表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔術師の閉鎖試験  作者: あしべ
1章
20/35

宴【3】

ちょいと短いです(汗



 気を取り直したジソウは周りを見渡し、丁度良いので手初めに二人にクレナイが自分たちの仲間になったことを伝える。

 それを聞いて、相良は一つ頷くと、「よろしく」といって握手をし、リミカは、人懐っこい笑顔でクレナイの前まで行くと手を取って「よろしくおねがいします!」と全力で歓迎した。

 突然切り出したジソウに面食らったクレナイではあったが、なにはともあれ受け入れられたことを理解すると、こちらこそよろしく! とリミカの手を大きく振った。


 ……その傍らで相良は安堵の息を吐いていた。

 心配をしていたのだ。

 何も言われていなかったが、男性、それも年上の男二人の中に女の子一人というのはなにかと気を張っていたのではないだろうか。

 現在、目の前で嬉しそうにはしゃいでいる年下の女の子の姿を見て、これで一安心だな。そんなことを考えていた。


 こうしてクレナイは特に何事も無く受け入れられ、パーティーの一員となった。

 既に料理はあらかた食べ終え、満腹度は全快になった彼らはそこら適当なところに陣取る。

 一堂に会したジソウたちはこれ幸いと談笑を始めた。

 皆、開放感のお陰か、終始笑顔で宴のときの様子について話し、やれこのアーツが育ったやれどんな人と知り合って世話になったなどと情報交換をしつつ会話を楽しんでいる。そして、ジソウのあの乾杯の音頭が良かった、もう少し普通にやれんのかなどと先ほどの反省会になりそうだったとき、急になにやら思い出したリミカがストレージから青い蝶の形をしたブローチを取り出し、ジソウの前に持ってきた。


「ジソウさん、これを見てください。どう思いますか?」

「すごく……大きいです。」


 それを手に取ったジソウは、特に何も考えずそう口に出した。

 ちなみに、決してこのブローチは大きく無い。直径4センチ程の普通のサイズである。


「ブッフォ、ゲホッ。ゲホッ。」


 唐突に空気が抜けたような間抜けな声がクレナイの方から聞こえてきたかと思うと、盛大に咽だした。

 何故か無駄にハイクオリティーに『咽る』を再現しているゲームである。こんな感情表現が何に使えるというのだろうか。その犠牲として彼女は涙目になっていた。

 ジソウはなぜこうも綺麗所なこの子がこんな汚れなのだろうかと思ったが、いい反応をもらえたので内心、ほくそ笑んでいた。本当に酷い男である。


「おい。って、うぉ。大丈夫か?」

「だっ、大丈夫ですか、クレナイさん?」

「す、みません。だいじょぶ。痛いけど、咽ただけだから。」


 こんな事で笑ってしまって悔しい。そして、リミカの優しさが心に痛い。私は汚れてしまった。あなたはどうか汚れないで。

 年下の可愛い女の子にクレナイはそんな口にしたら黒歴史確実(考えるだけでも危ういかもしれないが)なイタイことを考え、自分に酔いながら梅酒で盛大に鼻にダメージを食らいつつ微笑んだ。

 完全に酒で酔っ払ってますね。どうも、ありがとうございました。


「気をつけてくださいね?」

「うん、ありがとぉ。」


 いい子だなぁーとクレナイはリミカの心配りに悦に入った。


 リミカの発言になんら変なところが無かった事は確かだ。

 一見、食後に梅酒を飲んでいたクレナイがそれを丁度口に含んだところでたまたま咽ただけである。

 ジソウの返事が的外れだったのがそんなに面白かったのだろうか。リミカは心配しつつも、なんとなく自分だけが理解していない事を察し、なんだろうと首を捻った。しかし、追求するのもクレナイに悪いと思い、忘れることにした。

 ……って、そうだ聞く事があったんだ。


「で、どうでしょう。これを鑑定で見てもらえませんか?」

「あ、ああ、いいけど。どうしたのさ。」


 その説明も無い申し出に不審がったが、美少女がニコニコしているのである。自称紳士であるジソウはそんな彼女を無視して追求するような野暮な事は出来なかった。

 チキンではないのだよチキンでは。

 言われるがまま手の中のブローチを注視することにした。


「……ふーむ、なになに。ほー。青いから、何かと思いきや銅製品なんか。評価7で、水属性プラス1! ……なるほろ。この青いのはプチスライムの塗料っていうのか。これ」

「ちょっと待ってくださーいっ!」

「え、な、なに? どうしたの。」

「どーしたもこーしたもないですよ。え、なんで塗料の事詳しく分かったんですか? え、ジソウさんの鑑定の熟練度いくつですか? 驚かせようと思ったら自力解読って!」


 ものすごい剣幕でにじり寄ってくるリミカに対して、うわぁと情けない声を出してビビる自称紳士。なんとか言葉を搾り出す事に成功する。


「今、熟練度は、19かな?」

「えっ! たっか! もう19なのっ!」


 その言葉にいち早く反応したのはクレナイだ。すごい驚きようである。


「普通、じゃない、みたいだな。」

「ふっつうなわけないでしょう!」

「ええー。相良はど「普通じゃないな。」、デスヨネー。」


 相良に助けを求めようとしたが、先回りで断じられてしまった。


「異常だよ、ジソウ君。『はるはるるんの探索者ベータを行く』を見てたたけど、熟練度上げって難しいらしくて、えらい時間かかってた。現に、私の最高熟練度は高くて9だし。それも一番上がりやすい盾のアーツでだよ? それを、上がりにくい鑑定系のアーツで二倍って。……二倍って。」


 ぐぬぬと悔しさのにじみ出た表情をするクレナイがそこに居た。

 ちなみに、『はるはるるんの探索者ベータを行く』は名前こそアレだが、ハイローズ関係のブログで断トツの首位を誇るアクセスと人気を持つβテスターの攻略日記である。

 豊富なスクリーンショットと確かな情報。プレイング技術も高く、また、見せ場を面白おかしく伝えられる表現力を持っている。

 そして、そのブログ人気の最後の駄目押しは、アバターの可愛らしさだ。

 一部、アイドルのように神聖視する集団も居るという。

 かくいうジソウも、このブログには情報収集という意味で、お世話になっていた。だから、彼女の言っていることは理解出来ている。さっきは惚けたが、自分でもこれが驚くほどの習熟速度であるという認識は持っている。

 そして、それ故に、彼女が行き着くであろう考えをジソウは分かる。


「……言っておくけど、これはチートじゃないからな。ただ単にコツを知ったってだけなんよ。」

「う、分かってるって。チートだなんて言わないよ。」


 少し気まずそうな顔をするクレナイ。

 相良とリミカは様子を見ることにしたようである。

 彼らはなにやら一人で変な事をやっているジソウを見ているのでアレの事かと思うだけである。とはいってもその熟練度の高さには驚いていたが。


「まあ、そこまで特別な事をしているわけじゃない。きっとこれはすぐ見つかる事だろうし、教えようか?」

「え、いいの?」

「いいんですか?」

「ほう、太っ腹だな。」


 気軽なジソウの提案に思わず食いつく三人。


「ち、違うんだからね! これはあんたたちが弱いと困るから、仕方なく教えてあげるってだけなんだからね!」

「男のツンデレとか。」

「気持ち悪っ。」

「わ、私は、か、可愛いと思いますよ?」

「おぉいっ! マジレスは止めてください。死んでしまいます。」


 それはないわーといった蔑みの視線を二人から送られ、そしてリミカからはフォローと愛想笑いを受ける。

 ジソウは心にダメージを受けた。特に、リミカの『こんなときどんな表情をしたらいいのか分からないのフェイス』がきつかった。きっと、ボケ殺しのリミカさんと二つ名がつくことだろう。

 そんな馬鹿なことを考えたジソウは不意に笑いがこみ上げてきてしまった。

 それを完全に抑える事が出来ず、結果、ニヤニヤしながら説明をすることになり、また、気持ち悪いと言われるのであった。


 ――そのとき、リミカからフォローが無かったという事実はジソウの魂に深く刻まれた。




こいつら自由すぎて話が進まない!


あ、それ、私の力量不足ですねごめんなさい。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ