様なのだろう。だったら、一個人としての感情でなく、未来を見据えた決断をしてほしい」

「……」


 卑怯で最低な言葉だ。

 何十年と付き合いのあった外注先よりも、安価な業者を選べと会社のトップどもは数字だけを見てあっさりと切り捨てを指示してくる。だが、現場の人間にそんなことは簡単にできるはずもない。

 目の前で戦い傷ついている数十の命と、この世界に生きるすべての人間の命を天秤にかけてみろ、と俺はいったのだ。

 その意味を理解しエリノスが見せるのは底冷えするような視線。


「私はアキラ様に期待しすぎていたようですね。ですが、人類の未来のため、すべてを飲み込みましょう。私の手を取ってください。これは王族の緊急避難用の転移結晶です。これで王城に転移することができます」


 アメジストのような色合いの六角柱の宝石をマジックバックの中から取り出すと、エリノスが魔力を流し込み始めた。

 戦況は最悪。

 騎士たちが倒れるごとに四天王ルセオンの勢いは増していき兵力は残り僅か。


「逃がすか勇者!!」


 防御結界に守られた人間が、勇者であるのは明らかということか。転移結晶にどの程度の魔力が必要なのか、エリノスの顔に焦りが刻まれる。

 俺たちを目指して降り注ぐ氷塊は生き残っていた魔導士に防がれるも、ルセオンは直接俺たちの眼前まで超速で移動してきた。振り下ろされる爪撃はボーグが身を挺して受け止める。

 だが、受け止めた槍をへし折られ、鋭い爪がボーグの体に深々と食い込んだ。


「ぐはっ」


 命を奪う攻撃を受けてなおボーグは俺たちを守ろうと最後の抵抗とばかりにへし折れた槍の先をルセオンに突き刺した。ルセオンが顔をしかめ、槍を抜きボーグを蹴り飛ばす。

 転移結晶が輝き始めた。

 しかし、もはやルセオンと俺たちを遮るものは何もない。

 間に合わない。

 そう思った次の瞬間、ルセオンの胸に一本の矢が生えていた。

 



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