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勇者召喚で来てくれたのは、ピースメイカーさんでした!  作者: 夕暮れの家


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今日私は冒険に出ます!

「私と冒険に出かけませんか?」


 朝食を食べると勇気を出し勇者様に提案します。


「冒険ですか?」


 不思議そうな顔で聞き返されたので説明します。


「見つける旅です!世界一を!」


「なるほど報酬の旅ですか!」


「そうです!もう当たりはつけています!いかがですか?」


「いいですね」


 そういって勇者様が笑ってくださったので、ほっとしました。勇者様との冒険です!旅装束に着替え荷物を斜めかけの鞄に入れ、準備万端です。


「ならぬぞ!」


 お父様!?部屋に乱入してきました。


「旅など行かせん!」


「いーえ、イリスは旅に出ます!」


 グッド宰相が慌てて部屋に入ってくるとお父様をなだめてくださいます。


「これはイリス様が決めたこと。勇者様へ報酬をお渡しする旅なのです。ご許可ください」


「嫌だ嫌だ嫌だ!」


 お父様が駄々をこねます。


「ならば!私も連れていけ!」


 絶対に嫌です!親同伴での旅なんて断固拒否です!


「お父様!私はもう子供ではないのです!」


 お父様がショックを受けた顔をしています。


「相手は誰だ!その首はねてやる!」


 ん?お相手とはどういうことでしょうか?


「勇者!貴様か!貴様なんだな!許さん!」


 お父様が勇者様に襲いかかりますが、勇者様は腕を伸ばすとお父様の頭を鷲掴みします。


「痛い痛いいだいー」


 お父様が怯みました。今です!


「勇者様行きましょう!」


 私は強化魔法を使い二階の窓を突き破ります。勇者様も後に続いてくれます。


「イリスーーーーー!」


 お父様の声が聞こえた気がしますが、知ったことではありません。もう私は大人なのです!


 王城を飛び出し貴族街へ向かいます。勇者様は珍しいものがあったのかキョロキョロしています。


「旅の仲間を迎えに行きます!」


 そういうと勇者様は頷いてくれました。


 ピータルという珍しい土を使った白い外壁が美しい屋敷に辿り着きます。門番に挨拶すると中に入り庭に直接向かいます。勝手知ったる友人の家です。そして、打ち合わせ通り友人二人は庭で旅装束を身に着け待っていてくれました。


「戦士のダンダ・アラアラ・フォージュンだ!ダンダと呼んでくれ」


 そう名乗りを上げたのは、鈍く光り輝く鎧で全身を隠し、美しい銀髪を後ろでまとめた勇敢な笑顔を浮かべている女性、ダンダです。


「ん。……エリー・イッパイ・スーパー。魔法使い。ただのエリーでいい」


 そう控え目に自己紹介した黒いマントで全身を覆っている深い青紫の長い髪を持つ短身の女性は、エリーです。


「僕の名前はヤマダです。ピースメイカーです。今回旅のパーティなのでヤマダと呼んでもいいですよ。勿論勇者と呼んでもかまいません」


 そう勇者様が笑顔で応えると、エリーから不穏な空気が流れます。眉間に皺を寄せ、意を決したように一歩前に出てきます。


「私は……北から来た」


 ダンダがむむっと難しい顔をします。


「私と一緒に行っていいっしょ?…だ」


 勇者様がハッとした顔をした後にすぐに戦場に赴く戦士の顔になります。


「女性三人とのパーティなんて、ヤマダ邪魔だとは言わないでくださいね」


 ぷぷぷっ、楽しい旅になりそうです!


 屋敷から私たちは手配していた馬車に乗り込みます。ここから私たちの旅は始まるのです!


「いざ!冒険の旅へ!」


 そこで御者席に座り二頭の馬につながる手綱を手にしていたダンダが困った顔をしました。

 馬が走ってくれません。


「どうしたお前たち普段はあんなにも軽快に走ってくれたじゃないか?」


「ヒーン(俺たちは)」


「ヒーンヒ(野郎は乗せない!)」


 困りました。馬さんたちが拗ねています。


「……私は美女、だから頑張れ」


「ヒーン(あー確かに美女だ)」


「ヒーンヒ(そこの野郎が許せない!)」


 勇者様に向かって鳴く馬たちを見て勇者様は困った顔をするとこう言いました。


「これでどうかな?」


<<チェンジ>>


 光輝き光が収まると胸の大きい線の細い黒髪の美女がそこにいました。


「私ならいいでしょ?」


 勇者様が女性になってしまいました!


「ヒン?(これは?)」


「ヒンヒ?(ありか?)」


 勇者様がどこからか出したのかオレンジ色の野菜を手に馬たちの鼻先に近づけます。


「どうかな?」


 馬はそのオレンジ色の野菜をむしゃむしゃ食べながら会議しています。


「ヒーンヒヒーンヒー(勇者よ。お前はどっちなんだ?)」


「ヒンヒ!(はっきりしろ!)」


 どちらって男性ではないのでしょうか?そのつもりでずっと接していたのですが……。


「秘密です」


 そうカラッと笑った勇者様は美しく。お姉さまとお呼びした方がよろしいでしょうか?


「ヒンヒ!(ならしょうがねえ)」


「ヒヒーンヒ!(乗りな!嬢ちゃんたち!)」


 美味しく野菜を食べ終わるとお馬さんたちは走る気満々といった具合で土を蹴ります。勇者様と私たちの冒険は意外な形でスタートしました。まさか勇者様が女性になって冒険が始まるとは……これはこれでありですね!


 街中を馬車は進み、憲兵に挨拶をして王都の門を潜ります。私の人生初めての王都外です。あっ、一回異世界行ってましたね。


 聞いていた通り、王都の外は田畑が広がっています。緑、黄色、たまに赤。空を見上げれば青に白の雲。窓を開けている馬車の中には風に運ばれて草の匂いが広がります。これが冒険の匂いなのですね!


 新鮮な景色に目を奪われ、窓の外を眺めていたのですが……飽きました。


「ダンダ。目的地までどれくらいかかるんでしたっけ?」


 手綱を引き、前を見ながら答えてくれます。その答えは憂鬱なものでした。


「目的地までは三週間はかかるな」


 三週間も馬車の中で過ごすのはきついです。お尻も痛くなってきました。


「……これも冒険の醍醐味」


 確かにそうです。せっかく待ち焦がれた冒険なのです。楽しまなければなりません。窓の外を見ます。緑、緑、緑、青。あ~変わらない景色が恨めしいです。思わずため息が零れそうになっているとダンダが話題を振ってくれました。


「勇者殿は普段何をしているのだ?」


 窓の外をぼーっと眺めている整った顔立ちの美女はなんか口が半開きだな~とずっと思っていました。


「勇者殿?」


 ハッとした顔をした勇者様はこちらを振り向くと。少し考えた後、


「猫派ですが犬も勿論大好きですよ」


 寝てましたね。器用に目を開けながら寝ていたようです。


「ん。猫ちゃんは可愛い」


「ですよねー」


 としばらく猫や犬の話で盛り上がりました。


「ところで勇者殿は普段何をしているのだ?」


 ダンダがもう一度聞きます。


「家でポテチ食べながらゴロゴロしながらアニメ観ていますね」


 ポテチ?アニメ?なにかわかりませんがのんびりとした過ごし方をされているのでしょうか?


「冒険したり悪を倒したりしないのか?」


「たまに近所を冒険したりはしますが、基本は引きこもっていますね。倒すべき悪はそんなにいるもんじゃないですよ」


 そうかと少し落ち込んだ声で返します。ダンダは一番勇者というものに夢を見ていましたからね。


「……冒険の話が聞きたい」


 そうエリーがねだると勇者様は何の話をしましょうか?と悩んだ後、冒険の話をしてくれました。


 とあるところに人間と猫が仲良く暮らす世界がありました。人間と猫が笑い合い争いもなく幸せな世界でしたが、ある日悲劇が起きます。始まりは王国の姫が猫が大好きなのに猫に近寄るとくしゃみが止まらなくなってしまったのです。


 国をあげて解決しようとしていたらその原因不明の病が世界中に広がり、人間が猫を愛せなくなってしまいました。そこで勇者様が召喚され解決を依頼されました。


 当初勇者様はアレルギーという病だと思っていたそうですが、調査したところ人為的に作られた毒が原因ということがわかりました。


 更に勇者様は調べ続けました。そうすると、世界の片隅で震えるワンちゃんを見つけました。そのワンちゃんからその病の元となる毒素が大気中へ拡散されていました。異世界のワンワン星のワンちゃんの陰謀だったそうです。


「……ん~ワンダフル!」


 そんな話を聞きながら私たちは長い馬車の旅を楽しみました。


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