NIGHT飛行と夢①
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心が不規則に跳ねる。
私はこれから死ぬかもしれない。
目の前には、「三百人殺し」の女性がいる。
思えば、私は何故ここにいるのだろう。
家を出て、自由を手に入れたと思っていた。
それでも、まだ私は環境に縛られたまま、動く事が出来ない。
彼女が一歩一歩近づいてくる。
…嫌だ、死にたくない。
まだ、私は、自由じゃない。
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さてと、今日は7月29日。
キャルロットさんによれば、三日後が決行日らしい。
僕が任された役割は、警備のクリアリングだった。
防犯カメラは、他の人がやるらしい。
あの取り調べの後、風呂を済ませて、後は寝るだけだ。
そして僕は、今日の分の手帳に何を書こうか悩んでいた。
「何してるのぉ〜?」
「手帳に何を書こうか悩んでるんです」
「ふ~ん、なんで手帳を書いてるの?」
意味なんて考えた事なかった。
ただ、そこに手帳があったからかもしれないし、
何か、大切な事があったかもしれないが、
理由を忘れた僕は、言葉を詰まらせた。
「大丈夫? ごめんね?」
「ああすいません、ちょっと理由忘れちゃって」
「へぇ~」
興味無さそうだな、この人。
「私は、そういう趣味ないんだよなぁ〜」
「そうなんですか?」
「忙しかったんだよねぇ、若い頃は」
「へぇ~」
興味無さそうだな、この子。
「若い頃何やってたんですか?」
「ずっと訓練だよ」
「訓練?」
「そ、能力発現の為の奴」
「どんな事するんですか?」
「いろんな方法でね、死にかけるの」
「…なんでそんな事を」
「定説なんだけどね、「死の淵」「才能」「心」」
「この三つが、能力発現の基礎になるらしいんだよ」
「らしい?」
「言ったでしょ定説って、不確かなの。」
「ま、アタシはすぐ終わってくれたんだけどねぇ〜」
ミーヤさんの目は笑っていなかった。
(発動条件が一生分からない人もいる)
僕は、その話を思い出していた。
直後、サイレンが鳴り響いた。
「緊急事態発生! 緊急事態発生! 一般房囚人の脱走を確認!」
「直ちに捕縛せよ!!」
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確実にあの時だ。
あの時、あの日に、私の潜在能力が生まれた。
無我夢中で暴れた末、最後に立っていたのは私だった。
「三百人殺し」の異名を持つ彼女は、地面に突っ伏して動かない。
いつの間にか降っていた雨に、私は茫然と立ち尽くした。
その後、彼女は連行された。
私は、彼女の捕縛成功をうけて、昇進となった。
あの日から、急速に、すべてが擦り切れて色あせていった。
だからだ
だから私は、病院に戻ってきたんだろう。
ただ退屈だったから、何かをしたくなったから。
私のもう一つの能力は、まだ分かっていない。
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特別収容所を探す、ミドリはそこにいるはずだ。
さっき警備をだまし切れた、私には自信がある。
ここだ、見つけた。
私は、ドアを破り、中に入った。
「…セレちゃん?」
良かった、居たーーーーーーーー
?
切られた?
何処を?
何処から?
ミドリの隣にいるあの子は?
そうだ、あの子どこかで…!
「ちょっと!? 何してるんですか!」
「いや、君を狙ってるみたいだしぃ、とっさに出ちゃったぁ」
「それに、あの子、知り合いだし」
フィンが立ちあがった。
「二年ぶりかな、「三百人殺し」!!」
「やめてよ、その名前古臭いんだから」
全ての牢の鉄格子が不自然に切れ、両者が対面する。
「斬撃、少し遅くなったんじゃない?」
「そっちこそ、平和ボケしてたっしょ?」
囚人が、彼女たちをすり抜け、外に逃げ出していく。
僕はというと、腰を抜かして動けなかった。
「おやおや、ずいぶん大変だね」
気づけば、キャルロットさんが近くにいた。
「大丈夫ですか!?」
「そっちこそだよ、立てるかい?」
僕は肩を貸してもらった。
直後、いきなり両者がこちらを向いた。
「ミドリくんはここにいてねぇ〜
すーぐ終わらせるから」
「ミドリさん、そこで待っててください。
すぐ片付けます」
「…モテモテだねぇ、君」
「…ありがとうございます?」
女の戦いが、始まった。




