2日目 0時から1時 攻略終了
前方から走ってくるゴブリンに対してゆとりをもって魔法を発動させる。
「ウインドカッター」
魔法名とともに俺の掌から放たれた風の刃がゴブリンを真っ二つに切断する。緑色の体液をぶちまけながら地面に伏したゴブリンはさらさらと土に帰っていった。あとに残るのは小さな魔石のみ。
「魔法の発動もかなり滑らかになってきたな」
「さすがはアキラ様です。現時点でも末端の宮廷魔導士には匹敵するのではないでしょうか」
「それは言い過ぎだろ」
どうにも王女様は俺に対してプラス寄りのバイアスが掛かっている気がする。勇者に対する尊敬の心というものもあるのかもしれないが、あんまり褒められると助長してしまうからほどほどにしてほしいものだ。
社畜だった俺はほめられ耐性がないんだから。
「それにしてもすごい魔力量ですね。これだけ魔法を連続使用していて底を尽きないというのは、それだけで驚異的だと思います」
「そんなものか?」
未知の力なのであまり過信するのも問題だと思うが、まだまだ余力はあるように感じられる。
「そうですよ。私も多い方ではありますが、アキラ様の魔力量はとてつもないと思います」
「うーん。なんか漠然としてるよな。攻撃力なんかは数値化されるのに魔力量はなんで数値化されないんだ」
「考えたこともありませんでしたけど、そういわれると不思議ですね」
キョトンとしてエリノスが答えた。ゲームならHPにMPあるいはSPといった数値が必ずあるのにこの世界には存在していないらしい。それが当たり前の世界では疑問にも思わないということか。
「そんなことよりそろそろ皆さん戻ってくるかもしれませんし、ダンジョンの外に出ませんか」
「もうそんな時間か?」
時計の針はもうすぐ1時という頃合いで、イーナやボーグが出発してそろそろ二時間が経とうとしてた。スキルの検証に始まって、体術や魔法の扱いも体にだいぶ体に馴染んできている。日付も変わったのもあって、そろそろ終わりにしてもいい頃あいかもしれない。
「そうだな。そろそろ戻るか」
「はい!」
嬉しそうに返事をするところを見ていると、なんだかんだ言ってエリノスも疲れていたのだろう。部下の状態把握もできないようではリーダー失格である。少し焦り過ぎたのかもしれないな。
エリノスはプリーストの才能があるため、回復術が使えるけども今のところ怪我をしていないのでそれほど多くの出番はなかった。強いて言えばスタミナヒールを使ってもらっているくらいだったけども、王女様にダンジョンの中をずっと歩かせるのは酷だったのかもしれない。
「悪かったな。無理やり付き合わせていたみたいで。だけど、エリノスが残ってくれて助かったよ」
「そ、そんな……お役に立てたのであればよかったですぅ」
なぜか顔を真っ赤にして消え入りそうな声でそういうと俺の後ろをとことことついてきた。よく考えればまだ未成年っぽいし、そんな少女に残業までさせたのは不味かったかなと反省したのだった。




