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勇者召喚で来てくれたのは、ピースメイカーさんでした!  作者: 夕暮れの家


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世界で一番美しい景色です

 勇者様によりあっという間に世界は平和になりました。今日は式典が開催されます。世界平和式典です。ここで正式に勇者様のお仕事の終了を宣言します。


 この日のために段差をなくした玉座にお父様が座り、私も隣に座ります。楽団の演奏の元、玉座の間の扉が開かれます。勇者様の登場です。グレーのパーカーとズボンというラフな姿で勇者様が歩いてきます。式典用の服も用意したのですが、断られました。


「今より平和樹立記念式典を開催する!」


 近衛騎士団のイー団長が宣言すると拍手が巻き起こります。モニターが複数浮かび異世界を含め全世界に中継されています。お父様がグッド宰相から紙を渡されます。紙を見ながらお父様が語ります。


「我が世界は魔族と人間が互いに憎しみ合い長年にらみ合いそしてこの度戦争を起こした。我が国は勇者を召喚した。見ていただろうか世界よ。この勇者の活躍を!世界は平和になったぞ!」


 つまり、うちの国のおかげですよということですね。本当に台本にそう書いてあるのでしょうか?グッド宰相を見ると胃を抑えています。お父様のアドリブなんですね。私も胃が痛くなってきました。


「さあ、ここに平和の樹立を祝おうでないか!まずは多大な功績をもたらしてくれた勇者に褒美を取らす!」


 配下の人が城にあった財宝を持ってきます。


「さあ、勇者よ、受け取るがいい!」


 勇者様が困った顔をしていいます。


「いや、いらないです」


「受け取るがいい勇者よ!」


「えっ?だからいらないです」


 お父様が狙った通りにならなくて焦っています。


「報酬は既に決まっているものをいただければと思います。もう一度言っておきます」


 モニターに文字が映ります。

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 勇者に与える報酬一覧


(一)対象世界にしかない物一つ(生き物不可)。

(二)対象世界で一番綺麗な景色の情報(複数可、主観で決めて良い)。

(三)対象世界で一番美味なるものと一番不味なるもの(複数可、主観で決めて良い)。

(四)対象世界で一番可愛い生き物の情報(複数可、モフモフであること、人類不可)。

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 そうです。これが勇者様に渡す報酬です。私たちはもう既に準備を進めています。


「うむ、そうであったな」


 財宝を取り下げるとお父様は雨に濡れた犬のような目をしています。


「仕事の完了を了承いただけるのでしたら、この紙にサインをお願いします」


 そういうと勇者様の手にいつの間にか紙が握られていて、グッド宰相にその紙を渡します。グッド宰相は内容を素早く確認すると、


「問題ございません。王よ、サインをお願いします」


「うむ」


 急遽運び込まれた机と椅子でお父様がサインをします。


「これでいいだろうか?」


 お父様が配下に紙を渡し、配下が勇者様に紙を渡します。勇者様はそれを確認すると、


「問題ございません。これにてピースメイカーの仕事を終了します。報酬は期限以内にください。それまではこのまま衣食住の保証をお願いします」


「うむ、問題ない」


 お父様が高揚に頷きます。


「勇者よ。こうもっとこう派手にはせんのか?」


 楽団の音楽の中、お父様がぼそっと呟きます。


「古今東西、仕事の終わりなんてこんなもんですよ。この後、打ち上げは各自思いっきりやってくださって構いませんよ」


 そうだなというとお父様は国民に向かっていいます。


「皆のもの世界は平和になった!それを祝して飲んで歌って祝うがいい!」


「「「ファングレス!ファングレス!ファングレス!」」」


「「「世界平和!世界平和!世界平和!」」」


「大臣よ!国庫を開け!国民よ!今日は王のおごりだ!」


「「「「「うおおおおおお!」」」」」


「「「「「ファングレス!ファングレス!ファングレス!」」」」」


 財務大臣が項垂れています。お父様のアドリブなんですね。ご迷惑をおかけします。


「そういうことやったらエセベンサイカンも祭りや~皆!おごりや!」


「「「「「エセベンサイカン!エセベンサイカン!エセベンサイカン!」」」」」


「ライメイレンもそうしようではないか」


「「「「「ライメイレン!ライメイレン!ライメイレン!」」」」」


 次々に各国の王が祭りの開催を宣言します。世界中でお祭りです。これは平和の祭典に相応しいですね。嬉しくなってきます。各国の財務大臣の皆様が苦い顔をしていますが、必要経費というものです。


 祭りの喧騒が聞こえてきます。少し緊張しますが、勇気を出すことにしました。


「勇者様お祭りいきませんか?」


「僕とですか?」


 僕?


「そうです。せっかくですからどうかなと」


「いいですよ。行きましょう」


 そう笑顔で応えてくださいました。勇者様と二人で城を抜け出します。いえ、正確には護衛の人たちもついて来ているので二人ではありませんが、気分的には二人です。


 小高い山の頂上にある城から出ると坂の下にずらっと出店が出ています。警備の人に聞くと城から噴水広場までの道に皆集まり飲んだり食べたり盛り上がっているようです。


 勇者様と二人並んで人の輪を抜けていきます。勇者様はしきりにキョロキョロして出店を見ています。


「食べたいものがあったら言ってくださいね」


 そういうと勇者様は一つの出店を指さします。


「あれは何ですか?」


「食べましょう!」


 私は出店の店主に一つくださいなと言います。


「王女様!それに勇者様じゃありませんか!是非、食べていってください!お代はいりません!」


 お代はいらないと言われましたが、それは申し訳ないのでお金を払おうとしたのですが、頑なに受け取って貰えません。


「これくらいは奢らせてください」


 そう懇願されてしまえば何も言えません。感謝を伝えてありがたくいただきます。


「はい、勇者様どうぞ。これはシーホー揚げです。シーホーという実を油で揚げたお菓子ですよ。塩がふってあります」


「星型なんですね」


 そういうと勇者様はシーホーを一つ取るとひょいと口に放り込みます。


「ピスタチオ?ビールに合いそう」


「ビールですか?」


「あ~エールみたいなものです。エールはありましたよね?」


 エールは国民的によく飲まれるお酒です。


「あっ、あそこの屋台でエール売ってるみたいです!買いますか?」


 少し悩んだ後、勇者様はいい笑顔になります。


「仕事も終わったし、ぱぁ~といっちゃいますか!」


「ぱぁ~といっちゃいましょう!」


 エール屋さんでもなんやかんやあってただで貰ってしまいました。申し訳ないですけどありがとうございますと言っていただきました。


「やっぱりエールに合いますね」


 そういうと勇者様はエールを飲みながらぽりぽりシーホーを食べています。実は私エールは初めてなんですよね。国民が美味しいと言いながら笑顔で飲んでいるのを見て飲んでみたいと思っていたんです!琥珀色の液体が美しいです。いざっ!


「……苦い」


 私は多分今凄い顔をしています。


「エールは初めてですか?」


 勇者様は笑顔です。


「はい、実は……」


 勇者様は辺りをキョロキョロすると、


「ちょっと待っててください」


 そういうといなくなりました。少しその場で待っていると小走りに走った勇者様が帰ってきました。


「レンジの実のジュースですか?」


 レンジは柑橘系のスッキリした甘さがある実です。そのジュースを勇者様は持っていました。


「はい、それをこうします」


 私から飲みかけのエールを受け取ると空のコップに注ぎ、そこにレンジのジュースを入れます。


「エールのレンジ割りです。どうですか?」


 恐る恐る口に運びます。


「美味しい!」


 レンジの甘さとエールの苦みが丁度いいです。勇者様ももう一つ持っていたコップにエールとレンジを入れて飲んでいます。


「これは美味しいですね~」


 勇者様が笑顔でいうと、私もなんか嬉しくなります。互いに美味しいですねと言い合い、歩きます。その後、レッドホーンのお肉を食べたり、パリンの実を食べたりしながら歩いていたらあっという間に噴水広場に着いてしまいました。噴水広場には赤と青のゲートと宙に浮かぶ数字があります。今まではなかった光景です。


 赤と青のゲートの前には人がいて、ゲートを通る人も見受けられます。私たちは近くのベンチに座ると今まで歩いてきた王城がある坂を見つめます。その坂には多くの人が集まり飲めや歌えやしています。皆笑顔です。空は雲一つない青空で、勇者様も何も言わずその光景を見つめています。横からちらっと見ると優しい眼差しをしています。その光景が心を締め付けます。だから思わず漏らしてしまいました。


「この光景が世界で一番美しいのかもしれません」


 私がそういうと、


『ピコン!対象世界で一番綺麗な景色をクリアしました』


 そんな声がどこからかしてきました。私は焦ります。


「勇者様今のって」


 勇者様は笑うと、


「僕もこういう景色好きなんですよね。一番綺麗な景色クリアです」


 焦って私はいいました。


「取り消してください!勇者様と一緒に見たい景色があるんです!」


 勇者様は笑うと、


「それも見に行きましょう!」


 そう約束してくださいました。焦りました。私の計画はもう進んでいるのです。


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