ごめんなさい、この人たちのことすっかり忘れていました
一夜明けて今日は世界会議開催日です。勇者様が朝食をお取りになると聞きご一緒するため食堂へ向います。
「おはようございます勇者様」
「おはようございますイリス王女」
「食事をご一緒しても?」
「ええ構いませんよ」
焼き立てのパンにベーコンエッグ、付け合わせのお漬物と軽めの食事が運ばれて来ました。
「この刻んだきゅうりのお漬物っぽいのは?」
「パキュリの塩漬けですね。パキュリはそのまま食べても味気のない食べ物なんですが、塩漬けすると美味しくなるんです。ベーコンエッグに付けて食べると絶品ですよ」
「ベーコンエッグに漬物ですか」
勇者様が恐る恐るベーコンエッグにパキュリを乗せパンと一緒にほおばります。
「なるほどコリコリとした食感が加わり面白い。ベーコンエッグに新たに塩味が加わることで味に深みが出ている。それにこのソース、醤油に似ているが醤油よりも甘い。それが各々の味を一つにまとめ調和がとれている。これはありですね」
「でしょう」
勇者様がほほ笑み返して下さいました。いい雰囲気です。
「今日のご予定はいかがなさいますか?」
「この後すぐ召喚した同胞の送還を。その後は時間まで待って世界会議の開催ですね」
「世界会議の開催中はお戻りになられますか?」
「はい、ベッドで寝たいので。それにせっかくですから毎日美味しいもの食べたいですし」
「わかりました。全力でご用意しますね」
「ハハハ、よろしくお願いしますね」
朝食を食べ終えると勇者様はバルコニーへと出て行きました。バルコニー下の広間には疎らですが、昨日の宴からそのままに残っている人達がいて、各々出店の料理を楽しんだり音楽を楽しんだり談笑したりしています。各自スクリーンを表示して色んな人達との交流を楽しんでいるようです。
「さて始めましょうか」
勇者様が空を見つめます。空には巨大な魔法陣の上に沢山の人だかりが今もいました。
「聞け!召喚に応じし同胞たちよ!どうした帰れなかったか?」
「「「「「「「うおおおおおおおおおおおおお!」」」」」」」
「くそおおおおおお、時間切れかああああああああ」
「徹夜したのにわからなかったああああああああ」
「解析楽勝とか言ってごめんなさい!」
「なんなんだこの世界はああああああああああ!」
憤るもの、嘆くもの、反省するもの、様々な人々がスクリーンに映っていきます。
「ほう、スドウにグレンもまだ残っているではないか」
「最後までフォローしてから帰ろうと思ってね」
スドウさんが画面に映ります。今日も爽やかな笑顔が眩しいです。
「そういうことだ」
グレンさんも映ります。少々疲れた顔をしている気がします。
「グレン解けた?」
勇者様が問いかけます。
「当たり前だろ。なめんな」
「そう良かった良かった。楽しめた?」
「まあな」
グレンさんが笑顔で答えます。はうっカッコイイです。グレンさんもイケメンさんです。
「さて皆我が出したヒントには気づけたかな?」
「それな、一体なんだったんだ?」
「わからねええええ!」
「それが分かってたらきっと俺は帰れた。そう俺は帰れたはず!」
「答えを開示しよう!我は言った!この世界はアバランチ世界の彼方にあると!」
「言ってたな」
「アバランチ世界?」
「なんじゃそりゃ?」
「「「「そうか!」」」」
スドウさんが答えます。
「まあヤマダのヒントなしでも気づけなきゃダメだけどね。勇者はそんな前情報なしで突然召喚されるものだしね。アバランチ世界はね、住所がコロコロ変わる世界だよ。だから簡単に言うとパスを通すときにマニュアルで固定にしてあげなきゃいけなかったんだよ」
「そういうことか」
「でもどうして召喚はできたんだ?」
「そこがちょっとややこしいとこなんだけどね。ヤマダが言ってたでしょ。この世界召喚の魔法陣はあるって。たぶん神様が創ったんだと思うよ。調べたところ、召喚に関してだけはアバランチ世界を超えたとこまでパスが通ってたから、それを利用することになるから召喚はできるんだよ」
「なるほどな」
「神様送還も作っとけよ」
「いやアバランチ世界が悪くね?」
ガヤガヤガヤ。
「勇者はどんな環境に呼ばれても自力で帰れないとね。誰かのせいにするのはスマートじゃないよ。ないなら自分で作れないとね」
スドウさんが言います。
「自分の非力を他のせいにすんのはダセえだろ」
グレンさんが続きます。
「まあ送還のパスがないって問題も今回呼んだ皆が作りまくったから解決だよ。後で出来がいいのだけ残しておくからね。今ざっと確認したらアバランチ世界に迷惑かけるのもあったからね。さて皆お帰りの時間ですよ」
勇者様が締めます。皆さん帰ってしまうんですね。寂しいです。
「もう終わりかよ」
「帰りたくねえ」
「世界会議も見ていきてえ」
「はいはい皆帰るよ、それじゃあヤマダまたね。またねこの世界!」
「「「「スドウ!スドウ!スドウ!」」」」
「「「「スドウ様!スドウ様!スドウ様!」」」」
「野郎共帰るぞ。じゃあなヤマダ。またな世界!」
「「「「「「「グレン!グレン!グレン!」」」」」」」
「聞け!名もなき世界の住民共よ!此度の宴を盛り上げた勇士たちの帰還だ!祝え!騒げ!感謝を述べよ!」
「「「「「「「うおおおおおおおおおおおお!」」」」」」」
「また来てくれよなああああああああ!」
「楽しかったぞおおおおおおおおお!」
「ありがとおおおおおおおおお!」
ありがとうございましたー!次々と勇者様に呼ばれた同胞の皆さんが光の粒になって消えていきます。
「自力で帰れなかったものたちよ!我が送ろう!此度の働き見事であった!」
「自力で帰れなかったとか言わないで!」
「やめて恥ずかしい映さないで!」
「違う!俺は自力で帰れるんだ!本当だぞって、帰れねえええええええええええ!」
アハハハハハ。
「またなヤマダ!また呼んでくれよ!」
「じゃあな世界!また会おうぜ!」
「「「「またな!」」」」
私たちの世界の人々が空を見上げながら応えます。
「ばいばーい!」
「また来てね!」
「「「「「「またな!」」」」」」
<<アブソリュート・アーミィ>>
勇者様が呪文を唱えると、上空の魔法陣が光輝きながら皆さんを包みこんでいきます。光が消えるのと同時に魔法陣もその姿がなくなり、皆さんもいなくなりいつもの空が戻ってきました。……寂しいですね。空に無数のスクリーンが現れました。
「ちゃんと帰れたぞ!」
「ここが俺の世界だ!帰れたからな!」
「安心して!帰れたわよ!」
次々に帰還の報告をしてくれます。
「違う!ここは俺の世界じゃない!」
三十代くらいの男性が映ります!はわわ!大変です!
「俺の世界はもっとボンキュッボンのお姉ちゃんが沢山いるんだ!」
「アンタ何言ってんだい!」
恰幅の良い女の人に耳を引っ張られてます。
「痛い痛い痛い!ごめんよ、母ちゃん」
アハハハハハ。
びっくりしました。皆さん無事に帰れたようです。ほっとしました。お日様の位置は見上げる位置にあり、もうそろそろ天頂でしょうか。世界会議です。どうなるのでしょう?お父様大丈夫でしょうか?




