遂に邪神エビフト降臨です!
「では今度こそ『邪神エビフトの完全復活』をやっていきましょう!」
勇者様がバルコニーで宣言します。レッドホーンの頭蓋を被ったエビフト団の団長が喜びます。
「ようやくよ!ようやく我らの悲願が叶うのよ!皆の者、歓喜せよ!」
黒ずくめの集団が杖を天に掲げ、野太い声を響かせます。
「「「「エビフト!エビフト!エビフト!」」」」
団長さんが勇者様に話しかけます。
「邪神エビフトの十二の化身の一柱ストロバリオスよ!八つの封印の内、四つは既に我らは解いている。残りの封印を解くのだ!」
「はい、サクッとやっていきましょう」
<<アン・ロック>>
勇者様が魔法を使うとモニターに黒い光の柱が各地で立ち上がります。
「封印は解きました。これでエビフトが封印から目覚めるはずですが」
「フハハハハ!よくやったわ!ストロバリオスよ!後は任せなさい!」
そういうと団長さんたちは何かの儀式を開始しました。
「ふんばっは!ぷんぷんぽこりん!ちらちらちろりす!邪神エビフトよ!その永き眠りより今こそ目覚めよ!」
暗くなった?空を見るといつの間にか黒い雲が上空を覆っています。エビフト団の皆さんが楽器を鳴らし、歌を歌います。
「「「「「果てしないときを超え、輝くは我らの星」」」」」
「「「「「平和などという光の中でさえ輝くは我らの星」」」」」
「「「「「あなた様の威光が世を照らす」」」」」
「「「「「さあ、お目覚めのときが来ました」」」」」
「「「「「おはよう、世界」」」」」
「「「「「さようなら、世界」」」」」
「「「「「世に悲鳴を!世に混沌を!」」」」」
「「「「「渇望するはこの世の地獄!」」」」」
「「「「「あ~エビフトよ、我らの神よ!」」」」」
「「「「「御姿を現したまえ、導きたまえ、もたらしたまえ!」」」」」
「「「「「あ~エビフトよ、我らの神よ!」」」」」
世界が黒で塗りつぶされます。闇に覆われた世界にエビフト団の歌のみが響き渡ります。突然、空の真っ暗な雲が渦を作りました。その渦に皆が飲み込まれてしまう。そんな幻視が浮かんだとき渦の中心から降りたつものがありました。大きな大きな姿が徐々に現れていきます。立派な尻尾?足でしょうか?が見え、唖然と眺めていると全貌が見えました。
「エビーーーーーーーー!」
現れた物体はそう叫ぶと空でぴちぴちと跳ねまわります。
「エビフト様ーーーーー!」
歓喜で団長が涙します。膝を地面につけ祈りのポーズを取ります。団員たちもすぐさま地面に膝をつけ祈ります。
「誰である!我が眠りを覚ましたものはエビー!」
天に赤い全身が鱗に覆われた龍が登場します。いえ、あれは……。
「エビです」
「エビだ」
「でっかいエビだ」
「語尾にエビって言わなかったか?」
エビフト様を中心に黒の波動が広がります。不安と恐怖の気持ちが強くなります。
「うあああ、もうダメだ!」
「もうダメなんだ!」
「世界は終わりだ!」
恐怖に飲まれた声が各地から上がります。
「これは精神干渉系の魔法じゃな。皆の者気を強く持つのじゃ。あれはただのエビ。そう思うんじゃ」
あれはただのエビ。あれはただのエビ。あれはただのエビ!気持ちが少し楽になってきました。海にいた本物のエビさんたちが動揺しています。
「エビエビエー(どういうことだべ)」
「エビエビ?(ご先祖様?)」
「エビエビ!(お母さん見てすっごいカッコいい!)」
エビさんたちがちょっと喜んでいます。
「邪神エビフトよ!なんて素晴らしいお姿ですか!猛々しい龍の姿でご降臨なされるとは!」
団長さんがフォローします。
「エビエビ?(僕たちって龍だったの?)」
「エビエー(俺たちは龍だった!)」
ああ、エビさんたちが感動しています。火を噴くフリをして龍ごっこを楽しんでいます。なんか見ていたらなごんでしまいました。もう恐怖はありません。
「邪神エビフトよ!世界に混沌と恐怖をもたらしたまえ!」
「「「「「たまえーーー!」」」」」
触覚のお鬚をぴくぴくさせてエビフト様が反応します。
「なぜ人間ごときが我と喋れるエビ?むむ、言葉が通じるようになっているエビ!許せないエビ!エビーーーーーーーーーーーーーーー!」
そう叫ぶと空中に魔法陣が浮かびます。
「来たわ!来たのよ!世界の終わりだわ!」
団長が恍惚とした表情で叫びます。あの魔法陣はなんでしょうか?
<<バラ・バッラ・バラ>>
エビフト様がそう唱えると……何が起きたのでしょうか?
「何が起きた?」
「怖い怖い、何?何?」
「エビ!(エビフト様万歳!)」
「エビ!(握手してエビフト様!)」
変化は特にありませんよね?グッド宰相が素早く各地と連絡と取って被害を確認していますが、これといった変化はありません。
「なぜエビ?なぜ言語がバラバラにならないエビ!?ああ!わけのわからない強力な魔法がかかっているエビ!これのせいエビね!エビくそ!エビみそ!エビフライ!」
空の上でエビフト様が悶えながらぴちぴちしています。
「ダメエビ~解けないエビ~」
なんか悲しそうです。少し可哀そうですが、なぜでしょう。ちょっと悲しそうなのが可愛いです。ただ状況を見守っていた勇者様がバルコニーから飛び立ちエビフト様の前に飛んでいきます。
「邪神エビフトさん。あなたには頭上にあるあの青い星の神様になっていただきたいのですがいいですか?」
そういうと雲が一部晴れ、雲の隙間から青い星、新世界が映ります。エビフト様はそれを見つめると驚いた顔をします。多分しています。エビの表情はちょっとわかりづらいです。
「何エビ?あれ何エビ?新世界?我があれの神になる?」
「そうです。あなた様にはあの世界の神になってもらいたいのです」
「邪神エビフトよ!我らが神よ!世界に破滅を!」
「「「「「破滅を!」」」」」
団長さんたちが煽ります。余計なことを言わないで欲しいです!
「我働きたくないエビ」
そういうとプイっと顔を背けてしまいます。
「創造神様にはもう既にご許可は頂いております。あの星で神をやってください」
「嫌エビ!嫌エビ!嫌エビ!嫌エビ!嫌エビ!嫌エビ!」
そういいながらエビフト様は体を左右に揺さぶると世界が揺れます。ダメです!立っていられません。お父様が玉座から転げ落ちました。素早く玉座の下に頭を突っ込んで隠れています。
「エビフトさんこれは決定事項です。受け入れてください」
「嫌エビ!なんでそんなことしなければならないエビ!働きたくないエビ!そもそも!そもそもなんで自分より弱いものたちの命令なんか聞かなきゃいけないエビ!全員死んでしまえばいいエビ!」
そういうと黒い霧が広がります。
「やばいのじゃアレは」
リンネ様が焦るほどですか!どうしましょう!
「ああ、素晴らしいエビフトよ!」
団長さんはいいのでしょうか?このままでは恐らく死んでしまうのですよ。しかし、一向に黒い霧は広がっていきません。
「なぜエビ!なぜ世界に死をもたらせないエビ!!」
黒い霧があっという間に消えました。何が起きたのでしょうか?
「申し訳ございませんが、エビフトさんそれはダメです。レジストさせていただきました」
「お前かエビ!」
エビフト様がお怒りです。大変です。大丈夫でしょうか?
「脆弱な人間ごときが生意気エビ!」
一触即発です。勇者様が右手で前髪をかきあげます。
「私では少々辛いですね。ここからは『俺』が相手をしてやる」
「「「「「俺!俺!俺!」」」」」
「「「「「ヤマダ!ヤマダ!ヤマダ!」」」」」
そういうと勇者様の手にはいつの間にか刀が握られていました。あれ?エビフト様が震えています。
「無理エビ、無理エビ。何それエビ。怖いエビ、怖いエビ。存在値がおかしいエビ」
手で頭を抱えて丸まって震えています。
「遊ぼうか」
そういうと勇者様がニヤッと笑います。
「怖いエビ!遊ばないエビ!帰るエビ!無理エビ!無理エビ!」
そういうと更に丸まっていきます。勇者様を見ると少し困った顔をしています。勇者様が刀から手を放し頭を掻いていると、
「なんてなエビ!」
丸まった体を爆発したかという勢いで一瞬で伸ばし、尻尾が勇者様に襲いかかります。
「粉微塵エビ!」
そんな勇者様!勇者様の姿がありません。同様が世界に伝播します。勇者様……。皆言葉が出てきません。そんなとき、声が聞こえてきました。
「その髭立派だな。も〜らい」
エビフト様の遥か彼方頭上から声がしたからと思うと高速で勇者様が降ってきます。
「エビ!」
咄嗟にエビフト様は両の爪で攻撃しますが、ひらりとかわされ、
キンッ
硬質な音が響きます
「エビ〜〜〜〜!ぼくちんの髭がーーー!なんで人間ごときが切れるエビ!痛いエビーーー!痛いエビーーー!」
エビフト様は泣いてのたうち回っています。なんか可哀そうです。
「ごめんごめん」
<<ゴッド・ヒール>>
切れた髭が元に戻ります。
「お前は何なんエビ!」
「俺は俺だよ」
「帰るエビーーー!」
そういうとエビフト様は泣きながら姿が消えました。
「すみません、創造神様たちエビフトさんの説得はお任せしてもいいでしょうか?」
『ええ、大丈夫よ。今創造神様が説得しているわ。任せて頂戴』
そう武神様の声が聞こえてきます。丸く収まった気がします。無事解決ですね。
「邪神エビフトよ……」
空を見上げながらもういないエビフト様の姿を追いかけるように見つめる団長さんの姿は物悲しそうです。団員の皆さんもガックリしています。
後日、新世界にて団長さんは笑顔でエビフト様のグッズを売り歩いていました。エビフト様の髭が取れるようになっていて、取れた髭でペンとして字がかけるものや、布でできた人形などが人気になっています。
「邪神エビフトを信仰せよ!さあお嬢さんお人形さんはいかがですか?」
どういう心境なのかはわかりませんが、彼女たちが何やら元気に生きているのであればハッピーエンドですよね?こうして、勇者様のお仕事は終わりを迎えたのでした。




