リンネさん
「次は誰だ」
「これはわしもということじゃろうな」
スクリーンに背中まで垂れる銀の髪をもった可憐な少女が映ります。勇者様が謁見の間にて魔王を表示した際に映っていたもう一人の女性です。
「ほう、貴様も魔物の王か」
「先代じゃがの。魔国の西部はわしに服従を誓う部族が多いのでな。わしが面倒をみておるのじゃ」
「「「「「「「ロリ!ロリ!ロリ!」」」」」」」
「ロリとはなんじゃ?褒められとるのかのぉ?」
「「「「「「「至宝!至宝!至宝!」」」」」」」
「悪い気はせんのう~」
「配下に加わるか否か?」
「加わるでいいんじゃが、わしも久しぶりに体を動かしたくなってのう。一つお主と勝負がしたいのう」
「「「「「「「勝負!勝負!勝負!」」」」」」」
「待て勇者よ!」
お父様!?
「そやつはニセモノだ!魔王に先代がおるわけがない、先代の魔王は五百年前我らの祖先が召喚した偉大なる勇者ピロシキが討ち滅ぼしたはずだ!」
お父様いきなりイキイキと目立ちたがりなんだから。
「勇者ピロシキとは懐かしいの~、あやつが倒した魔王はわしの影じゃ」
「そんなはずはない!第一先代魔王はお主のようなチンチクリンではなかったわい!」
確かにお父様の言う通り、五百年前の魔王の姿絵と今表示されている少女では姿が違います。
「そうじゃなあ、五百年前じゃとこの姿かの?」
少女が光に包まれると二本の短い角を持つ妖艶な美女が映ります。この姿です!姿絵にありました!
「「「「「「「美女!美女!美女!」」」」」」」
「「「「「「「巨乳!巨乳!巨乳!」」」」」」」
「ロリがあああああああああああ!」
「正体はどっちだあああああああ!」
「「「角!角!角!」」」
「「「「「「「魔族!魔族!魔族!」」」」」」」
「その姿は魔王カーミラ!なんと本当だったか!?」
「そうじゃわしじゃ、理解して貰えたかの?」
「なぜだ!?なぜ影など……そうか勇者ピロシキに恐れをなしたのだな」
「わしが死ねば戦争が終わるじゃろ?だからじゃ」
「なっ!?」
世界平和のためだとでも言うのでしょうか?
「わしはもう人族とは関わらないで生きることにしたんじゃよ。言葉は通じず思いは届かず、殺し殺され、そんなのはもうこりごりじゃ。この世界は間違っておる。今のように異種族間で言葉が通じれば戦争などという酷い争いは起こらなかったのじゃないか?起きたとしてもまた手を取り合うことができたのじゃないか?この世界は欠陥だらけじゃ。わしはのうこの世界を作った神が憎い!この世界が大っ嫌いじゃ!」
……。
「先代魔王カーミラよ、勝負がお望みか?」
「今はリンネと名乗っておる。リンネと呼んで欲しいのぉ」
「「「「「「「リンネ!リンネ!リンネ!」」」」」」」
「うむ、気分が良いのぉ、今はこの姿が気に入っておってな戻すぞ」
豊満な双丘、くびれたウエスト、密かに主張するお尻のボンキュボンの妖艶な色気を持つ姿から最初の透明感があり静謐な雰囲気を持つ少女に変わりました。
「「「「「「「ロリ!ロリ!ロリ!」」」」」」」
「合法ロリ!」
「胸を隠して正解だ!ヤマダに揉まれるぞ!」
「誰が揉むか!」
「「「「「「「スケベ!スケベ!スケベ!」」」」」」」
勇者様がリンネさんがいる森の中に現れます。
「揉むのかの?」
「揉まんわ!!!」
リンネさんがカラカラと笑います。
「一つ頼みがあるのじゃがよいかの?」
「なんだ言ってみろ」
「さっきやっておった元に戻す魔法を使ってほしいのじゃ。思い切り暴れられんのじゃ」
「いいだろう。百秒だ。お前に百秒くれてやる」
<<ワン・ハンドレッド>>
上空に百の数字が浮かび上がります。
「うむ、では行くぞ」
リンネさんが上空に飛び上がりました。手を下から上へと振り上げます。勇者様のいる大地が爆発しました。事前に地面に魔法式を仕込んでいたのでしょうか?
「少々卑怯じゃが、これぐらいせんと効かんじゃろ?」
砂煙が収まるとぽっかり空いた穴の中心に勇者様が佇んでいます。よかった無傷のようです。眉根を寄せて不快そうな顔で言います。
「けほっけほっ埃っぽ」
<<クリーン>>
勇者様を取り巻く水が現れました。洗浄魔法のようです。
「油断しすぎじゃろ!」
<<フリーズ>>
勇者様を覆っていた水が瞬く間に凍りつきます。はわわっ!大丈夫でしょうか?
「ふん!」
氷が飛び散ります!勇者様が中から現れました。
「寒っ!」
「これではダメか、ではこれならどうじゃ!」
リンネさんがかざした手から炎の玉が打ち出されました。勇者様が殴ってそれを上空にはじき返します。
「「「障壁展開!」」」
「「「うああああああああああ!」」」
上空にいた勇者様が召喚した人族の戦士たちに流れ弾が当たり吹き飛んでいきます。
「あっわりぃ」
「ふざけんなああああああああああ!」
「死ぬとこ!死ぬとこだったああああ!」
リンネさんが手を振りおろすと雷が落ちます。勇者様を雷が貫くかと思われたら勇者様が雷を上空に殴り返します。
「うあああああああああああああ!」
「また来たああああああああああ!」
「リンネちゃん勘弁してえええええ!」
「そう言われても弾き返しておるのはあやつじゃからの~」
リンネさんの腕から氷の細長い龍が飛びだしました。大きな口を開き勇者様を飲み込もうとします。勇者様は駆け飛び上がると龍の上あごに手をつけ、そのまま龍の背に飛び乗ります。龍の背を渡りリンネさんに迫ります。リンネさんは腕を振り龍が暴れさせますが、勇者様は平然と龍の背の上を走っていきます。リンネさんが慌てて龍を消しますが、勇者様は空を蹴りリンネさんへ接近します。
「歯食いしばれ」
ブン!
勇者様のパンチがリンネさんの顔面に炸裂するかと思いましたが、間一髪リンネさんがそれを避けます。
「あれ?やるじゃん!」
ブン!ブン!ブン!
勇者様のパンチが当たりません!
「お主のパンチは因果律をいじくりパンチが当たる未来に収束させておるのじゃろう。その手は食わんぞ!」
リンネさんがドヤ顔です!
「じゃあこれはどうだ」
突如背後に現れた勇者様がリンネさんを後ろから抱き締めます。
「なんじゃどうやった!?」
「「「「「「「変態!変態!変態!」」」」」」」
「これは……外れん!ぐぬぬ、むぬぬ、ふんがああ」
クンカクンカ。
「良い匂いだ」
「「「「「「「ド変態!ド変態!ド変態!」」」」」」」
「馬鹿野郎!役得だ!」
「そんな役あるかあああああああ!」
「代われヤマダあああああああああ!」
「「「「「「「痴漢!痴漢!痴漢!」」」」」」」
「「「「「「「犯罪!犯罪!犯罪!」」」」」」」
「違うこれはバトルの結果だ!」
リンネさんの頭をナデナデしながら叫んでいます。変態さんです。
「どうだリンネ。我に愛でられる運命から逃れられるか!?これが本当の因果律操作だ!」
ナデナデ。クンカクンカ。
「むがあああああ。ダメじゃあ逃れられん!降参じゃ参ったのじゃ」
抵抗を続けていたリンネさんでしたが体を脱力させ降参宣言です。
「そうか」
勇者様が抱擁を解き、リンネさんを解放します。
「今ちょっと残念そうな顔しただろ!」
「ギルティギルティ!」
「リンネちゃん感想は!?」
「むっ?感想かのう……あったかかったぞ」
「「「「「「「キャーーーーーーーー!」」」」」」」
「「「「「「「ギルティ!ギルティ!ギルティ!」」」」」」」
「「「「「「「ロリコン!ロリコン!ロリコン!」」」」」」」
「ヤマダは巨乳好きだろ!」
「ヤマダさん、全世界の他のピースメイカーが真似したらどうするんですか!?」
「それはマズイ、聞け億千万の同胞たちよ!捕獲後、やっていいのはクンカクンカナデナデまでだ!それ以上は犯罪としれ!」
「いや、どうなのそのボーダーライン」
「動物を愛でるのと同じでござるな、セーフでござる」
「いやいや、アウトっしょ」
「ピースメイカーにもご褒美あっていいと思います!」
「「「運営どうなの?」」」
新たなスクリーンが現れます。マイクを前に制服を着た綺麗な女性が映っています。
「はーい、呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃーん!ピースメイカー運営本部です。皆さんこの度はヤマダのピースメイカー活動のご支援ご助力ありがとうございます。先ほどのヤマダの問題行動ですが、被害者のリンネさんのお言葉を持って処罰を決定したいと思います。リンネさんヤマダを訴えますか?」
「なんじゃ皆ハグくらいで初心じゃのう、逆にわしが恥ずかしくなってしまうのじゃ。訴えはせん、それに密着していたことで魔法式の流れがわかって因果律操作の仕方がより分かりやすかったんじゃ。勉強になって感謝しとるくらいじゃ」
「「「「「「「天使!」」」」」」」
「はーい、運営ですよ。誠に残念ながらリンネさんが訴えないとのことですので、この件は問題にできません。ヤマダを社会的に葬り去るチャンスだったのですが残念です。ですがこの動画はいつものように天界ネットに公開しますので、皆さんで各々議論を交わしてください。ではでは皆様方引き続きピースメイカーをよろしくお願い致します」
「ヤマダが運営に嫌われ過ぎな件」
「相変わらずヤマダは運営に嫌われてるな」
「運営はさっさとヤマダを現場から遠ざけたいのでござるよ」
「毎回何かしらの問題起こすしな」
「ピースメイカーじゃなくてトラブルメイカーだもんな」
「だがそれがいい!」
「今回はリンネちゃんに救われたな」
「リンネちゃんマジ天使」
「「「「「「「リンネちゃん!リンネちゃん!リンネちゃん!」」」」」」」
「わし大人気じゃの」
「乙女を抱擁するのは安くないわよ!」
「リンネちゃんヤマダに対価を要求するのよ!」
「ふっかけろ!リンネちゃんチャンスだ!」
「「「「「「「対価!対価!対価!」」」」」」」
「む、対価かのう何がいいのかの~思いつかんの~」
「「「「「「「夢!夢!夢!」」」」」」」
「夢かのう?夢を叶えて貰えるということかのう~」
「いいだろうリンネよ、貴様の夢を叶えてやろう!」
「「「「「「「偉そう!偉そう!偉そう!」」」」」」」
「リンネさん夢を叶えますので、言ってみてください」
「「「「「「「素直!素直!素直!」」」」」」」
「この世界に住む魔物や魔族が幸せに生きられるように、というのはどうじゃ?」
「それはこの世界に住む皆さんが勤めることですね。仕事内容に含まれるためフォローはします。それ以外にリンネさんの個人的な望みを聞かせてください」
「「「「「「「丁寧!丁寧!丁寧!」」」」」」」
「……あったのじゃ、一つだけ。この世界を創った神をぶん殴りたいのじゃ!」
「いいぞ!やれやれ!」
「神様なんかくそくらえだ!」
「リンネちゃん最高おおおおおお!」
「「「「不遜!不遜!不遜!」」」」
「「「「妥当!妥当!妥当!」」」」
「クックックッ、フハハハハ、ハーッハッハッハ!この世界を創ったと吠えたな!ならば創造神だ!」
「マジか!?」
「そこいく!?」
「ありえねえええええ!」
「まずいだろ!」
「我がその願い叶えてやろう!我の権限を持って!」
「「「「「「「神王!神王!神王!」」」」」」」
「我は神王ではない!ただのピースメイカーだ!」
「「「「「「「ピースメイ!ピースメイ!ピースメイ!」」」」」」」
『待ちなさい!』
芯の強い女性の声がします。スクリーンを探しても該当の女性は見当たりません。
「「「誰だ!?誰だ!?」」」
『私はこの世界の武を司る神よ!殴るのなら私にしなさい!』
「「「ブー!ブー!ブー!」」」
「創造神様はダメよ!」
「武神なら妥当じゃね?」
「いや、ここは創造神だろ!」
「「「創造神!創造神!創造神!」」」
「「「武神!武神!武神!」」」
「リンネよ!選ぶがよい!創造神か武神か!」
はわわっ、大変なことになってきました。神様が殴られてしまいます。
「武神に恨みはない。創造神じゃ!」
『考え直してください』
「嫌じゃ!創造神を殴りたいんじゃ!」
「「「「「「「創造神!創造神!創造神!」」」」」」」
「静まれ!億千万の同胞たちよ!聞け!この世界に生きる住民たちよ!今創造神が我に話しかけてきた。創造神のお言葉を伝える伏して聞け!『このものは資格あるものか』と!」
「創造神よ、ピースメイカーがお答えしよう!このものはこの世界で一番強い強者である!その児戯は神の頂きを覗くものなり!」
『到達者なのね!』
「到達者かまじか!」
「リンネちゃんすげええええええ!」
「自力到達者とか久しぶりに見るわ!」
「「「「「「「到達者!到達者!到達者!」」」」」」」
『到達者が出たって本当ですか!?』
優しそうな男の人の声が響きます。
『そうなのよ!リンネちゃんよ、到達者よ!』
『何千年ぶりですか!?』
『リンネか、あのものなら到達すると思っておったわ』
老獪そうな男性の声が聞こえます。
『皆も呼ばなきゃ!』
何やら神様たちが大慌てです。到達者とは何なのでしょうか?
「何やら褒められているようじゃが、到達者とは何なんじゃ?」
「「「神に至る資格を持つもの!」」」
「なんじゃわし神になるのかの?」
『そうよリンネ、貴女は神になるのよ』
「え、嫌じゃ」
『『『えーーーーーー!?』』』
リンネさん凄い嫌そうな顔しています。
「わし神は嫌いじゃ、そんなことより創造神をぶん殴る件はどうなったんじゃ」
腕を振り回しながら言っています。やる気満々です!
「あー創造神よりのお言葉を伝える。静聴せよ!『リンネよ、我の元へ来い。我を殴る権利を認めよう』」
『『『創造神様!?』』』
「言ったな!今から殴りに行ってやるのじゃ!待っておれ!」
「「「「「「「リンネ!リンネ!リンネ!」」」」」」」
「……どうやって行くんじゃ??」
「「「「「「「ズコーーー!」」」」」」」
小首を傾げています。
「我が連れて行こう。リンネよ、我の手を握れ」
「うむ」
勇者様が手を差し出します。リンネさんが手を取りました。
「リンネ、この世界の住民たちに創造神を殴る前に何か一言どうだ?」
「うむ、そうじゃな!欠陥だらけのこの世界に生きる皆のもの!今よりわしが創造神をぶん殴りに行ってくる!不遇な生まれに嘆くものよ、悲惨な運命に翻弄されしものよ、わしが一発目に物みせてくる!叫べ!わしの名を呼べ!その慟哭がわしの拳に宿る!」
「「「リンネえええええええええええええ!!!」」」
スクリーンに空に向かって叫ぶ様々な魔物たちが映ります。豚さんも映りました。農家の方が驚いています。右拳を高々と突き上げリンネさんが応えます!
「受け取った!」
「じゃあ行くぞ、出会いがしらに有無をも言わさずぶん殴るのがお勧めだ」
「うむ、わかった」
「「「「「「「リンネ!リンネ!リンネ!」」」」」」」
勇者様とリンネさんが消えました!どのスクリーンを見ても映っていません。神様を殴るところは放映しないのでしょうか?
「「「「「「「映せ!映せ!映せ!」」」」」」」
「はーい、呼ばれてないけどじゃじゃじゃじゃーん!運営のお姉さんだぞ。今回神界の撮影許可は下りておりません。皆さんの心の目でお楽しみください。運営よりでした」
「「「「「「「ブー!ブー!ブー!」」」」」」」
ブー!ブー!ブー!
勇者様とリンネさんが現れました!リンネさんは俯いていてその表情が読み取れません。
「どうだった!?」
「リンネちゃん報告して!」
「ノックアウトとったか!?」
「……ダメじゃった。わしは出会いがしら思いっきり全力で顔面に拳を叩きこんでやったんじゃ。でもダメじゃった。ぺチッとしかいわんかった。ペチじゃペチ頬肉がプルンと動いただけじゃ」
脱力して地面に座り込みます。
「悔しいのじゃああああああああああああ!」
号泣です!空に向かって号泣です。はわわっ、リンネさんが可哀そうです。
「「「リンネ様ああああああああああ!」」」
様々な魔物や先ほど映った豚も号泣です!なんでしょうこれ。
「いやいやペチはいいほうだろ」
「そうそうカキンとかあるしな」
「そもそも威圧で殴れないとかあるし」
「ノリの悪い創造神ね、ちょっと吹っ飛ばされるくらいしてあげなさいよ」
「グッジョブリンネちゃん!」
「ナイスファイトよ!」
「「「「「「「リンネ!リンネ!リンネ!」」」」」」」
「ありがとうなのじゃ、ありがとうなのじゃ」
涙ながらに感謝を述べてます。
「おっ皆聞け!創造神よりのお言葉を受信した!『虫歯に響いてちゃんと痛かったぞ』だ!」
「創造神様優しいいいいいいいい」
「創造神お茶目だな」
「ちゃんと歯磨けよ創造神!」
笑い声が溢れます。
「まあアレだなリンネ、神をぶっ飛ばしたければもっと鍛えないとな」
「わかったのじゃ、もっと鍛えるのじゃ」
「「「「「「「リベンジ!リベンジ!リベンジ!」」」」」」」
「今度は自力で殴りに行くのじゃ!」
「そうだ!いいぞリンネちゃん!」
「頑張ってえええええ!」
「「「「「「「リンネ!リンネ!リンネ!」」」」」」」
リンネ!リンネ!リンネ!
「さてリンネ、我に下るか?」
勇者様が跪いているリンネさんに手を差し伸べます。
「うむ、下るのじゃ」
勇者様の手を取り助け起こされます。地図の北部西側が赤く染まりました。残るは大陸南部一体から中部を占める大陸一の領土を誇るライメイレン帝国と大陸中部から東部を占め大陸で二番目の領土を誇る我が国ファングレス王国の2国のみです。




