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魔術師の閉鎖試験  作者: あしべ
1章
23/35

宿屋【2】

まさかのお気に入り100人達成!?

ありがとうございます!


「お、追記があるな。」


『相良様、【技】の解放おめでとうございます。この功績により、称号【技の解放者】を獲得いたします。また、以下の選択欄よりプレイスタイルをお選び下さい。お選びいただきますと、そのプレイスタイルに応じたアイテムを一点贈呈いたします。なお、選択したプレイスタイルが今後に影響する事はありませんので、ご安心ください。』


「なるほど、特典がしっかり付いてくるのか。ふむ、色々あるな。……ソードマスターが一番惹かれるな。他にはトリックスターに、トラップマスター、セブンスマスター、ゴットハンド、結構多いな。」


 数えて二十六個のプレイスタイルという選択肢。大体はゲーム経験からどんなものかを想像できるため、だからこそ悩んでいた。

 選んでいる最中、無駄に横文字のものが多いと愚痴をこぼしたりと、変なところに目が向いたりもしていたが許して欲しい。相良は横文字が苦手なのだ。ゲーム経験が無くこれらに親しみが無かった場合、おそらく適当に選んでいたやも知れない。


「守護者に、ヒーロー。うーむ、ヒーローか。いや、ここは無難にソードマスターで行くか。」


 そう言って散々悩んだ末、相良はソードマスターを選択。

 すると目の前が光り輝き、一振りの剣が現れる。その剣の刀身は波打つ形状をしており、俗に言うフランベルジュというものであった。

 とはいっても、両手持ちの大剣サイズでもレイピア程の細剣サイズでもなく、その中間のロングソード程度のサイズの特殊なフランベルジュであったが。

 そのフランベルジュの柄を相良が掴むと光は止んだ。


『ありがとうございました。ではお引き続き、ハイローズをお楽しみください。』


「ふう。これで一段落か? しかし、軽いな。」


 手にして一番に感じたことは、その重量のなさだ。大きさは1メートル無いぐらい、片手で持つにはギリギリの大きさではある。だが、その実、ダガーほどの重さしか感じられない。

 相良は上段に振りかぶり滑らせるようにそれを振った。

 どうやら軽いからといって、斬撃まで軽いなんて事は無さそうだ。空気を断ち切ったそんな錯覚を覚える程の素晴らしい感触。

 一種の魔法なのだろう。持ち手が取り回しやすくなるよう軽量化魔法が施されているとみえる。

 それに、見るからに刃は鋭く、時折紫電のようなものが刀身から奔るところを鑑みるに、相当攻撃力は高いだろう。

 紛う事ないユニーク武器。


「これは……」


 とりあえずウインドウでこの武器の性能を確認してみようと思い、見てみる。

 しかし、性能の部分は軒並み???となっていて確認が出来なかった。画面を見て唯一分かったのが「閃鋼のフランベルジュ」という名称であった。

 性能については鑑定スキルが無いと駄目なのかもしれないし、実力が、ステータスが足りていないのかもしれない。ただ、自身のステータスを見ることができないのでなんとも言えないのだけれども。一応扱えるのだから由とするべきか。


「しょうがない、鑑定はジソウに頼むか。」

「誰に何を頼むって?」

「おっ、おぉ。ジソウか、驚かすな。」


 突然背後から声をかけられ肩をビクッとさせ驚く相良。

 よほど集中していたのだろう。滅多な事では奇襲をかけても無駄なので、迷惑な話だが、ジソウは成功したことに驚いた。


「気にするでない。で、何をお求めか?」


 少々気取った風に相良の呟きの詳細を要求するジソウ。

 相良は本当になんなのだコイツはと思いながらも、彼の問いに対応すべく口を開く。


「先程の」

「WMの一件でそれ貰ったんだろ?」


 ネタは上がってんだよ、ルパーン。よろしく、言葉を被せるジソウ。要するに、用件を伝えろといっているようだ。朝っぱらからウザイな、素直に相良はそう思った。


「……はぁ。その通りだよ、名探偵。」


 全くもって察しの良い親友のおかげで頭が痛くなる相良。米噛みを抑える。


「真実はいつも一つ! ジッちゃんの名にかけて!」

「コレを貰ったのだが、詳細が分からん。見てくれ。」

「無視ですか。そうですか。……はいよー、私にみせてみんしゃい。」


 これ以上は付き合わないぞという意思表示を込めて、手にしたフランベルジュをジソウの目の前に突き出す相良。

 それを気にする様も無く、軽く返すと、まじまじとフランベルジュを観察するジソウ。

 しかし、なにやら難しい顔をすると両手をあげた。実に忙しい男である。


「あら、俺でも分からんね、これ。」


 降参を表していたようだ。ジソウの鑑定をもってしても結果は駄目だったらしい。


「多分、使っていくうちに能力が解放されていくんじゃね? 秘めたる魔剣のーなんたらがーみたいな?」


 器用なアイロニックスマイルで凄く適当なことを言って手を広げ、小首を傾げる。

 しかし、ただの悔し紛れの軽口である。

 ちょっと己の鑑定力には自信があったし、相良から頼りにされたというのに報いられなかった事が悔しかったのである。

 詳しい内情までは察せなくとも、なんだか悔しそうだという事には気がついていた相良は、なるほどと頷いておくだけに留めておく。


 幸い、ジソウはすぐに復帰を果たした。

 少しの間お互いに無言の時間が過ぎるが、徐にフランベルジュを観察していたジソウは、そうだと言って手のひらを打ち、事の成り行きの説明を相良に求めた。

 が、相良は何から話そうかと迷った。

 正直、彼自身も良く分かってないうちに事態が進行していたからだ。

 腕を組み、しばらくうーむと唸っていたのだが、面倒なので最初から話すかと思い、起きたところから順を追って簡潔に説明することにした。


「――なぁるほどね。とりあえず睡眠についてはドンマイだな。」

「ドンマイって……」


 個人的にはかなり意識していたので、ジソウにばっさりと切られて苦笑する相良。


「んで、アーツについてだけど、思うに、本来『瞑想』は結構取るのが難しい、もしくは時間がかかるはずのアーツだったのかもしれんね。何が条件か詳しく分からんけど、普段から瞑想を突き詰めていた相良だから条件をクリアできる何かがあったんだろう。」

「……ああ、なんとなくだが、俺もその気がする。」


 自分も色々やらかしているのを棚に上げ、全く困ったもんだと両手を広げて、ヤレヤレと首を振るジソウ。それに一言申したくなるがぐっと抑える相良は大人である。

 そんな相良はなんのその、ジソウはチラリと相良の手にあるフランベルジュを見遣り、口を開く。


「それと、その『閃鋼のフランベルジュ』さんは、明らかにオーバースペックだわな。運営さんもこんな早く技を解放されると思ってなかったんだろ。かなり強引な突破方法だっただろうね。特殊なスキルを得て、副産物で技を獲得とかね。もうね。」

「……だな。アーツを合成させたり、成長させたり、ストーリーが進んだりなど自然に開放されるはずだったのだろうな。」

「だろ? 一部上位アーツには存在したんだろうな。今じゃ解放されたから確認できないだろうけど、微粒子レベルで。まあ、俺の予想で一番有力なのはストーリー進めていくと『探求者』と出会い、教えてもらうだな。まあでも、決まっていた事だから遂行せざるを得なかったんだろうなぁ。可哀想に。」

「罪悪感半端ないな、それを聞くと……。」


 ジソウはつらつら喋りながら指をくるくる忙しなく動かす。それを見ながら、苦い顔をした相良は相槌を打ちつつ、短い時間で良く考えたなと感心もした。先ほどの自分はこんなに考えられなかった。


「罪悪感ワロタ。レベル制じゃないからレベルが足りず装備不可とかないみたいだし……ま、運が良かったと割り切って、称号確認しよーぜ。」


 相良の話を聞きつつジソウはそうまとめた。要するに運が良かったなぁー、だ。

 ほとんど正解を言い当てているのだが、解放が済んでしまっている今となっては、真実はそれこそ、うんえいのみぞ知るである。


「運か。あまり好きな言葉ではないが、そうだな。よし、称号だな、ちょっと待て。……あったこれだ。」


 ウインドウを弄り称号を表示するとそこには【技の解放者】が表示されていた。


【技の解放者】

『技を解放した者に送られる称号。技は強力だ。だがそれに驕るべからず。星の者よ、心・技・体全てを意識するべし。』

効果・器用さ中上昇、筋力中上昇、体力中上昇


「おいっ。……おいっ! なんじゃこれ。頭おかしいんじゃないの? これ。」

「全て中上昇か。現段階最高の上がり幅だな。」


 二人してウインドウを覗き込み、称号を読むとジソウはそう叫んだ。相良も自分の事ながらふざけてるなと思う。

 序盤で手にする称号ではないことが確定した瞬間である。

 なまじフランベルジュは性能が分からなかっただけに、文章で分かりやすく出てきたほうが衝撃はでかいのだ。


「いやー、俺らって実は知らないところでチートでも使っていたのかな?」

「やめろやめろ。これは運だ。運。そうに違いない。」

「わははは、そうか運か。ならしょうがない。わはははは、はぁ。」

「リミカとクレナイに報告するのが面倒だな。」

「いや、逃げ場ねぇよ。WMじゃん。すぐ話になるお。」


 ピピピ。ピピピ。

 ジソウと相良の両名の耳に控えめな音声が届く。思わずお互いは顔を見合わせた。


「噂をすれば何とやら。リミカからパーティーチャットです。」

「すごいタイミングだな。どこかで見ているんじゃないか?」

「相良さん、キャラ崩壊しつつあるな。」


 若干、疑心暗鬼に陥っている相良に冷静に突っ込みつつ心中で合掌を行うジソウ。

 相良を慰めてからチャットを開いた。


『リミカ・相良さん今どこに居ますか?』

『相良・宿屋の庭だ』

『リミカ・ジソウさんも一緒ですか?』

『ジソウ・いるよー』

『リミカ・ではクレナイさんと一緒に向かいますね』

『ジソウ・あいよー』


 短いやり取りは存外怖いものだと初めて知った今日この頃なジソウであった。

 一方、相良はその大きな体を項垂れさせている。


「頭痛が痛い。」

「……ガンバ!」


 ニヤニヤ笑うジソウは相良の肩に手を乗せて、思ってもいない応援を送る。

 しかし、そんな待ち時間は二分も無く、降りてきたリミカとクレナイに早速何が起こったのかを問われた。それはもう根掘り葉掘りだ。

 事情を説明するだけなのに何故か三、四十分の時間を要した。


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