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2日目 7時から8時 馬屋での騒動

 喧しい物音で目が覚ました。

 見慣れない景色に、どこだろうか、ここはと考えすぐに異世界に召喚されたことを思い出した。


「夢ならよかったんだけどな」


 馬車の小窓から入ってくる光から夜が明けたことが分かる。軽く体を伸ばしながら、馬車の戸を開けて喧騒の正体を確かめた。


「ですから、ここにある馬はすべてこちらの方々が使用するので申し訳ありませんが、お客様にお貸し出来る馬は一頭もないのです」

「で、でも、契約したのは私の方が先じゃないですか。昨日のうちに前金も払っているんですよ」

「もちろん全額お返ししますので、ご理解くださいませ」

「店主、我々は急いでいるのですぐに馬を用意してもらえないか」

「は、かしこまりました」

「そ、そんなー」


 なるほど、俺の言ったプラン――街で馬を交換しながらの強行軍――の弊害ということだろう。がっくりと膝を落としているのはまだ少女と呼べるような幼さの残る面差しの女性だった。


「悪いな。急ぎの用事でもあったのか?」

「急ぎといえば急ぎですけど……」

「行き先は?」

「エンブルームの森の奥にある村ですけど、それが何か?」

「おい、あんた。エンブルームっていうのは、俺たちの目的地の途中だったりするのか」

 

 馬の手配をしていた男に尋ねてみると、一瞬返答に困ったような顔をしてから肯定のジェスチャーを返してきた。


「だったら乗せてやっても構わないな」

「申し訳ございませんが応じかねます。我々の馬車には要人を乗せているのですよ。どこの馬の骨とも知れぬ輩を乗せれるはずがないでしょう」


 王女もいることを考えれば、それは当然だろうな。だけど、俺の所為で他人に迷惑をかけるというのは流石に罪悪感を覚えてしまう。さて、どうしたものか。


「なら、馬の交換をひとまず半分として、残りの半分を次の街で行うという具合にはいかないか。毎回毎回、これだけの数の馬を一か所で用立てるのは難しいと思うんだが?」

「それは……おっしゃる通りでございます。しかし、ご覧のとおり交換作業は進んでいますし、いまさら変更するというのは。次回からはそのような方法を検討ということでいかがでしょうか」

「それじゃ遅いだろ。現に困っている人がいるんだ」

「あ、あの、私のことは大丈夫ですよ」

「急ぎの用があるんだろ」

「それはそうですけど……」

「なら、そんなに簡単にあきらめるなよ。ちなみに馬は何頭必要なんだ」

「一頭あれば十分です」

「だとよ。一頭くらいなら融通してもいいだろ。一番元気なのを残して、次の街で交換すればいい。まだ何か問題はあるか。これで納得できないなら、あっちの馬車で眠っている方を起こして相談することになるけど」

「……くっ、わかりましたよ」


 軽い舌打ちをしつつも、俺の提案を店主に伝えに行ったあたり、脅しは効いたようだ。王女の眠りを邪魔するのは、彼にとってh禁足事項に値するようだ。


「これでよかったか」

「あ、あの、本当にありがとうございます」

「いや、むしろ迷惑をかけたのはこっちみたいだからな、それじゃあ気を付けて」


 しっかりと頭を下げる少女に手をひらひらとさせながら背を向けると、再び自分用の馬車に戻って横になった。寝たのが2時前だったから、睡眠時間は5時間くらいか。まあ、いつもと大して変わらない。エリノスのスタミナヒールが効いているのか、久しぶりの肉体労働というわりには疲れは残ってなかった。

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