見えない壁④
前方30m先に、誰かが立っている。
シャルも、ジャスティスも、それに気が付いた。
〈ジャスティス〉
「申し訳ないが、少し揺れるかもな」
〈ミドリ〉
「え」
気の抜けた返事をした瞬間、人影が動いた。
人影はどんどんと大きくなっている、こっちに走って近づいてきた。
ジャスティスは、それを迎撃しようとしている。
交戦になりそうなとき、尋ねた。
〈ミドリ〉
「ジャスティスさん、どんな能力で戦うんですか?」
返ってきたのは「ない」だけだった。
相手がこぶしを振り上げ、思いっきり殴りかかってきたが、目の前で何かにぶつかった。
よく見ると、薄い膜のようなものにこぶしが当たっている。
〈ミドリ〉
(…結界?)
それは、さっき街の中に入るときに見かけたものと一緒だった。
「能力がない奴でも、頑張れば結界ぐらい張れるよ」
物陰から、シャルさんが教えてくれた。
〈シャル〉
「あとごめん、俺の能力は戦い向きじゃないから、隠れとくわ」
シャルさんはそのまま、物陰に引っ込んでいった。
一方、こぶしを止められた相手は飛び上がり、距離を再び取った。
殴った方の手首を振っていたので、しっかりダメージがありそうだ。
〈???〉
「結界張るなよ~!!」
うわ、喋った。
〈ジャスティス〉
「それは申し訳ないことをした!!」
うわ、返した。
〈???〉
「その結界、解いておいて~!!」
〈ジャスティス〉
「い い だ ろ う!!」
〈ミドリ〉〈シャル〉
「「良くねーだろ!!」」
なにこのギャグ時空みたいなやり取り。
ホントに結界解いてるし、相手また突っ込んできたよ?
振り上げられた二回目のアタックは、ジャスティスの右手がパシッとキャッチしていた。
ジャスティスも反撃に左フックを仕掛けるが、これも相手が受けきった。
組み合いは、ジャスティスの無慈悲な腹に対する蹴りで、相手が吹っ飛ぶ形で決着した。
〈ジャスティス〉
「うーん、浅かったか?」
相手は、そのあたりに転がったが、すぐにまた起きた。
しかし、明らかにせき込んでいる、ダメージは深そうだ。
〈???〉
「クソッ、これで…」
相手は、腰のポーチから何かを取り出した。あまりに遠すぎて見えない、何をしている?
〈???〉
「これを使う前に名乗っておこう! 俺の名前は、カエデ・ランドルだ!!」
何かを投げた。丸い形状の何かは地面に落ちる前に爆ぜた。
煙がモクモク上がる、煙幕を投げていたのか。
…普通、こういうのは罠を警戒するようなところだと思う。
敵の人数も、配置もわかっていないのに、それでもジャスティスは煙に突っ込んだ。
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まずいな、非常にまずい。
アイツのキックもろに効いたな。これじゃあ勝てるわけがない。
ここは逃げて正解だ。クロダと合流すれば何とかなるだろう。
やっぱり、変なバイトだと思ったんだ。
アイツも誘ってしまったから、もう後には引けないのが辛い。
俺は電話を掛ける。頼む、繋がってくれ、、、 繋がった!
〈クロダ〉
「なんだ? 緊急事態か?」
〈カエデ〉
「あぁ、おそらく敵の大将格なんだけど、パンチが重い、
一旦隠れてるから、どこかしらで合流できれば」
〈クロダ〉
「…三番街の通りを突っ切ったところに、町の中心の交差点があるのは分かるな?」
〈カエデ〉
「オーケー、じゃあそこで」
電話を切る、ふぅ、と息を吐く。これでおそらくは安全に…
〈ジャスティス〉
「電話は終わったか?」
そこから先の記憶は無い。




