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2日目 8時から9時 朝食 

「マジか……」


 目の前に用意された食事を見て、異世界に召喚されたとき以上に驚いてしまった。俺たちはまだ幽遠の尖塔を目指して移動の真っ最中である。というよりも、エリノスの話では昼夜通しての強行軍でもってしても三日はかかるとのことだった。

 寝食のすべてを馬車の中で出来るように提案したのは俺なので、供されるものはすべて最低限のものになると思っていた。

 しかし、ふたを開けてみれば布団はふかふかでサスペンションの利いた居室内は振動はほとんど感じない。もちろん、多少はある。あるけども、それはゴトゴトと揺れる電車が眠気を誘うように、逆に心地よい睡眠を促してくれた。

 そして、用意された朝食が目の前のそれだ。

 コンソメスープ、スクランブルエッグにベーコン、サラダとフルーツの盛り合わせと、数種類の焼きたてパンが用意されていて、俺が普段利用しているビジネスホテルの数倍は贅沢な朝食である。コンビニで買ったパンを齧りながら客先に向かって車を走らせるのが常識となっている俺には、待遇の良さに恐縮してしまう。


「どうされましたか、お口に合いませんでしたか?」

「いや、そんなことは」


 王族らしく優雅な所作で朝食に手を伸ばすエリノスと相席をしていていいのだろうかという思いと、予想以上の朝食に面食らって手を止めているとそんなことを聞かれてしまった。

 口に合わないはずがない。

 というか、めちゃくちゃうまい。


「俺が無茶ぶりしたとはいえ、ここまでの食事を用意してもらえるとは思わなかったから驚いてたんだ」

「ふふ、アキラ様の歓迎の宴が開かれればこんなものとは比較にならないものをお召し上がりに慣れたのですが、そういうことは望まれないのですよね」

「望まないわけじゃないさ。俺だって飯はうまい方がいいと思っている。これは優先順位の問題だな。豪華な食事よりもレベル上げに重きを置きたい。一日も早く帰るためには、適当な食事で我慢するのも仕方がないって思ってるだけなんだ」

「奥様がうらやましいです。そんな風に思ってもらえるなんて」

「結婚って、そういうものじゃないのか」

「……そうですね。そうかもしれません」


 憂いを帯びたような表情でエリノスが答えた。

 想像するに王族は違うということか。政略結婚とかそういうのが当たり前なのかもしれないな。この手の話題は封印したほうがいいのかもしれない。これからともに魔王退治に向かう仲間との空気が悪くなるのは避けたいものだ。


「これから三日間は馬車の中ってことだよな。これだけ広さもあるし騎士との模擬戦くらいはできそうだな」

「アキラ様は本当に……」

「うん、何か問題でも」

「いえ、わかりました。手配をしておきます」 


 呆れたような顔をされたのはなぜだろう。飛行機や新幹線の中でパソコンで仕事をするのは常識だよな。移動中に何もせずに過ごすのはもったいないのと思うのだが。


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