↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PAN  作者: hkdyksry
PR
19/35

夜へ③

何で出来ているのか、この階段はいつも大きな音が鳴る。霧雨に濡れて光沢を放つ黒い金属は、亮の踏む一歩の度に、やけに大きな音を響かせた。

 二階の踊り場に立った目の前に、店の入り口がある。もとは勝手口だったらしい扉を流用しているので、ひどく殺風景で、雨ざらしになって床の半分は濡れている。傘立てなんて気の利いたものなどあるはずもないので、亮はたたんだ傘を階段の手すりに引っ掛けておいた。

 ずいぶんと歩いたので、背に腹にと汗をかきシャツがへばりついている。あるいはそれは、降り止まなかった霧雨が大気を介して付着したものかもしれない。亮はジーンズのすそに手を伸ばした。冷たい布の感触が指に触れた。

 一人でこの店に来るのは初めてのことだった。散々街を歩いたが、ついに誰とも出会わなかったのだ。はじめは雨のせいかと思ったが、今までこんな天気がなかったわけではない。汗をかき、雨に濡れることにも倦んだ亮は、少しの気後れはあったが、直接デルフィへ向かうことにした。何にせよ、ここへ来れば誰かは居るはずだ。居なくても、来るはずだ、と。

 重い防音扉を開くと、意外なことに明るい店内が亮を迎えた。といっても、常識に照らせばまだ足りないくらいなのだが、この店にしては珍しいのだ。冷房が効いており、濡れた体には少し冷たいほどの空気が、これもまた珍しく静かな店内を、音楽の代わりに流れていた。

 龍胆がまた勝手に店内を明るくしたのだろう。そう思ってカウンターに目をやったが、姿はない。となれば一番奥のあの席だと、通路を行くと、ソファにもたれかかる七星が、ひとり瞑目して座っていた。

「あら、おはよう。ひとり?」

七星は、目を開けると背もたれにおいていた頭を起こした。眠っていたのかと思ったが、違うようだ。テーブルの上に、銀の皿に載った試験管があるところを見ると、どうやら「キマって」いたらしい。

「誰も来てませんか?」

ソファの脇に立ったまま亮は訊ねた。七星は左右に首を振って小さく微笑んだ。

 もうすぐ二十時。誰か居てもよさそうなものなのに、どうしたのだろうか。今日は別の場所に集まっているのか、それとも何かあったのか。刹那に思惟があって、亮は少し迷った。もう今日は帰ろうか、待つとしても、どこで待とうか。この女は、苦手なのだ。

 だいたい、ジャンキーというものにどう接すればいいのかよくわからない。過剰に鷹揚な態度、半分眠っているような瞳、度々聞こえる鼻をすする音、甘酸っぱい化学的なにおい、もしくは、木香のような鼻につくにおい。

 受け答えの度に、的を射ているようで射ていないような、しかし深いところで真髄に触れていそうな、わからないことを口にするが、それがこの女の持つもともとの特徴なのかドラッグに影響されたものなのか、いまひとつ判然としない。中毒者の典型、暴れたり騒いだり、支離滅裂な言動を起こすといったことは一度もなかったが、それでも、一秒先に何をしだすかわからない、漠然とした不安は付きまとう。慣れの問題なのだろうかと、気軽に接する龍胆などを見ていると思えてくるが、今はまだどうにも落ち着かないのである。

「何か飲む?」

七星がこちらを見上げた。亮はそのひとことで、自身が思いのほか長く考え込んでいたことに気づいた。

「あ、じゃあ、アルコールでないものを」

と、亮は反射的に常のとおりの受け答えをしてしまった。すぐに、その返答が店内に留まることを決定してしまったことに気づき、他人には悟られない程度に表情を歪めた。

 座るようにと七星は勧める。亮は正面の位置に腰を下ろした。どこまでも尻の沈んでいきそうな黒皮の生地には、煙のにおいが染み付いていそうな気がする。亮は湿ったシャツで肌を扇いだ。ぱたぱたと空気を散らし、そうして幻臭に抵抗した。

「エムオっ」

と、七星が珍しく強い声を出した。カウンターの奥に向かい、従業員を呼んだのだ。エムオとは、SМのエム男のことらしい。

 やはり誰がいい出したかはわからないが、戯れにそんな呼び名が生まれ、七星も面白がって使い、いつしか定着してしまったらしい。松前という本名があるのだが、呼ぶどころか覚えてさえももらえず、もう三十も近いのに龍胆ら中学生にまでからかわれている。一応、従業員のような仕事をしているのだが、給料をもらっているわけではなく、その代わりに食事と住む場所、そしてドラッグを提供してもらっている。何故「エム男」なのかというと、ドラッグ欲しさか、それとも七星自身に惚れ込んでいるためか、彼女の全存在を絶対のものとして崇め奉っているからだ。いいつけは絶対に守り、叱責されれば地に頭をこすりつけ、たまに暴力を振るわれるときなど、どこか喜んでいる節がある。それはまさに「奴隷」と称するに相応しい姿だった。

 龍胆らにからかわれたときなどは、一応は大人の尊厳を振りかざし、怒って見せる。八代春美に引けを取らないほどに背は高く、それなりに凄んで見せるのだが、ドラッグのせいでやせ細っているし、「しょせんはエム男」だからと、面白がるだけで誰も怖がってくれない。少々かわいそうではあるが、彼に関しては亮もすでに同じ心境だった。

 主人が呼びつけたのである。すぐにでも飛んでくるものと思われたが、しかしカウンターの奥からは何の応答もなかった。七星と同様に、亮もそちらを向いた。すると、何かが背後から空中を飛び、そしてカウンターの中で割れてはじけた。パリンと、大きな音がした。七星が、テーブルの上にあったグラスを放り投げたのだ。

 何をするんだこの女は。呆気にとられ、変なものを見るような目で見るが、七星は眉ひとつ動かさない。しばらくして、「はいぃぃっ!」という間抜けな声と足音を立てて、奥の部屋からエム男が姿を現した。頭にヘッドフォンを載せ、何故かベルトに手を掛けている。奥の部屋で何かに挿したままにしているらしく、ヘッドフォンのコードが壁のところで引っ掛かり、ぴんと突っ張っていた。

「あんた、またウマ買ってきてたのね」

そういって、七星は緩く握った右手を上下にシェイクした。そして見せ付けるように、卑猥に足を組み替えた。

 亮はエム男の視線が七星の艶めかしい足に集中したのを、はっきりと確認した。しかしすぐに我に還ったのだろう、「すす、すみませんっ」と素早く頭を下げた。そのとき、拍子にコードが外れたようで、大音量が漏れ届いた。

「ああっ、ああっ、」

と、聞こえてくるのは非日常の声である。しかし女ではなく、男の声だ。しかもときたま、何かを叩く音が混じっている。女の声が聞こえた。何か、しきりに怒っていた。

 …笑ってもいいのだろうか? 束の間の三者の沈黙の中で、亮は頬を引きつらせた。七星が何をいったのかはわからないが、エム男が何をしていたのかは否が応にも理解できた。エム男は、やはりエム男だった。

「も、申し訳もござ、ございません!」

と大声で叫ぶと、エム男は奥に消えた。変なBGMが絶えた。七星は笑うどころかやはり表情のひとつも動かさず、戻ってきたエム男に向かっていった。

「何か作って。アルコールじゃないものを」

いや待て。待て。亮は焦った。エム男は何をしていたのだ? ナニをしていたのだ。そんな手で口に入るものに触れられてはたまらないと、ソファを立ち上がり、亮は命令に応えようとしているエム男を呼び止めた。

「いやいいです、自分でやります! 松前さん、ほらグラス、グラスを、」

カウンターへ駆けながら、亮は床を指差した。それを見て、いまさらのように散らばる破片を認めたのか、エム男は嘆声をあげた。近づくとやはり上背があり、とにかくも「大人」なのだが、いかんせんチャックが開いている。ちりとりを手に取り破片を拾い集めながら、「すまねえなぁ、亮」と、エム男は空きっ歯の目立つ口をあけた。いえ、と適当に手を振って、亮はすぐさま目を逸らした。エム男がどうこうではなく、それは単に自分の中の礼節を守っているだけに過ぎないのだが、亮だけが「松前さん」と本名で呼んでいるせいか、エム男はこのように妙になついてきており、困る。亮は冷蔵庫を開け、「orange」と目に付いたビンの中身をグラスに注いだ。エム男はその傍らで、何故だかやけに執拗に、指の腹を押し付けて小さな破片まで逃さず集めていた。

 ソファへ戻ると、七星がちょうどライターを片手に火を点けているところだった。また何かのドラッグかと、先入観をもって亮は直感した。だがその左手に握られているのは普通のタバコだった。

「だめね、ああなっては。喰うことと出すことしか頭にない。人間以下だわ」

カウンターを眺めながら、七星は細い煙を吐いた。店内が明るいため、タバコを持つ手にあるタトゥーが、いつもより明瞭に見える。

 黒点で北斗七星を描き、細い線で結び、それに重ならぬよう、中央に見慣れぬ文字らしきものがひとつ記されてある。そしてそれらを挟んで、黒白の勾玉のような形の絵が描かれている。それは一応デザインの体を為してはいるが、少々無骨で、どうもファッションでしているとは考えにくいものだった。何か意味があるように思えてならないものだった。しかし、それを問えるような相手でもなかった。

 亮はいった。

「ダメって、麻薬中毒が、ですか」

七星ははじめて亮に気づいたような素振りで振り向いた。

「彼はそうね。でも原因はそれぞれよ。快楽を求めて、自己を肯定しているつもりが、いつの間にか否定していて、戻れなくなる。でもそれは正しいのよ。肯定を望むことは、否定を願うことと同じだから」

その左手の指がとんとんと二つ叩き、〈七つ星〉の灰が銀の皿へと落ちた。煙を吐き、七星は亮ではなくどこか遠くを見ている。やはり何をいっているのかわからず、亮は黙っていた。

「心を知らず、だから外に快楽を求める。表面に浮かんだ欲望のみが、彼にとって果たすべきすべてなのね。けど満たされない。叶えても叶えても、満たされない。だから繰り返し、淀んでいく。哀れね。目を閉じ、耳を塞げばそれでいいのに」

髪留めを抜き取り、ハーフアップにしていた髪をはらりと落とすと、七星はふと亮を見た。

「あなたは違うわね。あなたは、自分の心を知っている。それが自分のうちにあることを知っている。心というものを知っている。そしてそれを肯定するために、自らの欲望を否定する街の中に身を投げようとしている。根には風を、鉄に火を、星に闇を。眩しいほどに人間的。素敵だわ」

言葉の終わりに、七星は微笑んで見せた。その瞳と目が重なった。不意に見せた女性らしい柔らかいその笑みが、まるで急に抱き着かれたように感じられ、亮の胸を何かが強く叩いた。思わず目を逸らし、伏せた。

 何をいっているのか、やはりよくわからない。しかしその言葉はどういうわけか聞き流すことが出来ず、心中を浸蝕した。肯定と否定は同じこと? 目と耳を塞ぐ? どういう意味だ?

(この街は、俺を否定している。―俺がそれを望んでいる?)

亮はテーブルに置いたグラスを見つめた。もしそのオレンジの液体が鏡であったなら、眉間にしわを寄せる自らの表情を目にすることが出来ただろう。

 いつもこうなのだ。この女と話していると、いつの間にか、深い森の中を歩かされている。自分はいったい何者なのか、なにを求めているのか、どこへ行くのか。歩いているうちに、それら、いつもの命題たちに結びついてしまう。だからこそ、この女を苦手としているのかもしれない。

 無論、亮はそれらの命題から逃げたいとは思っていない。避けるつもりもない。しかし、享楽を求めて赴いた場所で、突然に訪れる深い森の影は、落差もあって思いのほか心に堪える。

 亮はグラスを手に取った。そして口をつけ、一気に流し込んだ。すると、思いも寄らなかったものが喉を通った。ラベルをよく確認しなかった、リキュールだったのだ。冷たいものが喉を落ち、腹の底で熱くなっていった。アルコールを飲んだことがないわけではないが、空きっ腹に不意打ちとあっては、平静ではいられない。込み上げるものに噎せ、亮は咳き込んでしまった。

 ふと、七星が目に映る。森への導き手は、亮の醜態どころか、先ほどのやり取りをさえ素知らぬ顔で、ソファに深くもたれ、天井ではない遠くを見上げていた。そのまま放られたらしい〈七つ星〉が、銀の皿の上でもうもうと煙をくゆらせていた。

(何なんだ、この女は)

むかつく胸に手を当てながら、亮は恨めしくその姿を見つめた。この女と話していると、何故だか苛立ってくる。しかし実は、この女そのものが不快なのか、それとも、それは切っ掛けに過ぎず自分自身に腹が立つのか、判然としない。わからない。―そう、わからなくなるのだ。何がわからないのか、それさえも。その不安は、岸壁の淵にひとり立ち尽くしている様を想像したときのそれに似ていて、見下ろす穴の、七星という女の底知れない深さが、亮を戸惑わせる。

 ようやく胸のむかつきも収まり、亮は平静を取り戻した。ただし、まだ少し胃のところが熱い。

 視界のうちに、タバコの煙が立ち込めている。不快なものを散らそうと、亮は顔の前の空気を扇いだ。そのとき、入り口のほうで扉の開く音がした。

「あっ、おい居るぞ!」

という声に続いて、どたどたと足音を立てて姿を現したのは、八代春美と後輩たちだった。

「何だあ、お前かぁ」

と、ソファに座るのを亮と認めた八代春美は、あからさまに舌を打った。雨の中を、傘も差していなかったのだろうか。息も荒く歪められた顔からは、水の雫がしとどに流れ落ちている。

「何だよ。居ちゃわるいか」

「龍胆まだ来てねえか。どこ探しても居ねぇんだ、あいつ」

亮の悪態に応えず、八代春美は店内をきょろきょろと見回した。そのとき、ようやく来店に気づいた七星が、背もたれから顔を起こした。

「あら。また来たの、春美ちゃん」

その言葉に、またあからさまに八代春美の態度が変わった。

「あ、はいぃ。いやあ、まだ見つからないんですよ、龍胆の奴ぅ」

頬を緩め、鼻の下を伸ばし、揉み手でもし始めかねないその様を見るまでもなく、亮はすでに理解している。八代春美は、七星のことを好いているのだ。

 春美、という女性のそれとも取れる名についてからかわれることに、八代春美は最も敏感に反応する。「春美ちゃん」と呼ばれると、何度でも、いちいちわかりやすく怒る。しかし七星だけは例外、この得体の知れない女のどこがいいのか亮にはまったく理解できないのだが、それこそぞっこんに惚れ抜いているのだ。

「デルフィへ行こう」と決まっていい出すのはいつも彼であるし、七星がふと席を外したときなどは、あからさまに淋しそうにしている。七星が龍胆や亮や皆に向けてその不可解な言葉を滔々と垂れているとき、八代春美は、絶対に、確実に、寸分も理解していないくせに、誰よりも熱心に耳を傾けている。終始がそんな様子だから、亮は誰に訊くことも聞かされることもなく、すぐにその好意に感づいた。それに限らず、八代春美はすべての感情において開けっぴろげであからさまなのだ。

「春美さん、急がないと。もうオレらだけで行こうよっ」

背後に控えていた伊藤が、巨体の肩に手を掛けてそういった。伸び切っていた鼻の下が見る見る縮み、八代春美は背後を振り返った。

「いや、あいつがいねぇとしょうがねぇだろ。じゃないと勝てないし」

「でもカギが、」

と、伊藤が反論しようとするのを制して、山田が割って入った。カギとは、鍵原のことである。

「とにかく探そう。オレらだけで行ってもやられるだけだ。でも龍胆さんがいれば、だろ? それに、奴らが言ってたのが龍胆さんなら、連れて行かないと話にならないよ、どっちにしろ」

山田は食って掛かろうとする伊藤の肩に手を置き、冷静にそういった。どうやら八代春美の足りない言葉がそれで補足されたようで、伊藤は渋々としながらも異論を降ろした。傍らで、何にもしていない八代春美が、真面目な顔をして大きく頷いていた。

「手伝おうか? 何かあったのか?」

亮はいった。事情は知らないが、とにかく大変そうな様子である。申し出に、判断を委ねて後輩二人の視線が一方へ集中した。八代春美は少し考えるような素振りを見せて、「うん、まあな」と言葉を濁した。

「龍胆が来たら、電話しろって言っといてくれよ。電源切ってやがんだ、あいつ絶対」

そういうと後輩らの肩を押し、七星に一礼をした上で八代春美らは店を出て行った。入ってきたときと同様の、騒々しい足音の名残だけが店内に残った。

 何があったのだろう。おそらくは喧嘩沙汰に違いない。そしてどうやら鍵原が相手方に捕らえられているようだ。大変であろうのに申し出を断ったのは、やはり、まだよそもの扱いをされているということか。

 カチッ、とライターの音が聞こえた。七星が二本目のタバコに火を点けた。卓上の銀の皿にある吸殻は一本だけだが、これまで、おそらく夥しい量を吸っているのだろう。タトゥーの左手に支えられて、〈七つ星〉はゆらゆらと煙を泳がせた。

「何があったんですかね」

亮は問うた。七星は天井の煙の溜りを見つめながら、

「さあ。また楽しいおまつりじゃない」

と答えた。そして上を向いたまま、鷹揚に微笑んだ。その返答はやはりよくわからないものだったので、亮はその先に言葉を重ねることが出来ず、黙ってしまった。

 忙しく現れ忙しく去って行った三人の名残が心の中にあって、先ほどと変わりないはずの店内が増して静かに感じられる。七星は何もいわないし、いったとしてもおそらくよくわからない。所在なく、亮はテーブルのグラスを手に取ってみたが、それがアルコールだったことを思い出し、口をつけずに戻した。七星が二本目のタバコを銀の皿に放った。何故か火を消そうとしないので、燃え尽きるまでの間、それはもうもうと卓上を曇らせた。煙を避けて、亮は背もたれに深くもたれた。

 もう帰ろうかと、考える。グループの皆はどうせ七星のいう「おまつり」に出払うであろうし、ここに居てももうすることがない。何より、この女と二人きりで居ることが妙に落ち着かない。

 しかし、亮は背もたれに預けたその身を起こそうとはしなかった。心の片隅に、先ほどの八代春美の依頼が残っていたのだ。龍胆に連絡をさせること。曖昧にではあるが生まれた少しの責任が、亮をその場から動かさなかった。そしてそれを責任と捉えさせたのは、「よそもの扱いはもう嫌だ」という、かすかな願いであるかもしれなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。