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勇者召喚で来てくれたのは、ピースメイカーさんでした!  作者: 夕暮れの家


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なんか思ってたのと違います

「これで準備は整いました。では始めましょう」


 勇者様の雰囲気が変わります。バルコニーの柵に飛びあがりました。


「名もなきこの世界に生きる全てのものたちよ、我はファングレス王国により呼ばれた勇者である!」


 凄い大きな声です!声がお腹に響きます。でもうるさくないです。不思議です。


「この契約書をもってこの世界を救おう!」


 締結した契約書がスクリーンにデカデカと映しだされます。


「「「勇者様あああああああ!」」」


「なんだ!?なんだ!?どういうことだ!?」


「勇者だってまじかよ!」


 勇者様が不敵に笑います。


「まずは我が同胞を紹介しよう!」


 上空に無数のスクリーンが浮かび上がりました。その一つ一つに数えきれないほどの群衆が映っています。


「待たせたな!億千万の同胞たちよ!」


「「「「「「うおおおおおおおおっ!!!」」」」」」


 凄い声の渦です。


「久しぶりに我(ワレ)が来た」


「「「「「「我!我!我!」」」」」」


「何年ぶりだ!」


「我きたああああああああ!」


「「「「「「我!我!我!」」」」」」


「聞け、億千万の同胞たちよ。我はアバランチ世界の彼方にある今はまだ無名の世界に召喚された」


「「「「「「召喚!召喚!召喚!」」」」」」


「文言はなんだあああああああ!」


「条件はなんだあああああああ!」


「「「「「「召喚!召喚!召喚!」」」」」」


「聞け!億千万の同胞たちよ!この世界の奴は我を呼び出す際こう言った!『求むるわ、最強』と!」


「「「「「「覇王!覇王!覇王!」」」」」」


「聞け!億千万の同胞たちよ!こうも言った!『求むるわ、我らを導き足る叡智』と!」


「「「「「「賢王!賢王!賢王!」」」」」」


「聞け!億千万の同胞たちよ!こう付け足した!『人の身なれど人あらず。王たらんものよ』と!だから我が来た!」


「「「「「「ヤマダ!ヤマダ!ヤマダ!」」」」」」


「聞くがよい!億千万の同胞たちよ!こやつらは王(われ)に吠えたぞ!『覇を示すはここぞ。威を示すはここぞ』と!面白い!示してみせよう!」


「「「「「「うおおおおおおおおっ!!!」」」」」」


「合戦だああああああ!」


「一番槍は俺だあああああ!」


「「「「「「魔王!魔王!魔王!」」」」」」


「「「「「「覇王!覇王!覇王!」」」」」」


「聞くがよい!平和を愛する億千万の同胞たちよ!こやつらはこう結んだ!『我らを救いしものよ、今、ここに現れたまえ』と!だから我はピースメイカーとしてここに来た!」


「「「「「「ピースメイ!ピースメイ!ピースメイ!」」」」」」


「よかったあああああああああ!」


「待ってましたああああああああ!」


「「「「「「ピースメイ!ピースメイ!ピースメイ!」」」」」」


「おまけだ聞け!億千万の猫を愛する同胞たちよ!この世界の神は我に向かってこう言ったぞ!『我の世界には猫よりも可愛いモッフモフがいる』と!喧嘩を売った!」


「「「ブー!ブー!ブー!」」」


「まじか!」


「嘘でしょ!」


「にゃーーーーーーーーーーーー!」


「「「モッフモフ!モッフモフ!モッフモフ!」」」


「「「にゃんこ!にゃんこ!にゃんこ!」」」


「ならば答えよう!我が応えよう!ピースメイカーヤマダとして!」


「「「「「「ピースメイ!ピースメイ!ピースメイ!」」」」」」


「「「「「「ヤマダ!ヤマダ!ヤマダ!」」」」」」


 凄い熱気です。画面越しにも伝わってきます!熱狂です!


 スクリーンに向かって話しかけていた勇者様が私たちの方を向きます。


「聞け!まだ名もないこの世界の住民たちよ!求めに応じて我が来た!歓喜せよ!打ち震えよ!人よ!動物よ!植物よ!全ての生き物よ!我が平和へ導いてみせよう!」


「「「「「「ピースメイ!ピースメイ!ピースメイ!」」」」」」


「まずはこの世界の全てのものが意思を伝え合える言語を授けよう!」


<<コモン・コード>>


「我がいる間だがこれで悲しきすれ違いはなくなるだろう」


「「「「「「ピースメイ!ピースメイ!ピースメイ!」」」」」」


 どういうことでしょう。他種族の言葉がわかるようになったということでしょうか?


「さてご要望の威を示してみせようか!」


 何をするのでしょう?


「億千万の同胞たちよ!待たせたな出番だ!」


「「「「「「うおおおおおおおおっ!!!」」」」」」


「現れよ!我が軍勢よ!」


<<アブソリュート・アーミイ>>


 上空に魔法陣が現れました。果てが見えません。物凄い大きな魔法陣です。


「「「「「「うおおおおおおおおっ!!!」」」」」」


「来たぞおおおおおおおおおおおお!」


「やったあ抽選当たったあああああああああ!」


「嫁に自慢できるううううううううう!」


「「「「「「うおおおおおおおおっ!!!」」」」」」


 魔法陣の上に人、人、人。空が覆い尽くされんばかり、いえ、尽くされました。空がなくなりました。人の空です。影が差します。人しか見えません。いったい何人の人がいるのでしょう。


「「「「「「くそおおおおおおおおっ!!!」」」」」」


「今後こそは王のもとへ!」


「次こそは勝って召喚されてやる!」


「王よ、出陣の準備は整いました我らを!」


 人の下にスクリーンが移動してきました。スクリーンにはまだまだ人が、いえ、勇者様の軍勢が残っているようです。勇者様がバルコニーいません。一番大きなスクリーンに勇者様が映りました。人の海の上に浮かんでいます。ここまでお腹を、鼓膜を揺るがす声が聞こえてきます。


「我のために死ねるか!」


「「「「「「否!否!否!」」」」」」


「この世界のために死ねるか!」


「「「「「「否!否!否!」」」」」」


「ならばどうする!」


「「「「「「勝つ!勝つ!勝つ!」」」」」」


「それだけか!」


「「「「「「生き残る!生き残る!生き残る!」」」」」」


「それで、こそだ!」


「「「「「「うおおおおおおおおっ!!!」」」」」」


「魔法を放てるものよ、準備せよ、空へ、放て!」


 赤、青、黄、様々な空を埋め尽くさんばかり光が迸ります。光の群れが空へ放たれているのがスクリーンに映ります。


「拳を、武器を構え、地面を、鳴らせ!」


 ドンッ!!!


 空に浮かぶ人たちの地面、魔法陣を大きく叩く音がしました。地面が揺れた錯覚がしました。怖いです。勇者様とスクリーン越しに目が合います。


「聞け!まだ名もないこの世界の住民たちよ!我が軍勢に勝てるものあれば声を上げよ!」


 一転熱狂が冷め静まりかえります。


「聞け!まだ名もないこの世界の住民たちよ!これが我の王たる威なり!」


「「「「「「王!王!王!」」」」」」


 人の海を通って勇者様が降りてきました。またバルコニーの柵の上に立ちます。両手を広げます。


「次は覇を示してみせよう!」


「「「「「「覇王!覇王!覇王!」」」」」」


「聞け!まだ名もないこの世界の住民たちよ!全ての民よ下れ!我の臣下となれ!」


 皆言葉が紡げません。


「逆らえば上空億千万の軍勢が攻め込むであろう。さあ王たちよ即刻、決断せよ。下るか否か!」


「「「「「「否!否!否!」」」」」」


 ドンッドンッドンッ!ドンッドンッドンッ!


 空を埋め尽くす人の群れが空の地面を槍や剣で叩きながら、上空から私たちを見降ろしています。まるで檻の中から獲物を捉えんとする猛獣の群れです。怖すぎます。


「決断出来たものよ、空に吠えよ!」


「下ります!」


 中央の巨大スクリーンに一人の女性が映ります。


「そなたはこの世界の植物をまとめる王か」


「そうです」


「即断や良し!臣下の末席に加えよう」


「はっ有りがたき幸せ」


「次は誰だ」


「下ろう!」


「お前は砂漠を統べる人族の王か」


「そうだ!」


「良いだろう、臣下の末席に加えよう」


「有りがたき幸せ」


「次は……」


 上空に新たなスクリーンが表示されます。この世界の地図のようです。青く表示されていた地域が徐々に赤に塗られていきます。勇者様の軍勢へ下った地域が赤く塗られていくようです。次々と様々な部族の王たちが勇者様へ恭順を示していきます。


「納得がゆかぬ!」


 先ほどまであった。ざわめきが静まります。


「そなたは海の王か」


 スクリーンに巨大なイカの化け物が映し出されました。


「しかり!我が名はクラーケン、王に一騎打ちを申し込む!」


「「「「「「うおおおおおおおおおおおお!」」」」」」


「「「「「「勝負!勝負!勝負!」」」」」」


「面白い乗った!」


 勇者様が消えました。スクリーンの中のクラーケンの前に現れました。勇者様とクラーケンが映っているスクリーンが巨大化しました。


「こい!」


「ふんぬううううううううううう」


 クラーケンが沢山ある手足を勇者様に叩き付けます。しかし、勇者様は海上を歩きながらヒラリヒラリと避けていきます。


「どうしたどうした」


「ぬおおおおおおおおおおおおお」


 一本一本が勇者様の十倍はあろうかという太さの手足が隙間なく勇者様を捉えようとしますが、一向に捕まりません。ついに勇者様は手が届く位置までクラーケンへ接近しました。


「歯を食いしばれ」


 勇者様のパンチが炸裂します。クラーケンは海面を何度も跳ねながら遥か後方に吹っ飛ばされました!凄いです!


<<ヒール>>


 ペチペチ。


 勇者様は海面に浮かんでいるクラーケンに治癒魔法をかけてあげているようです。頬をペチペチしています。


「我は……」


 クラーケンが目を覚ましました。


「我の勝ちだ」


「そうか……下ろう」


「「「「「「覇王!覇王!覇王!」」」」」」


「クラーケンよくやった!」


「ナイスファイト!」


「いい根性したイカじゃねえか、イカしてやがるぜ!」


 ぷぷぷ。イカしたギャグが聞こえてきました。どのスクリーンでしょうか?あっ周りから袋叩きにあっている男性がいます。あの人ですね。


 海の王が下ったことで地図のかなりの部分が赤く染まりました。大陸南部一体から中部を占める大陸一の領土を誇るライメイレン帝国、大陸中部から東部を占め大陸で二番目の領土を誇る我が国ファングレス、大陸北部から中部まで侵攻し領土を持っている魔国が下っていないので大陸はまだ空白が目立ちます。我が国はどうするのでしょうか?勝ち目はありません。下るべきですね。ぼおっと見ている場合じゃありませんね。


「お父様下りましょう」


「むっまだだ、まだ様子を見る」


「国王様情勢を見ている余裕はないかもしれません。最後に残った国が上空の戦力を向けられる可能性も」


 グッド宰相それはないと思いますが、良いこと言います。もっとお父様を追いつめましょう!


「お父様まだ死にたくありませんよね。下りましょう!」


「いっ、いやじゃ!わしはまだ国王でいたい!」


「お父様!」


 そうこうする内に大陸西部に位置する各小国たちの王たちが下っていきます。


「次は誰だ」


「王を名乗っておらんがよいか?」


「ん?どうした?お前は……ほう、この世界で一番強い竜種か」


 スクリーンに巨大な真っ赤なドラゴンが映ります。


「我が名はドラグーン。異世界より召喚されし勇者よ。この世界を統べる王たる器か我が見極めて見せようぞ」


「「「「「「不遜!不遜!不遜!」」」」」」


「いいだろう勝負といこう」


「「「「「「勝負!勝負!勝負!」」」」」」


 ドラゴンの元に勇者様が現れます。


「最高の一発を打って来い」


 ドラゴンが大きく息を吸い込む動作をします。ドラゴンのブレスです。危ないです!


「がああああああああああああああああ!」


 ガギン!


 ブレスを殴った!?勇者様が大きく下から上へ拳を突き上げるとブレスが上空へ逸れました。拳を振り上げた勢いで突風が起きブレスがかき消されました。はわわっとんでもないです。


「「「「「「うおおおおおおおおおおおおお!」」」」」」


「うむ、見事である」


「じゃあ次は俺の番だな」


「「「「「「ブレス!ブレス!ブレス!」」」」」」


 今度は勇者様が大きく息を吸い込む動作をします。どうするのでしょう?


 ドゴーン!


「「「「「「うおおおおおおおおおおおおお!」」」」」」


 勇者様の口から光線がビカーと光ってドラゴンを吹っ飛ばしてしまいました。勇者様ブレスです。


<<ヒール>>


「ヤマダブレス久しぶりに観たぁ~」


「相変わらずえぐい威力してんなぁ~」


 ヤマダブレスっていうんですね。ちょっとダサいです。


「勇者様って人間なのでしょうか?」


 思わず口から出てしまいました。


「なんだお嬢さん知らないのかい?」


 はわわぁっスクリーンの人から話しかけられてしまいました。


「はい、知り合ったばっかなので」


「正真正銘のただの人間なんだよ元は、努力と工夫でのし上がってきたのさ」


「ブレスはあれだべ。かっこいい。龍族だけずるくない?で開発したんだっけ?」


「そうそう、なんでもやればできるもんだ。ってお前だけだよってな」


「「「「「ワハハッ」」」」」


「すごいですね!」


「だろ?ヤマダはうちの世界が育てたんだ」


「いーやうちだね」


「うちに決まってんだろ!」


「「「やんのかコラッ!」」」


「皆さん喧嘩はよくないですよ」


「可愛いお嬢ちゃんに止められちゃったぜ」


「じゃあしゃーねえな、戦争はなしだ」


「んだんだ、可愛いは正義だ」


 可愛いとか照れます。


「おっ次の挑戦者出てきたぞ!」


「我こそはスプラッシュ族、族長チャン・メイ。部族の掟にてどちらが強者か決めたい!」


 顔に墨で線を引いた独特な化粧をした女性が剣を構えて雄々しく口上を述べます。


「いいだろうかかってこい」


「好きな武器を使うがよい!選べ!」


 勇者様の前に色々な種類の武器が並べられます。


「「「「「刀!刀!刀!」」」」」


 スクリーンに映った勇者様の同胞の方たちが刀コールをしています。


「なんで刀なんですか?」


「ヤマダといえば刀よ。日本刀という刀を装備したときのヤマダはマジで強いんだ」


「ヤマダの愛刀は、神切り丸でござるよ。誰が呼んだかその日本刀で神を切ったことから名付けられたと言われているでござる」


「神様切っちゃったんですか?」


 驚きです!


「切られて当然のやつな!」


「あいつはクズだった」


「大丈夫よ、切った後いつものように治していたから」


「よかったです」


「ピースメイカーのときのヤマダは人死には出さないからな」


「そうそう安心して観てられるよな」


「そうなんですね」


 ほっとしました。


「やべっ、初見さんのドキドキ感奪っちゃったんじゃね俺ら」


「ネタバレ乙」


「いいと思うわよ私は、当事者のとき気が気でなかったもん」


「聞けて良かったです。安心しました」


「安心するのはまだ早いぜ。なんせ今回は我モード、別名王モードだからな。結構えぐいことするぜ」


「でも今回召喚文言に賢王あったべ、マイルドなんじゃね?」


「このパターン過去作にあったっけ?」


「近いのはあるでござるが、拙者の読みではヤマダは現地人とのふれあいを通して度合いを変えている節があるでござるよ。そのため毎度新作のように楽しめるでござる」


「だな、だからヤマダの応援はやめらんないんだよな!」


「あっ挑戦者やられたな」


 結局武器は選ばないで拳で殴っていました。


「結構長くなかった強かったのかな?」


「いや今のどう考えても指導してただけだろ。気にいったんじゃね?」


「おっまた家臣が増えるかな?」


「増えるんじゃね、にゃんこネタぶっこんで来た当たり今日機嫌いいべ」


「だな」


「そうね」


「でござるな」


 情報収集しましょう。


「機嫌いいとどうなるんですか?」


「サービス満点になるわよ」


「ネタバレはよくないでござるよ」


「はーい、自重するわ」


 むむっ、聞き出せないですね。


「私、まだ下ってない国の王女なんですが早く下らないとまずいですよね?」


「そうね、早く下った方がいいと思うわ」


「抵抗する意味はわかんねえな」


「そっちに行っているのは全体の極一部だからな、そこんとこ間違えないように」


「戦力差は明白でござる。勝てる戦ではないでござろう」


「ですよね。父を説得してみます」


「がんばれ王女ちん!」


「はいっ!」


 周りを見渡すと私と同じように各々が色々なスクリーンの人と話しているようです。お父様はどこでしょう?


「俺っちと勝負してくれよヤマダ」


「「「「「「不遜!不遜!不遜!」」」」」」


「貴様にヤマダと我を呼ぶ権利は与えたつもりはないぞ。五百年前に紹介された勇者の末裔よ」


「そんなこともわかるのかい。俺っちの名はスバル・イイダ。これでも世界で一人しかいないS級冒険者さ」


 ロングソードを肩にかけ不敵に笑う黒目黒髪の二十台くらいの男性が映りました。お名前は聞いたことがあります。


「興が乗ってきたところだ。いいだろう相手してやる」


 勇者様がスクリーンに映りました。スバルさんの前に立ちます。


「いざ、尋常に勝負!」


 大上段に構えた剣の渾身の一振りが振り下ろされる前に消えるように接近して、顔面を思い切り殴り飛ばして地面に叩きつけました。あっという間にノックアウトです。


<<ヒール>>


 ペチペチ。


「俺っちは…」


「貴様らは我のことをピースメイカーさんと呼べ。いいな」


「「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおお!」」」」」」」


「「「「「「「ピースメイ!ピースメイ!ピースメイ!」」」」」」」


 いつの間にかスクリーンの人達だけでなく、我が国の国民たちも叫んでいます。お祭りみたいになってきました。なんか一体感が出てきた気がします。それにしてもお父様はどこにいったのでしょう?お父様ぁー。


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