表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/10

第4話:異世界転移

「目が……目がぁぁぁ……っ!」


 図らずも有名なアニメ映画の悪役のようなセリフを呟いた佐藤大輔は、

 激痛に目を押さえて膝をついていた。

 強烈な閃光で一時的に視力を失ったが、

 涙を流しながら視界が回復してくると、

 彼は真っ先に手元の荷物を探った。

 

 集合写真を撮る直前、背後に置いた

「キャリーカート」と「バックパック」

 は、死守した甲斐あって無事だった。


「……よかった。これさえあれば、俺のコミケはまだ終わってない……」


 だが、萌え絵の描かれた紙袋や、企業ブースの大型バッグは見当たらない。

 周囲をキョロキョロと見渡すが、どこにもなかった。

 まだふらつく足取りで振り返ると

 ドンッ、と何かにぶつかった。

そこには瀬戸綴せとつづりがしゃがみ込んでいた。


「ご、ごめん瀬戸さん」

「だ、大丈夫です……。今のは一体……」  


 綴が起き上がりながら周囲を見渡す。

 

 佐藤は直前まで会話していたもう一人の女子生徒、加藤あやかの姿を探した。

あやかは座ったまま手で目を覆っていたが、指の隙間からこちらを見て、

無事を確認し合うことができた。  


 二人の無事を確認して安堵の溜息をつく佐藤だったが、目の前の光景に息を呑んだ。

 石造りの高い天井、妙な紋様のタペストリー。

海外ドラマかファンタジーゲームに出てくるような、お城の広間だ。


「なんだここ? シンデレラ城? まだ舞浜にいたっけ?」

「いやいや、もう東京駅だったろ」  


 誰かの困惑したボケに、冷静に返してしまう佐藤。

 床は石畳で、しゃがみこんだ数名のクラスメートと、

周りをきょろきょろ見渡す者たち

 皆命に別状はなさそうだ。

 周囲には中世の鎧をまとった兵士たちが整列し、槍の石突きが床を叩く鈍い音が響く。

 兵士たちに促され、クラスメイトたちは謁見の間の正面に整列させられる。


「おおぉ……! 奇跡だ! よくぞ来た、異世界の勇者たちよ!」


 正面で両手を広げ、歓迎の意を伝えるのは、煌びやかな冠を戴く男。

 両脇には、まるで映画にでてきそうな王子と、豪華なドレスに身を包んだ王女が座っている

 まだ現実を受け入れられない生徒たちのざわつきを落ち着かせようと

 担任の教師が、震える声で代表して質問を投げかける。


「……ここはどこですか? 今すぐ私たちを元の場所に返して欲しいのですが」

 

 担任の教師が、震える声で代表して質問を投げかける。

 返ってきたのは、衝撃の事実だった。


「残念だが、元の世界に帰る方法は魔王を倒すしかない。貴殿らには、その任をお願いしたい」

「えっ…。」

「そして、これが、魔王の残した「羽根」だ。正体は不明だが、その闇の力は計り知れん」


絶句する佐藤たちの前で、王子風の男が言葉を引き継ぎ、玉座の奥に飾られた「翼」を指し示した。


 それは鳥というより、翼竜の翼を無理やりもぎ取ったような禍々しいものだった。

 クラスメイトたちがその大きさに圧倒される中、佐藤だけは別のことが気になった。


  (……なんだ、あの翼についた妙な模様。どこかでみたことあるような?なんだっけ?)


 記憶の中から何かを手繰り寄せようとするが、どうも思い出せない。


「まるでゲームやマンガにでてくる異世界転移ものだな」


 話を聞きながら、クラスメートが呟く。

 生徒会長の鳴海輝が眉をひそめた。


「知っているのか?」

「会長は…知らないか。ゲームやマンガ読まないしね」

「ああ、あのようなもの読んでいる暇がないからな」  


 鳴海がチラリと佐藤を一瞥した気がした。


(なるほど、会長が俺を毛嫌いしてる理由がわかったよ。人それぞれだけどね)


 佐藤は首をすくめた。自分はモブの中のモブだ。

変に目立ちたくないし、これ以上鳴海に目をつけられるのも御免だ。

 できれば普通に暮らして、普通に帰還させてもらいたい。

 大体、勇者なんて、一人しか当てはまらないだろうな。


「では、これより『鑑定の儀』を執り行う。諸君らがどのような『スキル』を持って召喚されたか、

確かめさせてもらうぞ」  


 神官たちが大きな石碑を抱えて入ってきた。

 刻まれた文字は、地球上のどの言語とも違う。


「あの、この世界の言葉は理解できるのに、文字は読めないんですか?」


 佐藤が近くの兵士に尋ねると、意外な答えが返ってきた。


「この城には、意思疎通ができる特別な魔法がかけられている。

言葉を交わせる者同士であれば理解できるのだ」


「なるほど魔法か……やっぱりここは異世界なんだな。」    

(しかし、翻訳されるのは音声だけか。それは微妙に不便だな…)

 と佐藤は心の中でボヤく。

 クラスメート達は、まだ目の前の光景についていけず、鑑定と言われても二の足を踏んでしまう。


「僕が最初に行こう」


 先陣を切ったのは、クラスのリーダー的存在であり、

誰もが認めるイケメン生徒会長、鳴海 輝だ。


「では、石板の前に立ち、両手で触れるのだ」


 命じられるまま、輝が石碑に触れた瞬間——

 石碑が爆発的な光を放ち、虹色に輝き出した。

 浮かび上がった文字を見た神官が、驚愕の声を張り上げる。


「……おおお! これはッ! 陛下、この者は【勇者】のスキルを習得しておりますぞ!!」

「何だと! まさか一人目からか。素晴らしいではないか!」


 国王が椅子から立ち上がり、謁見の間にはどよめきが走る

 クラスメイトたちも


「さすが鳴海会長!」

「ジャパニーズエンターテインメントに一発合格しただけはあるな!」

 と男女問わず大騒ぎだ。

 だが、神官の驚きはそれだけでは終わらなかった。


「陛下、さらにお聞きください! この者は【聖剣術】、

そして【神聖術】までも有しております!」


「なにっ……三つのレアスキルを同時に所持しているだと!?

我が国始まって以来の快挙ではないか!」


 国王は衝撃のあまりに震え、


  王子と王女がそろって惜しみない拍手を送ると、

それに呼応するように 兵士たちの喝采が鳴り響いた。

 その歓喜の渦は、瞬く間に王都全土へと波及していった。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ