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魔術師の閉鎖試験  作者: あしべ
1章
13/35

始まりの街ーアカプルコー【8】

文章量が定まらない!!!!!



 しばらくの間、一行は称号についてどのようなものがあるだろうかと予想したりしているとようやくお目当ての区画にたどり着いた。


「ここ、だな。着いたぞ。」


 相良は一度立ち止まると視線を斜め右上に向けつつそう言った。

 この動作は街の簡易マップを表示して、それを見ているからだ。もちろん、マップの表示位置は自由に操作できるし、枠の大きさや、拡大縮小といった事も出来る。

 ちなみにマップは二種類あり、標準装備の大まかな道や建物が載っているだけの簡易マップと店売りもしくは宝箱などから手に入る詳細なマップだ。切り替えは詳細マップを貼り付けるか取り外すかをストレージで操作すれば簡単に出来る。

 しかし、詳細マップとは違い、簡易マップの方は自由にプレイヤーが書き込みを行えるようになっていて、自分だけのマッピングが可能なためこちらを用いるプレイヤーが多い。


「人、すっくねーなー! 静かだし、プレイヤーいねーんじゃね?」

「意外と人いないですねー。」

「さっきからテンション高いな。どうした。」

「いや、むしろテンションがやっと戻ってきたんだよ。ゲームだぜゲーム。楽しまなくちゃな!」

「……そうか。」


 さっきから既に、一人でも随分と賑やかなのにさらに上があるのかと思ったが、それを言うのは止めといた相良。彼の言い分も理解できるからだ。


 現在、彼らが居るところは、商店通りから外れた裏通りを進むとたどり着ける場所で、やや奥まったところにあり、名称は『新者の横道』と言う。

 新者、つまり見習いの事を言っており、設定によりNPAで職人の卵という役を永遠に決定付けられた、不憫さで群を抜く彼らが、試し市といった露店形式を取り日々の成果を披露する場所なのである。

 しかし、商店通りの店売りと比べると少々性能は悪いが、安価で購入でき、たまに掘り出し物が置いてあるので初心者プレイヤーにとっては嬉しい場所となっている。


「攻略サイトに載せてない穴場らしいからな。」

「いやまったく。βテスター様様だな。」


 商店通りが圧倒的に賑やかで店舗の種類も多いのだからこの場所を知らない者は来られるはずが無い。

 初心者で情報なしにここに気がついたのであれば、それは社会不適合者か、切れ者か、方向音痴か。


「よぉし。それじゃあ、最初だし、各自が欲しいものを購入してくるのだ!」

「そうだな。まだパーティープレイを気にする段階じゃない。」

「そのとーり。自由にいこう!」

「では、人がほとんどいない今が好機ですね?」

「しかし、買われた後じゃないのか?」

「ここは商品がランダムだ。テスターは自前があるから掘り出し物しか見ていかないだろう。大丈夫だ。」

「――じゃあ、装備を整えたらまたここに集合ですね。」

「おっし。決定だな。」

「では……。」


 それぞれ顔を見合わせて頷く。


「散っ!」「ごー!」「行くぞ!」


 威勢の良い掛け声を出そうといったアイコンタクトまではそれぞれ通じたが、肝心なところで揃わない。

 苦笑するしかなかったが気を取り直したあと、普通に散開した彼らはそれぞれの装備を整えるべく各々商店を巡るのであった。



――30分後、リミカは商店で手に入れた装備とアイテムに満足して集合場所に向かった。しかし、どうやら既にジソウと相良が待ち合わせ場所に立っているようである。

 またせちゃったかな。と少し申し訳なく思ってしまい次からは気をつけようと考えるリミカ。

 だが、十以上の露店がある中で買い物がすぐ終わる彼らがおかしいだけである。


「すみません。お待たせしましたっ。」


 慌てて駆け寄ってくるリミカを見て、時間を確認すると、女の子にしては早かったのではないかと感じる男二人。もっと待つかと思っていた二人は嬉しい誤算だったので特に触れなかったが。


「いや、俺たちもついさっきだ。」

「気にすんなー。よし揃ったな。どう、何か買えた?」

「ここ、ヤバイですね。私はこのマントと杖、後は銅板五個と彫金キットを買って残金ゼロです。」


 初期支給の金額でここまで揃えられるなんてといった様子のリミカは藍色の装飾の無いマントと樫の木製の杖。生産のために彫金キットと銅板を購入。


「へぇー。ちょっと見せてもらっていいか。鑑定の熟練度上げしたい。」

「そうですね、いいですよ。どうぞ。」


 リミカから許可を得るとジソウは杖とマントを注視する。

 二つとも特に効果はついてはいないが、性能は店売りと変わらない評価は10段階中の7であるのに半額の値段で売られていたようだ。

 キットと銅板も商店通りで買うより一割は安い。


「リミカ、めっちゃいい買い物したな。」

「ですよね! このマント好きな色なんで嬉しかったですよー。」

「藍色が好きって渋いな。」

「えへへ。あ、じゃあ、次は相良さんですね。」

「俺はこのロングソードと皮の籠手、鉄のグリ―ブを購入した。」

「ほう、どれどれ。」


 ジソウは相良が差し出してきたものを手に取った。

 細身の青銅で出来たロングソードは評価6。乱雑に他の武器と樽に入れられていた投げ売りだったとのことで100Hという破格の値段で手に入れたとのこと。確実に掘り出し物である。

 青銅と西門の森林フィールド【ブレイド】に出現するウッドウルフの皮で作られた篭手は評価5だが、敏捷プラス1の追加効果が付いている。

 掲示板に書かれていた情報によれば、追加効果は素材によって付いたのだろう。惜しい事に、評価が高ければ追加効果も少しは上がったはずである。

 そして最後は可動域が広く使いやすい作りの鉄製のグリーブだ。現段階で店売りなら鉄製の装備は初期配布の1000Hを超えるものばかり。βテスターを除いて装備しているものは少ないだろう。とはいっても、このグリーブは値段に比例して性能は低く、評価は10段階中の4だった。


「相良さん相良さん。あーたこの篭手追加効果は入ってるよ。」

「本当か!」

「敏捷プラス1。」

「……ないも同じじゃないか。」

「うん!」


 ジソウは無駄にいい笑顔でサムズアップをする。上げて落とす。古典的だが効果はあったようだ。腕を組み顔を伏せた相良のこめかみに青筋が浮かんでいる。

 そこで怒らない相良は大人である。そしてジソウは大人気ない。


「ふふふ。まあ、相良が鉄のグリーブや追加効果篭手出したときは焦ったが、もう何も怖くない。見てくれ、こんなところで早くも見つけてしまったよ掘り出し物!」

「で?」

「でって、怖いなぁ……。まあいい。見よ、これが打根うちねだ!」

「……またマイナーなものを見つけたな。というより、よく武器に採用されていたな。」

「なんですか、この矢? でもでかいですし、んー銛ですか?」

「ふふん。いい勘をしているじゃないかぁー、リミカ君。」


 鼻にかかった言い方にリミカの表情が少し引きつったが、テンションが上がっているジソウは全く気付いていない。相良はため息をついた。


「両方正解であって、その実、正しくない!」

「は、はあ。」

「これは、打根。打根という素晴らしき、ばぁーんのう投擲武器なのだよ! リミカ君。」

「へ、へえー。」

「ここをみたまえ。ほらほら!」

「分かりました、分かりましたから。近いです、そんな近くなくても見えますよ!」


 ずいずいと力説を行うジソウに律儀に反応するリミカだが、表情がいよいよ引きつっている、というよりはイライラへと変化してきていた。だがそれもすぐどこかへいってしまう事になる。


「見ていたまえ。【装備】、からの……よっしゃ!」

「わわっ。」


 ジソウは打根の柄の部分を利き手で持ち【装備】すると、体制を整えてからアンダースロー気味に離れたところにある木に向かって打根をぶん投げた。

 ヒュオッと重い風切り音を立て飛ぶ打根の筈尻には朱色の紐が繋がっており、打根の軌道をなぞる様にそのまま伸びてゆく。

 また、紐の先はというと装備したときに自動的に肩に括り付いている。


「おりゃさ。」


 しかし、そこでただ木に命中させるでは芸が無いと考えたジソウは、当たる直前、長手甲で保護された左腕を持ち上げ、右肩を後ろにぐっと引く。

 そうすることでカチリという音が打根から聞こえてきたので、それと同時に打根に繋がってピンと張っている紐へと上から打ちつけた。

 一瞬急停止すると、打根の進行方向が紐を叩いた事で直進から上方へ変わり、曲線を描くとジソウの手元へすっぽりと収まった。

 伸びた紐も【回収】とジソウが言うと巻き取られ綺麗に収まる。

 さすがにここはファンタジーだなぁと紐の部分に視線をやると苦笑した。本来はこんな機工は付いていない。


「ドヤァー。」

「お前は曲芸師か。」


 手の中の打根をくるくるバトンのように回しながらしっかりと言葉と共に決め顔をしてふざけるジソウに相良は突っ込みをいれる。

 一方、リミカは先ほどの流れるような一連の動きに唖然としていた。


「ふふん。打根の魔術師と呼んでくれ!」

「よっ、打根の魔術師! カッコイイ!」

「あ、ごめんなさい。恥ずかしいんでやっぱり無しで。」

「……。」


 沈黙って痛い。ジソウはそれを身をもって感じた。また、自分は一定の期間にかかる心の深くに蔓延る闇のごとき病気は過ぎ去っていたと実感する。二つ名とか付けられて広まったら身悶えそうである。


「んんっ。えーまあ、突けば槍、斬れば小刀、振り回して分銅、投げて手裏剣と言われる万能選手。打根とは扱う者によって左右される面白い武器です。ぼかぁ、これがあると知ってアーツを決めました。」

「はあっ?」


 さりげなく最後に爆弾発言を投下するジソウに大きく驚く相良。かなりレアな反応である。


「まじなのか。」

「マジです。」


 いかにも本気と書いてマジですといった表情でジソウは即答する。


「投擲武器であって消耗品じゃない。立派な武器なのだ!」

「えっと、ロマンってやつですね?」

「おう!」


 唖然呆然から復活したリミカはそう言うと、ジソウは分かってくれたか! とばかりに力強く頷く。分かってはいないが、彼の中ではそういう事になった。リミカも否定すると面倒な事になると分かったので曖昧に頷いておくだけにしておいた。賢明である。

 だが、彼の異様なテンションから分かる通り、打根があると知って投擲武器職人を選び、アーツ構成もそれ専用に考えてきたことから、この熱意は本物であるのは想像するに容易い。

 それもそのはず。ジソウが打根に興味を持ったのは昨日今日の話ではなく、二年前、現相良家当主の相良吾郎の祖父に当たる相良藤吉衛門の打根術演舞を見たことから始まる。その演舞は気迫の篭った素晴らしいもので、彼の心に焼きついた。そこに漢を見たのだ。

 ジソウが本物を見たことがあり、なおかつそれに感銘を受けた者だということを思い出した相良はもうなにも言わないことにした。これを放置とも言う。


「あー、まあ。リミカもさっきの見て分かっただろうが、コイツの身体能力は高いから大丈夫だ。」

「そゆこと。少しは自信あるんだぜ。」


 ニヤリとしてブイサインをするジソウ。


「いえいえ、心配だとかそういったことはしていませんよ?」

「ははぁー。ありがたき幸せ。精一杯皆様の役に立つよう頑張らせていただく所存であります。リミカ姫。」

「も、もー。姫とか止めてくださいっ。そういうの苦手なんですっ。」

「面白がるな。止めてやれ。」


 慌てるリミカをおちょくってさらに慌てさせる事に楽しさを見出したジソウだったが、そこは相良にアイアンクローをされて強制ストップとなる。


「――で、他には何を買ったんですか?」

「ぐ、ぐふぅ。すんませんした。後は、この皮の手甲と靴、腕力強化の腕輪、初級HPポーション五個ですな。」


 そう言ってジソウは一つ一つ説明していく。

 腕に装備している手甲は初心者平原に出現するマメラプトルの皮製だ。手の甲から腕まで保護できる。先ほどのような武器の使用方法をするため手甲を選んだのだ。何もつけていないであのような事をすると反射ダメージを負ってしまうとのこと。評価は7と標準的だが素材が素材なので防御力は最低ランクの物だ。靴も同じマメラプトルの皮製。装備すれば裸よりはマシ程度で安い。セットで300hだった。

 だが目の前の相良とリミカはそんな説明なんか聞いちゃいなかった。


「わ、腕力強化の腕輪っ?!」

「おい、そっちの方が驚きだろ!」


 相良はジソウの腕を掴むと目の前に掲げ……ようとして、胸の高さまで上げて覗き込むことにした。親切心とは時に非情である。


「おい。……おいっ。」


 ジソウの言葉はむなしく流される事になった。


「こんな高価なものあったのか。いや、何で買えたんだ?」


 彼の疑問ももっともである。クエスト報酬ならいざ知らず、今日始めたばかりの初心者プレイヤーが持つ代物ではないのだ。


「嬉々として打根買ったらくれました。」


 答えは実にシンプル。貰った。である。


「全く、こいつって奴は。」

「えっ?」

「……はぁ。そうですね。もう、フィールド行きしょう。戦ってみたいです。」

「えっ? なんで二人とも呆れてるん? なんで?」


 ジソウの起こす事に何度も律儀に反応していたら身が持たない。そう理解した二人は華麗にジソウの問いかけをスルーし、どこのフィールドに行くかの話しをしだした。置いていかれたジソウだったが、こんな事ではなんともないのである。すぐに復帰しては話し合いに参加した。

 話し合いで、パーティーを組んでいることもあり、難易度の一番低い南門からの平原では物足りなくなると予想した男二人が、難易度が比較的に高いとされる東の海道を提案した。

 また、海道はβテスターによるととても景色がいいらしい。リミカもそれには興味があったので、特に否定する事はなかった。若干難易度に不安はあったものも、序盤し大丈夫だよねと自分に言い聞かせる。

 今いるのが東街区という事も都合がいい。ではと、そのまま東門から行ける海道に決定。即時出発と相成ったのである。


 何かありましたら、どうぞお気軽に。感想などありましたら喜びます。




 すみません、調子に乗りました。

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