そうだったんですね……許せません!でも……
先代魔王リンネさんが治める領土も勇者様に下ったため、残るは我が国を含む2国となりました。
「お父様次ですよ」
「ならん!最後狙いじゃ!」
「なんでですか!?」
「目立ちたいんじゃ!」
「それじゃ悪目立ちしますよ」
「よい、本望じゃ」
ダメです。説得失敗です。今必死に台本を書きあげているグッド宰相の手腕に期待しましょう。というか台本が出来上がるまで番が回って来ないことを祈りましょう。来るな~来るな~。勇者様がリンネさんと戦った大地を元に戻すとまた私たちの前バルコニーに現れます。
「次は誰だ」
勇者様が問いかけます。
……。
誰も返事をしません。
「「「「「「「無礼!無礼!無礼!」」」」」」」
「ではこちらから声をかけるとしよう」
こっちには来ないでー。
「この世界で一番の領土を誇るライメイレン帝国の皇帝よ、応えよ」
スクリーンに玉座の肘掛けに片肘を付き、顎を載せ座る男性が映し出されます。短髪に無精ひげが目立つ鷹を彷彿とさせる目つきの鋭い四十台くらいの男性です。彼が皇帝なのでしょうか?
「ほう良く映っておるではないか」
顎を擦りながら鋭く見つめます。
「勝手に皇帝陛下のお姿を映すとは無礼であるぞ」
甲冑姿の男性が映ります。どこかでみた流れです。
「無礼だったら何だ?我は今皇帝と話しをしているのだ。割って入るなど無礼ではないのか?」
「貴様ッ!」
甲冑姿の兵が武器を構えます。
「無礼は貴様だ三下!」
「真王への無礼は我が世界への侮辱!捻り潰すぞ!」
ドン!ドン!ドン!
スクリーンの向こうで武器を構えた兵隊さんたちが地面を鳴らします。怒っています。
ドン!ドン!ドン!
上空からも地を鳴らす音が響いてきます。
「いつでも行けるぞオラ!」
「俺をその部屋に転移させろヤマダ!」
「どうすんのこれ皇帝さん、我知らんよ、落とし前つけてよ」
「すまん、これでいいか?」
軽く頭を下げながら皇帝が言いました。
「どう皆これでよくない?」
「生ぬるい!」
「真王のお心のままに」
「ヤマダがいいならいいんじゃね?」
「「「「「「「異議なし!」」」」」」」
「とりあえず敬意を払って貰えるかな皇帝さん、話進まないから」
「その皇帝と呼ぶのは止めて貰おうか、お主の前で皇帝など名乗れん。余の名前はグラファルーン・ラン・ライメイレン。グラファルーンと呼んでくれ」
「ごほん、良い。ではグラファと呼ばせて貰おう。グラファよ、ライメイレン帝国は下るな?」
「下る前に確かめたい。ピースメイカー殿は国家を統一した後に何を為す?」
「良い、質問に答えよう。世界平和だ。生きとし生きるもの全てが笑顔で暮らせる世界だ」
「可能だと?」
「可能だと思って努力するのだ。歩みを止めず歩き続けるのだ。さすればより良い未来が開けるだろう」
「理想だな」
「理想という諦めの言葉は好きではない。到達目標だ」
「余も三十年似たようなことを思い王を続けたが、それは儚い夢物語だ」
「半生ごときで諦めるな。最後まで歩みを止めず歩ききった王のみが、死ぬ間際に弱音を吐け。夢物語いいではないか綴ろう。ハッピーエンドを描ききって最後に現実にしてみせよう。我が来た!不可能はないと思え!理想は叶って当たり前だと思え手段はいくらでもある。願え!綴れ!叫べ!貴様らが歩みを止めぬというのならばその尽くを叶えてみせよう!我はピースメイカー平和をもたらす使者なり!」
「「「「「「「ピースメイ!ピースメイ!ピースメイ!」」」」」」」
「これマジだからな」
「覚悟しろよ、ヤマダの理想は高えぞ」
「安心して段階を追ってだから」
「皆フォローしてくれるしな」
「一人じゃないぞ。多くの世界が今も立ち向かってるんだ」
「不安になったときは叫べ!ピースメイと!」
「「「「「「「ピースメイ!ピースメイ!ピースメイ!」」」」」」」
「どうしようもない困難にぶち当たった時は叫べ!ピースメイと!」
「「「「「「「ピースメイ!ピースメイ!ピースメイ!」」」」」」」
「お腹が減ったら叫ぶにゃ!ピースメイと!」
「「「「「「「ピースメイ!ピースメイ!ピースメイ!」」」」」」」
「採用されたにゃ!嬉しいにゃ!」
スクリーンに大きく後ろ足で立って万歳している猫さんが映っています。可愛いです!笑いに包まれます。
「さてグラファよ、他に聞きたいことはあるか?」
「厳しいな王は」
「楽しめ王を」
「そうか楽しむか」
膝を叩き快活に笑います。
「下ろう!ライメイレン帝国は貴殿を王とする!」
「そんな陛下お考え直しを!」
「「「陛下!」」」
「ライメイレンの民たちよ、聞け!余はピースメイカー殿の器に惚れた!任せてもよいと思えた。民たちよ、共にピースメイカー殿の元で楽しい夢をみようではないか!」
「「「はっ!」」」
「ライメイレンの民よ、叫べ!ピースメイと!」
「「「ピースメイ!ピースメイ!ピースメイ!」」」
ライメイレンの国中の民が様々な画面に映ります。
「これはいいな、癖になりそうだ」
表示された地図の大陸南部一体から中部の一部が赤く塗りつぶされます。残るは我が国のみです。
「グラファよ、盛り上がっているところ悪いが大事な話しがある」
「なんだ、王よ」
「これからの話しをする上で皆の前で明かさなければならない話しがある。そうだろ」
「何を?」
「この戦争の落とし前だ。貴国が扇動して発生した魔国と人族の戦争についてだ。グラファ我はお前が知っていることを知っているぞ。言い逃れは許さん」
「どういうことだ!?」
「扇動!?」
「ライメイレンが唆したってことか?」
「この世界で起きた魔族と人族の此度の戦争は、きっかけをひも解くととある人族が魔国に侵入し不正に魔国の民を捕まえ自国で奴隷として売りさばいたことにある。それに怒った魔国の民たちが人族の国へ侵攻したことから此度の悲劇は幕を開けた。事件を起こした人族を調べ上げると国籍を偽っているがライメイレンのものだ。しかもライメイレンの特殊部隊に所属している。記録を遡ると軍務での会議に行きつく。さてグラファ続きはお前の口から聞きたい。認めるか?認めるのならば何故起こしたのかその理由をライメイレン皇帝として述べて見よ」
「……そこまでわかっていたのか。そうだ、我が国が扇動した!何故か!魔族によって人族の国を滅ぼさせ更地になった後、我が国が魔族を打ち破り支配下と置くためだ!世界は統一されなければならない!そう思った!沢山の国がある状況ではダメなのだ!国境を隔て争いが起こる。異なる文化が芽生えれば衝突が起こる!全ては一つのもとにまとまるべきなのだ!」
「ふざけるなあああああああああ!」
「あんたのせいかあああああああ!」
「父ちゃんを返してええええええ!」
ふざけるなです!スクリーンにも人族、魔族、魔物種族問わず、怒りに内震える生き物たちが次々に映り込みます。皇帝が映るスクリーンに向かって物を投げ始める人達が現れ始めました。その映像が流れると続々と各地で同じようにスクリーンに物を投げつけ始めました。
「聞け!怒りに震えるこの世界に生きる民たちよ!物を投げるな!物が可哀そうだ!叫べ!そういうときは空に向かって叫ぶんだ!『うおおおおおおお!』だやってみろ!」
「「「うおおおおおおおおお!」」」
「足らないそんなものか!」
「「「「「うおおおおおおおおおおおおお!」」」」」
「そんなものか!」
「「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」」」」」」」
「よし、静まれ!此度の件について我の意見を述べる!」
静まり返ります。
「良いかまだ名もない世界の民よ、覚えておけ!謀略、策謀、いいだろう好きにやれ!但し全世界の皆が笑って過ごせるようにするためだ!戦い、戦争、いいだろう好きにやれ!但し全世界の皆の幸せのためだ!これが大原則だ!ライメイレンは多くの民を泣かせた!その罪は重い!聞け!まだ名もない世界の民よ!考えよ!その罪を贖うための罰を!」
「死刑だ!」
「首を刎ねろ!」
「「「「「「「死刑!死刑!死刑!」」」」」」」
「聞け!怒りに震えし民たちよ!死刑どこまでだ!?皇帝のみか!?臣下も含めてか!?それともライメイレンの国民全てか!?」
どこまで……。
「聞け!怒りに震えし民たちよ!皇帝一人だとしても皇帝には子がいるぞ!親を愛する子がいるぞ!その子は泣くだろう!いいか、我は言った!この世界に平和をもたらすと!全ての民が幸せにならねばならない!一人残らずだ!」
ザワザワザワ。
どうすればいいのでしょう?
「良いか、名もなき世界の住民たちよ!考えよ!此度は死刑は許さん!皆が幸せになる未来を考えよ!」
ザワザワザワ。
「答えを聞く機会を後に設ける!名もなき世界の全ての住民よ!宿題だ!考えよ!億千万の同胞たちよ!これはこの世界の民の宿題なり!口出し無用だ!」
「「「「「「「諾!諾!諾!」」」」」」」
「よく考えろよ!」
「自由な発想でね!」
「荒唐無稽なのでもいいのよ!」
「ポイントは皆が幸せになる未来についてよ!」
「聞け!億千万の同胞たちよ!ヒントはそこまでだ!これから個別に聞かれても答えてはならぬ!よいか!」
「「「「「「「諾!諾!諾!」」」」」」」
「グラファよ、お前にも宿題だぞ、ちゃんと考えよ」
「わかった。考えよう……」
どうすれば良いのでしょうか?戦争を引き起こした罪に相応しい罰とはなんでしょうか?難しいです。しかも死刑はなしです。どうすれば……。




