今後のスケジュールはどうしましょうか?
午前中の会議で契約書に関しては今のままで問題ないという結論が出ました。これからは明日の調印式についてと今後の勇者様のスケジュールに関しての相談です。参加者はお父様、私、宰相、外務大臣、内務大臣、財務大臣、軍務大臣、魔法師団団長、近衛騎士団団長、侍女長の計十人です。最近会議室に篭りっぱなしです。
「調印式の様式はいかがいたしましょうか?」
内務大臣が問いかけます。
「他国と協定を結ぶ際の様式でよいのではないか?」
外務大臣が答えます。
「それはダメでしょう。他国との協定の際は同格として結びますが、今回は相手の方が上です」
グッド宰相、その通りだと思います。
「臆したかグッド!我が国の誇りはどこいった!」
軍務大臣が声を荒げます。お父様が大きく頷いています。誇りなど今は些細なことだと思うのですが。
「貴方こそ現実を見るべきです。我々は勇者殿にご助力を頼む立場、先日直接話して分かりました。彼は我々が冗長すればすぐさま手を切るでしょう」
「ふん、そんなもの従属の首輪をつけてやればよい!」
従属の首輪は主に奴隷につけるもので、主人の命令に逆らえなくなります。過激です。
「それが私たちにできますか?直接対峙したイー団長どうですか?」
「無理でしょうな、勝てないでしょう。私には姿を捉えることさえできなかった。魔法師団長どうですかな?」
「あの場で勇者殿の治癒魔法をみたが次元が違っておった。擦り傷を治す程度の初級魔法である<<ヒール>>を用いて全身の複雑骨折を治しおったぞ。それにわしらが長年かけて解読した異世界召喚の魔法陣を初見であっさりと読み解きおった。ありゃ化け物じゃ」
「腰ぬけ共が!正道がダメなら邪道でもよい。寝込みを襲うなり女をあてがい隙を突くなりやり方はあるだろうが!」
「侍女長どうなんだ、隙はあるか?」
イー団長が問います。侍女長は侍女のお仕事の他に諜報部隊の隊長も兼ねているのです。
「無理でしょう。宰相様にはご報告いたしましたが、初日と二日目、勇者様の寝室の隠し部屋、屋根裏、床下に潜ませた諜報員が勇者様に見つかりにこやかに挨拶されたとのことです。またメイドによって誘ってみましたが、大きな胸に視線が釘付けになるという報告はありましたが、実際に釣られることはありませんでした。また連日の結果を受け、勇者様を警戒させてしまったようで、部屋の中での従事も一定距離以上近づいてはならないというルールを設けさせられました。今は勇者様の部屋に待機させているメイドから情報を入手するのがやっとという状態です」
大きな胸ですか、私はどうでしょうか。
「わしからも報告じゃ遠見の魔法で勇者殿の部屋を除くようにしておったのじゃが、初日に見破られおったわい。観測された場合に察する方法があるんじゃろう。音を拾う準備もしておったんじゃが、わしの権限で止めさせておる」
凄いですね勇者様。
「勇者殿に隙はありません。首輪をつけるなど夢物語でしょう。それよりもいかに手を取り合うかを模索した方が建設的というものです」
「むむっ……」
「調印式は戦後の調印を参考に、勇者殿を戦勝国の立場とするのが妥当でしょう」
「「「意義なし」」」
「次に前金の譲渡ですが、七日間の期限はありますが戦況を鑑みるに勇者殿には一日も早く本格的に活動を開始していただきたいので調印式の際に併せてお渡しするのでどうでしょう?」
「勇者殿の人となりを観察してからでも問題ないのではないか?一度契約したら破棄できんのだろ」
悪い人には見えませんでしたが。
「外務大臣今は時がないのです。それに勇者殿の人となりがどうであれもう異世界召喚をやり直す余裕もありませんし結論は変わりません」
「そうか、では仕方ないな」
「では調印式にて調印後、前金の銅貨一枚を勇者殿へ譲渡するでよろしいですか?」
「「「意義なし」」」
「では国王様、当日はよろしくお願いします。台詞は追ってお渡しします」
「うむ」
余計なことを言わないようにカンペを用意する。大事なことです。
「最後に勇者殿の今後のスケジュールについてですが、前々から準備しておりました勇者殿のお披露目パレードを実施したいと思います。日程は勇者殿に予定をお聞きし早ければ三日後に。出陣式を十日後に実施でよろしいでしょうか?」
「他国へのお触れはどうなっておる。パレードには参加するのであろうな」
「はっ、現在カッサード王国とライメイレン帝国の使者より参加の連絡を受けております」
「勇者殿を召喚した我が国の威を示す機会じゃ。盛大にやるぞ」
「「「はっ!」」」
「日程はよろしいでしょうか?」
「「「意義なし」」」
「勇者殿に日程をお伝えするのはイリス姫さまお願いします」
「かしこまりましたわ」
お役目です。頑張らなくては!
「では解散!」
会議の後、部屋で衣装を着替えて勇者様のところへ向かいます。勇者様は客室に閉じこもってずっと銀の板をいじっているとのこと向いましょう!
コンコン。
「イリスです。勇者様、今お時間よろしいでしょうか?」
部屋の中から声が聞こえます。
「はいはーい、いいですよ」
ガチャ。
ねずみ色のパーカーに黒のズボンという格好です。初日から変ってないように見えるのですがお気に入りなんでしょうか?
「今後の予定についてのお話がしたくて参りました」
「それは王女様にわざわざお越し頂くとは光栄です。どうぞお掛けください」
先日の夕食を共にさせていただいたときに遅くなりましたがご挨拶しました。
「何をなさっていたのですか?」
「ちょっとした調べ物を」
「そのベッドの上にある銀の板で調べるのですか?」
「そうです。これはアカシックレコード、星の記憶とも呼ばれるこの世界の全ての情報が集まっている場所にアクセスする端末なんです」
「まあ!この世界の全ての情報ですか凄いですね!」
「ははは、まあ便利ですよ」
「あれ?でもそれでは一番美しい景色などもそちらの端末を利用すればわかるのでは?」
「私もこれで調べますが生の声が聞きたいので」
「よかったです。勇者様にご紹介するのを楽しみにしていたので」
「うちの世界にはこんな綺麗な景色があるんだぞと是非自慢してください」
「はい、もう候補はある程度絞っているんですよ」
「それは楽しみだ」
「楽しみにしていてくださいね。スケジュールについてなのですが明日契約の調印式を執り行います。その場で前金の銅貨をお渡しいたします。その三日後に勇者様のお披露目パレード。十日後に出陣式を執り行います」
「調印式と前金についてはわかりました。お披露目パレードに出陣式ですか。申し訳ないのですがこちらの予定と合わないためお断りします」
そんな!
「どういったご予定なのでしょう?」
「そうですね。お披露目に関しては調印式後そのままこの世界の皆様に向けて実施するというのでどうでしょう?方法は仕事の一環なので私に任せていただければと」
「確かにお披露目も世界平和実現のため必要なお仕事ですよね。かしこまりました。皆にはそう伝えておきます。では出陣式も?」
「そうですね必要があればこちらで計画します」
「わかりました一任するというお約束ですものね。残念ですが承知しました」
「埋め合わせといってはなんですが、ド派手にやるので楽しみにしていてください。結構人気があるんですよ、私の就任挨拶は」
「ふふふ、はい、楽しみにしています」
「それではまた明日」
「はい!」
どんな挨拶なんでしょう楽しみです。っていけません今は我が国存亡の危機。最近浮かれ過ぎですね。自重せねば。




