私はワクワクしてきました
勇者様が戻ってきました。ベッドにダイブします。
「さあ夜も遅くなってきたし子供は寝る時間だ。目の前に表示されている画面は消えろと念じれば消えるぞ。宴の本番は明日からだ。安心して眠るがよい。おやすみなさいだ」
「おやすみなさい」
「嫌、お母さんまだ寝たくない!」
「大人はずりぃよ」
「「「ブー!ブー!ブー!」」」
「ハハハ、まあ少しくらいなら良かろう。明日はお昼からだからな」
「やったあ!」
「ピースメイカーさんがいいって言ったよお父さん!」
「しょうがないな」
「でもちゃんと寝るんだぞ」
「「「はーい!」」」
「さて、次に質問とかあるものはいるか?」
「助けてくれヤマダ!」
「はいはい、どうしましたか?」
「俺様はアールデン・ラン・ロガナッシュ!ロガナッシュ王国国王だ!謀反だ!謀反で今攻められている!」
豪華な作りの謁見の間で対峙する二つの兵団がいます!武器を構え王に詰め寄る軍団の内、マントを羽織った一人の男性が叫びます。
「アールデン王よ、退位せよ!」
兵が復唱します。
「「「退位せよ!」」」
「貴様は我が国の王として相応しくない!私腹を肥やし民を鑑みない愚王め!もう国民は我慢の限界なのだ!明日の世界会議には私が出る!その場を明け渡せ!」
「「「明け渡せ!」」」
「俺様は王だ!王が贅を尽くして何が悪い!」
「貴様にはもう何も期待していない!皆のもの奴の首を刎ねるのだ!」
<<グラビトン>>
勇者様が何やら呟くと兵たちが皆地面にひれ伏します。
「はい、静粛に。聞くがよい名もなき世界の住民たちよ。我が任命し印を与えたものはいかなる武力や毒を持ってしてでも殺せぬと知れ。聞け!名もなき世界の住民たちよ、印を持った王の交代は印を持ったものの同意がなくては行われない。すなわち王の交代は話し合いで行われるものとする。よいか話し合いだ。話し合いで決着をつけてみせよ」
「王よ!いや真王ヤマダよ!それではこの愚王は退位しないのだ!」
「頭が固いな、直接殺せない、話し合いで解決しろ。ただそれだけだ、やり方は色々あるだろう。ただ覚えておけ、世界会議では愚王にも愚王としての役目がある。皆賢きものより愚王が混じった方がよい会議となることがあるのだ」
「しかし……しかし!」
マントを羽織った革命を起こそうとしていた男性が悔しそうに唇を噛みます。
「その王の統治に不安があるのならそれは臣下が支えればよいだけのことだ。権力を振りかざしそれすらままならないのか?無視すればよいそんな権力は。それでは王政が立ちゆかぬか?ならば王政などやめてしまえばよい」
「な!?それは!」
「よいか柔軟に対応しろ。目的は世界平和だ。そのための手段は幾通りあってもよい。目的さえ違わなければそれ以外は些事と知れ」
ベッドに横になっていた勇者様が起き上り手を振ります。
「ただし!人死にを出すことは許さん!小の犠牲で大を為す?そんなみみっちい世界平和など願い下げだ!革命を起こしたい?ならば全てのものが笑える革命を起こせ!」
先ほどまで武器を持っていた兵たちがスクリーンを見つめています。
「我が王だ!いいか聞け!各国の各種族の統治は貴様らに任せてやる!統治は自由だ自由にやれ!だが踏み外すな違えるな!目指すは皆が笑って暮らせる世の中だ!」
印を持つ各国の王や部族の長が見つめます。
「王も民も我の民だ!違いはない!我の前に等しく我の民だ!印を持つものよ弁えろ!貴様らは我の大事な民を預かる立場に過ぎないことを!印を持つものよ誇れ!我の代わりに統治できる名誉を!すべての国民よ誇れ!我の民であることを!」
「「「「「「「うおおおおおおおおおおおお!」」」」」」」
「「「「「「「ヤマダ!ヤマダ!ヤマダ!」」」」」」」
「革命を起こそうとした責任ある男よ。平和的に成せ、よいな」
革命を起こそうとした人は片膝をつき腕を胸に臣下の礼を取ります。
「はっ!御身の身心のままに!」
勇者様がまたベッドに横たわりゴロゴロし出しました。
「はい、次の人ー」
「今よいだろうか我らが王よ!」
ツルツルの頭に豊かな髭の豪華な衣装を身にまとったおじいさんが映ります。
「よい、述べよ」
「我が名はガールデン・ラン・トリスタン。トリスタン王国の国王ガールデンである。此度は王に願いがありお声がけた。王よ、我はもう老いた。新たな時代は新たな若人が成すがよいと思う。息子のガールビッシュに王を譲りたいのだがいいだろうか?」
「父上、何を!?」
二十代くらいの男性が映ります。
「聞け、我が息子ガールビッシュよ。そなたは王の重圧に足る器であることを我ガールデンが保障しよう。新たに王となり民を導くのだ」
「……はい、父上」
「いいだろう。王の交代を許可しよう。聞け!印を持つものたちよ!印の継承の方法を教える!印のある手の甲を受け取るものの手の甲に合わせ、こう述べよ、エッシェルテと!」
「父上」
「うむ」
国王ガールデンさんと息子のガールビッシュさんが共に右手の甲を合わせます。
「「エッシェルテ!」」
合わせた手の甲が光輝きます。無事息子のガールビッシュさんの手に王の印が移ったようです。
「感謝する王よ」
「よい。あー印を持つものよ、言っておく。世界会議のために一時的な交代は認めない。世界会議の参加者は各組織の代表でなければならないからだ。交代するのならば責任を持って以降その者が長となり勤めること。以上だ」
「「「はっ!」」」
「ダメですか……」
グッド宰相が疲れた顔で画面に映ります。一時的な交代はダメなそうです。会議頑張ってください。
「次の人ー」
勇者様がベッドでゴロゴロしながら言います。もう眠いのでしょうか欠伸をしています。
「わしじゃ」
リンネさんが画面に映ります。
「はいはい、どうしたのリンネ」
「うむ、大事なことを聞き忘れての」
なんでしょうか?
「会議はどこでやるんじゃ?」
「リンネはいい質問するね。会議は我が創った空間、疑似神界で執り行われる」
「疑似神界とな?」
「そう疑似神界、この世界の常人では到達できない空間を創りそこで会議を行う。肉体は下界に残したまま参加者の魂だけ集めて行うよ。魂だけの存在だから肉体的に疲れることはないし、食事も睡眠も必要としない。他の参加者に殺されることもないし寿命で死んだりもしない。存分に会議に集中できるってわけさ。なお、下界に残した肉体には他のものは指一本触れることはできなくなる。だから安心して会議に参加して欲しい」
「つまり、会議で自国に不利益をもたらす参加者を武力で止めることはできないということじゃな」
「その通り。世界会議は純粋に弁論の場となるというわけ」
「なるほどのお、途中で帰ったりはできるのかの?」
「それはできない。会議が終わるまでずっと疑似神界にいて貰います」
「国民は会議の様子が見えるのかの?」
「それは勿論!会議は生中継だよ!会議の参加者は国民の声を聞きながら会議を行うことになるよ」
「「「「「「「リンネちゃん!リンネちゃん!リンネちゃん!」」」」」」」
「こんな感じに」
「なるほどの、よくやくイメージが掴めてきたのじゃ」
「それは良かった。他に質問ある?」
「大丈夫じゃ」
「よし、じゃあ他に質問ある人ー」
勇者様の同胞の方たちが声をかけます。
「彼女いますかー」
「いませーん」
「結婚してますかー」
「してませーん」
「なんでモテないんですかー」
「泣くぞ!」
「「「「「「「アハハハハ」」」」」」」
「はい、いつものくだりもやったし今日はもうお開きにしようかな。風呂入って寝るわ。お前らも寝ろ」
「お風呂は中継されますか?」
「されませーん」
「寝顔が見たいです」
「無理でーす」
「変顔して?」
「なんでじゃ!?」
「「「「「「「アハハハハ」」」」」」」
「はい、それじゃ億千万の同胞たちよ、そして名もなきこの世界の住民たちよ、おやすみなさい」
「「「「「「「おやすみー」」」」」」」
「明日も期待してるぞヤマダ」
「世界会議楽しみ」
「頑張れよ、名もなき世界」
「世界が平和でありますように」
「「「「「「「ありますように」」」」」」」
全てのスクリーンが消えました。一気に部屋が静かになりました。少し寂しいです。
「勇者様、お疲れさまでした」
「あっはい、お疲れ様です」
「お風呂の準備しますね」
「よろしくお願いします」
「それではまた明日」
「はい、また明日。おやすみなさい」
「おやすみなさい」
勇者様の寝室を後にします。今日は色々なことがありました。世界が一つにまとまりよりよくなっていく手ごたえを感じました。世界会議どうなるのでしょうか?その後の世界はどう変わるのでしょうか?今からワクワクが止まりません。




