渡された中身
そして、学園長ことミラナさんとの話し合いが始まる。
「まずは、あの二人が貴方達に迷惑をかけたからその補填だな。少ないかも知れないが、これで許してくれないか?」
ミラナさんは懐から小袋を俺に渡してくる。
まぁ、中身を確認するのは失礼だから、後で見るかと思っていると
「家主、その中身は何が入っておるのじゃ?」
「フラウ、渡した相手が目の前にいるのに確認出来ないだろ」
俺は相手を見て、そう話すが
「いや、見て貰った構わないぞ、それよりもそれで足りるかが心配だがな」
何故か向こうの許可が下りたので、渋々開けてみると
「お金なのじゃ。しかも金貨が三枚入っておるぞ!」
「そうだ、一枚百万フロンの金貨三枚が入っているぞ。それでもし足りなかったら言ってくれるか?」
さっき市場を見て、一フロン=一パルくらいだったから、かなりの額だぞ。
「何を狙っておるのじゃ?」
フラウの言葉でハッとする。
相手は学園長だ、こちらの能力がバレているかも知れない。
俺は、そう思って警戒していると
「そんなに警戒しなくていいぞ。それよりもお前さん達はこの学園都市に何をしに来たんだ?」
やはり、その事を聞いて来たか
「商売ですね。自分は商人で雑貨屋店主なので、この都市で商売が出来たら良いなと思っています」
とりあえず、地盤を固めようと思って話す。
「そうか、君達は商売をしているのだね。なら、私に商品を見せてくれないか?」
なんか、向こうは狙っているような気がするが
「家主、気を付けた方が良いぞ。向こうは何かを勘づいているようじゃな」
フラウが小声でこちらにそう話して来たので
「とりあえず、十等級の回復ポーションを出してみるか」
俺はアイテムリュックから、最低ランクの回復ポーションを取り出す。
すると
「これ、最低ランクの回復ポーションなのか? 作成者は誰だ!」
なんかいきなり立ち上がって大声を出したので
「それは自分が作りましたよ。でも、最低ランクの回復ポーションなんて、駆け出しの錬金術師でも作れるのに、何故そこまで驚くのですか?」
「家主、なんか嫌な予感がするのは妾だけかの?」
フラウが若干震えながら言って来たので
「正直言うと、俺も嫌な予感がして来た」
と返すと
「灰髪の青年、このポーションが本当に作れるなら頼みたい事がある」
「なんですか? あと自分の名前はハルヤです。横にいるのはフラウです」
一応名前だけ伝えておく。
「君達はこの後は時間はあるか?」
「まずは、昼ご飯を食べたいのじゃ」
フラウがお腹が空いている事を話すと
「それなら、我が学園の食堂に向かうか、今日は月曜日だから生徒も沢山いるぞ」
いや、俺は静かに食べたいのだが
「妾も同じ気持ちじゃぞ、家主」
なんかフラウに同情されている気がする。
そして、俺とフラウはミラナさんに連れられて、学園の食堂に向かう。
少し歩いて、一般食堂と書いてる看板を見て、中に入ると
「やはり、混んでいるな」
周りは、大勢の人が席に座って昼飯を食べていた。
ただ、学園長がいるのでこちらを見てくる人が沢山いるので
「とりあえず、ミラナさん移動しないですか?」
あんまり目立ちたく無いと思っていると
「学園長、そこにいる青年と幼女は何者ですか?」
ザ・几帳面といった風貌の青年が声をかけて来る。
「生徒会長、この二人は私が招いた客だ。何か聞きたければ本人に聞くといい」
なんで、こっちに振るんだよ! あと、貴女には呼ばれて無いですよ、と突っ込みたくなった。
「では改めて、僕の名前はムート・イストワールです。このグロース学園高等部の生徒会長をしています。学園長のお客様よろしくお願いします」
やはり予想通りだな。
ただ、生徒会長が会話にはいったから、周りからさらに注目されているのは気のせいか?
そう考えていると
「次は、君達の名前を聞きたいのだけどいいですか?」
なんか引っかかるが、こちらも自己紹介を始める。
「自分の名前はハルヤ、歳は18です」
とりあえず、最低限の情報だけ話すと、次にフラウが話し始める。
「妾の名前はフラウ、歳は8なのじゃ」
フラウはこっちを見てきて頷いたので、俺も頷く。
「平民ですか? それとも苗字を言わないだけですか?」
なんか、不思議がっているので
「それはお答え出来ないです」
とだけ答えておく。
「生徒会長、さっきも言ったが私の客だ。迷惑をかけるなよ」
「これは失礼しました」
生徒会長が頭を下げて来たが、納得してない雰囲気だが
「それじゃあ、ハルヤ君達そろそろ食べに行こうか。生徒会長、また会議の時でも話しましょう」
「わかりました」
生徒会長はそう言って離れて行った。
「それじゃあ、奢るから好きな物を頼んでいいよ」
「いいのじゃな」
フラウがヨダレを垂らしかけながらそう話す。
俺はそれを見て、アイツら大丈夫かとかなり心配になってしまう。
だが、今は前の事を考えないと思いながら歩き始める。