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勇者召喚で来てくれたのは、ピースメイカーさんでした!  作者: 夕暮れの家


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遂に邪神エビフトの復活!?

「そうだ。僕はピピなんだ。どうだい?僕なら忘れさせられるよ。お茶でもどうだろうか?」


 人生初のナンパに困っていると、ピピさんが横に吹っ飛びます。


 ぐはははぁぁばらさっ


「あんたまた浮気して!次はないって言ったでしょ!ホントごめんなさいね」


 空色のニャラザがドロップキックした後、丁寧にこちらに会釈してくださいます。ビックリしましたが、私は深呼吸して笑顔を作りました。


「こちらこそ、楽しかったですよ」


「まさか!?あんたこの人のことが!?」


「いえいえ、全然そういうんじゃないです」


 そうかい、そうかいとカラカラ笑う彼女の横でボロボロになったピピさんはショックを受けているようでした。ちょっと可哀想なことをしたでしょうか?でも浮気はいけないです。


 ズルズルと首根っこを掴まれ引き摺られていくピピさんを見送り、ふともう一度空を眺めると黒に様々な色が散らばり、星々の瞬きに目が吸い込まれます。ピピとペペという赤と青の星は王子と王女に見えて、私はしばらくこの星空を眺めたいと思いました。



 翌朝、何食わぬ顔してベットから起き上がりいつもと変わらない生活を始めます。勇者様との朝食です。準備をして食堂に入ると勇者様が既にいました。


「昨晩はよく眠れましたか?」


 ドキッとしましたが、平静を装います。


「はい、良い夜でした。」


「そうですか。なら良かったです」


 そう微笑んだ勇者様にはきっと昨晩の私のささやかな冒険はバレているのかもしれません。今日のご飯は勇者様がパン以外が食べたいとおっしゃっていたのでスメスという麦を使った粥が出ています。勇者様はうんうんと何かに納得して食べていらっしゃいます。


「……どうかしましたか?」


「なんでもありません!」


 いけません。昨日色々あって勇者様のお顔を見つめて少しぼーっとしてしまいました。


「今日のご予定はどうでしょうか?」


 話を逸らすために話題を振ると、


「昨日の続きです。少し退屈な時間かもしれませんが、お付き合いいただけますと幸いです」


 いえいえと言った後、勇者様とたわいもない雑談をして朝食を食べ後にします。


 勇者様がバルコニーに立ちます。モニターが表示されます。


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 世界会議決定事項一覧


【済み】・世界の名はアーガレストと決定


【済み】・エルフ国の樹立


【済み】・邪神エビフトが治める新世界をこのアーガレスト世界を元に同じように創る


【済み】・新世界へはアーガレスト世界から自由に行き来できるようにする


【済み】・新世界からアーガレスト世界へは悪意を持つものは移動できないようにする


【済み】・アーガレスト世界に住む動物たちで今の生活を望むものは新世界へ、安全な生活を望むものや人や魔族との共存を望むものは引き続きこちらの世界に住めるように移動させる


【済み】・五十の部族がライメイレンの土地にて一つの国家を築く


【済み】・エジプシャンに雨を降らす魔道具を与える


【済み】・すべての奴隷を解放する


【済み】・すべての奴隷はその国が買い上げ、教会がその後の奴隷だった人たちの世話をする


【済み】・亡国の復活と戦死者の死者蘇生、戦争で傷ついたものの回復


【済み】・ライメイレン帝国の戦争の賠償は領土の割譲と賠償金


【済み】・この世界では二度と戦争を起こしてはならない


【済み】・魔王とその配下は戦争ができる世界へ送り届ける


【済み】・異世界交易と異世界旅行の実現


 ・異世界を含めた全ての生物の奴隷化を禁止


 ・世界の平和は全種別において対話でなされていく


 ・エビフトの完全復活


【会議日数】

 二日(責任を持っていい感じに全て叶える)


 ------------------------------------------------------------------------------------------------------------


「では、皆さん今日もよろしくお願いいたします」


「「「勇者様!勇者様!勇者様!」」」


「「「「「ピースメイ!ピースメイ!ピースメイ!」」」」」


 今日も皆さん元気ですね!私も気合いを入れましょう!頬をパチンと叩きます。


「おっ、王女様やる気だね」


「おはようでござるよ」


「眠いわ~おはよう世界」


「おはようございます!」


「おりゃはきょぬもおうにぇんをするにぃ」


 皆さんと元気に挨拶を交わしていきます。一人ものすごく眠そうな人がいましたね。寝てください。そういう私も昨日は夜更かししたので少し眠いです。あくびを思わずするとグッド宰相がすっと寄ってきます。


「王女様、今後は控えていただけますと幸いです」


 バレてた!


「な、何のことでしょう?」


「王とそっくりでございますね」


 グサッ。思わず膝から崩れ落ちてしましました。酷いことを言われました。良い笑顔でグッド宰相が立ち去っていきます。控えましょう。心に誓いました。


「では、『異世界を含めた全ての生物の奴隷化を禁止』からやっていきましょう。実はこれはもう既に完了しています」


「どういうことだ?」


 お父様の呟きがモニターに映ります。途端に決め顔になります。恥ずかしい。


「勇者よ!説明を求む!」


 キリッという擬音が聞こえてきそうな顔でお父様が尋ねます。


「では、ファングレス王よ。従属の首輪を誰かに嵌めてみてください」


 お父様は配下に命令して従属の首輪をすぐに持ってこさせようとしましたが、近衛騎士団のイー団長が懐からスッと王に献上します。なぜ、持っているのでしょうか?今度問い詰めた方がいいかもしれません。


 お父様が従属の首輪を持って周囲を確認すると皆が目を外します。そそくさと逃げるものまでいます。


「ふむ、ではグッドよ。首を差し出せ」


 グッド宰相が捕まりました。心底嫌そうな顔をしたグッド宰相の首に従属の首輪が嵌められます。お父様が不思議そうな顔をします。


「グッドよ。従属の首輪とはこれで終わりだっただろうか?」


「いえ、嵌めた瞬間に従属の魔法が発動するはずですが……」


 そういってグッド宰相は首輪を普通に外してしまいます。


「ただの首輪ですね」


「なるほど。勇者よ。従属の首輪を無効化したのだな」


 お父様がドヤ顔で勇者様に問います。


「そうですね。正確には従属の魔法そのものを無効化しています。昨日設置した異世界への赤のゲートにこの世界の従属の魔法を無効化する術式を組み込んでいます。赤のゲートが存在する限り、この世界は従属の魔法を使用することはできません」


「大儀である」


 玉座から上から目線でお父様がいいます。勇者様が少し嫌そうな顔をしました。偉そうだからですね。私はグッド宰相に目配せします。グッド宰相はお父様をお姫様抱っこするとそっと玉座から降ろします。


「何をするグッド!」


 グッド宰相は笑顔でお父様を見ますが、その目は笑っていないです。お父様はすくっと立ち上がると勇者様を見ます。


「勇者様、それってすんごいいいじゃん」


 最近我が国で流行っているギャルっぽいこと言っています。


「ご理解いただきありがとうございます。ピースメイカーは下ではないです。それをゆめゆめお忘れなきよう」


「「「「「やるか?やるか?やるか?」」」」」


「「「「「戦争する?」」」」」


 皆さまの声を聞き、お父様の顔色が悪くなります。


「まあ、だからといってピースメイカーが上ではないのですが」


「うむ、仲良くしよう!」


 お父様が良い笑顔でいいます。勇者様は微笑み。


「それが一番でしょう」


 と答えます。


「「「「「ピースメイ!ピースメイ!ピースメイ!」」」」」


「では、奴隷化の禁止はこれでいいでしょうか?後は各国で禁止してください」


 グッド宰相や各王たちの頷くところがモニターに映ります。グッド宰相だけモニターに映り自分が映らなかったことをお父様がぐちぐちグッド宰相にいっています。


「次は、『世界の平和は全種別において対話でなされていく』です。これについてですが、この世界は共通言語を維持するということでいいですが、新世界は対話できなくした方がいいですか?」


 空に浮かぶ青い星を見上げます。あの世界では言葉は通じた方がいいのか?難しいです。モニターに厳つい男性が映ります。冒険者ギルド長のゴールさんです。


「勇者よ。頼む、新世界は昔のように言葉を戻してくれ。今のように言葉が通じる世界に戸惑い生きられないものがいる。そんなものの安住の地にしてくれ!」


 ルーベンス王も続けます。


「それがいいでしょう。変化に皆が対応できるわけでもないですし、既に社会的に混乱が起きています」


「せや、結構大変や」


 エセベンサイカンの王が同意すると様々な賛同の声が上がります。


 実は私も先日少し困りました。人の血を吸う小さな虫カァーがいるのですが、


「カーカー(血くれ)」


 私が困っているとカァーが言いました。


「カーカー、カーカー(人は家畜を育て命をいただくのに、自分の少量の血すら他種族に分け与えないのか?)」


 そう言われると何も言い返せず、腕を差し出し血を吸われました。今も痒いです。


「もう俺はダメだ!元の世界と同じがいい!」


「俺もだ!」


「そうか?俺は今の世界の方が好き」


「私も今の世界がいいわ。うちのにゃら太郎と喋れるもの」


 賛否は別れているようです。


「まあ、そうなるだろうね」


「共通言語ができると必ず起きる問題だな」


「あるあるでござるな」


 異世界の皆様がいいます。なるほど、これは新しい世界に生きる住民として適応していかなければならないのでしょう。今まで黙って意見を聞いていた勇者様が口を開きます。


「では、新世界は旧来通りの言語の世界としましょう。そして、この世界では共通言語が失われないようにしておきましょう。それでよろしいですか?」


「お願いする!」


「それがいいでしょう」


 ゴールさんとルーベンス王が代表して同意します。


「では」


 勇者様が空に向けを手を掲げます。


<<ナンヤカンヤ>>


 なんか適当な魔法な感じがします。なんとなくですが。


「ナンヤカンヤか!なら大丈夫だな」


「ナンヤカンヤは高度な暗号化がなされた魔法でござる!」


「これで言語系は大丈夫でしょうね」


 なんか凄い魔法だったみたいです。何も変わっていないようですが、もう終わったのでしょうか?


「おやっさん、今プルピーギーの傍にいるんだが声が聞こえなくなった!」


「そうか!」


「これで冒険ができる!」


「うおおおお!新世界最高!」


 新世界で言葉が通じなくなったようです。これで本当に良かったのでしょうか?


「全くせっかく言語が通じるようになったのにそれを捨てるとは勿体ないと思うがの」


 リンネ様の呟きが聞こえます。そうですね。少し寂しい感じがしますが、今までの世界が良かったというものもいますし、落としどころなのでしょう。


「ではようやく最後です。『エビフトの完全復活』をやりましょう!」


「来たわ!待ってたわ!」


 レッドホーンの頭蓋を被った黒ずくめの女性が歓喜の声をあげます。エビフト団の団長さんがエビフト団の皆さんと盛り上がっています。


「では」


 そう勇者様がいうとバルコニーの上空に切れ目ができます。切れ目は広がっていき、中から十人くらいの人間が飛び出して来ました!


「ピンポンパンポーン!運営のお姉さんだよ!ピースメイカーの配信回線がハッキングされちゃったよ!皆さん変なのが来ました!気を付けてください!ヤマダどうにかしてください!」


 ハッキング?変な人?勇者様を見ると呆れた顔して深いため息をついています。グッド宰相の顔によく似ています。


「全世界よ!我らを見ろ!我らこそがピース・ブレイカー!世に混沌と悲鳴をもたらすものなり!」


「「「「「ブー!ブー!ブー!」」」」」


 ブーイングが酷いです。先ほど名乗りを上げた男性がまた声を張り上げます。


「そこはブレイカー!ブレーカー!だろ!」


 一斉に異世界の皆さんが反応します。


「誰がそんなコールしてやるか!」


「帰れ!」


「お呼びじゃないんだよ!」


「他の世界に迷惑かけてんじゃないわよ!」


「「「「「ブー!ブー!ブー!」」」」」


 どんな人たちなんでしょうか?そう思っているとグッド宰相が聞いてくれます。


「あいつらは世界を混沌に戻そうとするピースメーカーの敵対組織だな」


「敵対組織ですか?」


「そんなたいしたものじゃないわよ。悪童たちが有名になりたくてやってるの」


「悪童ですか?」


「そうでござる。各世界の目立ちたがりの悪ガキたちが作った組織でござるよ」


「ピースメイカーの放送に割り込んで目立とうとしてんのよ」


「特にヤマダの放送は人気でござるから」


 私も会話に参加します。


「なるほど目立ちたがり屋さんたちなんですね」


「昔、ヤマダがノリノリで相手してあげたことがあって、それが凄い再生されて味を占めて付きまとうようになっちゃったのよ」


 困った人たちのようです。


「ヤマダよ!ここで今までの因縁の決着をつけようではないか!」


「「「ないか!」」」


 勇者様を見ると眉間に皺が寄っています。


「今、仕事中です」


 十人くらい……いや八人ですね。八人の男女が勇者様へ空から飛びかかっていきます。


<<ロック>>


 そう勇者様が唱えると空から八人が落ちていきます。いつの間にか手足が光の輪で拘束されています。


「ヤマダよ!酷いではないか!拳で語り合え!」


「「「そうだ!そうだ!」」」


 勇者様の眉間の皺が酷くなります。それを見てグッド宰相の眉間の皺も酷くなります。共鳴したのでしょうか?


「仕事中です。お帰りください」


「「「嫌だーーー!」」」


<<イッテラッシャイ>>


 縛られながら駄々をこねていましたが、勇者様が魔法を発動すると消えてしまいました。


「ピンポンパンポーン!運営のお姉さんだよ!こちらで悪ガキ共を確保しました!お灸を据えた上で各世界へお返しします!ピンポンパンポン」


「ご迷惑おかけして申し訳ございません」


 頭を下げる人たちが画面にどんどん映っていきます。


「うちの世界の馬鹿がすみません」


 非常に申し訳なさそうです。


「大丈夫ですよ」


「せや、なんも害はなかったんや、気にせんといてや」


「皆さま、お顔をあげてください」


「すみません、ありがとうございます」


「タケシ!あんた今日ご飯抜きよ!」


「そんなかあちゃん!」


 皆で笑い合っていると悲鳴が聞こえてきました。


「エビフト様の復活はどうなったのよ!」


 すっかり忘れていました。


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