ちょっと酷い気が……
盛大な人魔大戦が終わりました。百秒という短い間の戦いでしたが見どころが沢山有り楽しかった……いえ、降り注ぐ血と臓物は本物で消えゆく命も本物で単純に楽しかったと言っていいものなのか。いえ言ってはいけないのでしょう。我が国は今や最前線として魔王軍と戦ってきました。魔王軍と戦う凄惨さは先ほど行われた戦いと変わらなかったでしょう。彼らは生きては戻らないのです。気が引き締まる思いです。早く戦争を終わらせなければなりません。
勇者様が問いかけます。
「さて魔物の王よ、下る気にはなったかな?」
「なんだこの茶番は!」
「目の前で行われた戦いは手を抜いた茶番だったか?そう見えたか?」
魔王軍の人達が無言で魔王を見つめます。
「茶番ではないか全てが元通りなど!」
「戦い死んだ記憶はそのままで状態だけが戻っただけだ。その勇士は本物だぞ」
「……ギラル答えよ。あの誓いは本物か?」
「本物でございます魔王様。我らは魔王様に仕えるべく馳せ参じました。此度の召喚戻る気はございません。貴女様と共に」
「「「共に!」」」
「ただし遺憾なことながら召喚の際に条件をつけられております。この世界の戦争には手出しをしてはならないと、禁を破ると強制的に送還されてしまいます。魔王様どうか我らと共に他の世界へ赴き覇道を歩んではいただけないでしょうか?」
「「「是非に!」」」
「この世界を捨て……か」
「騙されてはなりませぬ魔王よ!」
ガナル将軍です。魔王軍の将軍で前線にて指揮を取る鬼、姿絵が出回っているので間違いないでしょう。
「ガナル爺か、我が騙されていると?」
「左様!人族に負ける奴らなどの甘言に惑わされてはなりませぬ!」
「お前はあの戦いを見ていなかったのか?こやつらはお主たちよりも上だぞ」
「何を!?」
「我は目の前で戦いを見ていた。少なくともギラルは魔王軍一の実力を持つお主よりも上だろう」
「なんと!?」
「それが敵わぬ軍勢だったのだ。我らが挑んでも勝てないだろう」
「「「「「「「賢王!賢王!賢王!」」」」」」」
「ではいかがすると!?」
「ギラルよ、他の世界には我が臣下たちも連れて行けるのか?」
「可能でございます。ここにいますザッフラルは召喚魔法の名手、好きな世界に好きなだけ連れていけます。もう次の世界の目星はつけております」
「そうか……。ヤマダよ、我は下らぬ。我はこの世界に未練はない。我はもっと強いものが跋扈する世界で心躍る闘争の日々を過ごしたい。この世界のことなど好きにするがよい」
「「「魔王様!」」」
「うちの世界来い!」
「かかってこい魔族!うちの世界だ!」
「いーやうちだね、うちでアイドル魔王やろう!」
「「「「「「「魔王様!魔王様!魔王様!」」」」」」」
良い話な気がします。魔王がいなくなって世界は平和になるんですね。
「ダメだ!く・だ・れ!」
「下らぬ、この世界は好きにせよと言っているではないか!?」
「それとこれとは別だ、下れ!我が配下となれ!」
「い・や・だ!」
勇者様が魔王の前に現れます。
「では力づくで言わせてやろう!」
「「「「「「「鬼畜!鬼畜!鬼畜!」」」」」」」
「「「「「「「魔王!魔王!魔王!」」」」」」」
「我に勝負を挑むか!いいだろうコテンパンに伸してくれる!」
「「「「「「「勝負!勝負!勝負!」」」」」」」
「コテンパン可愛い!」
「いいぞ魔王やれやれ!」
「ヤマダをぶっ潰せ!」
「「「「「「「勝負!勝負!勝負!」」」」」」」
「いくぞ」
「こい!」
勇者様が魔王の目の前にいきなり現れました。右拳を振り抜きます。
「なめるなあああああああああ!」
魔王が右拳に右拳を合わせて向い打ちます。衝撃で魔王城の上部が吹き飛びます!魔王の腕があらぬ方向にねじ飛びます!
「次いくぞ」
勇者様の右腕がまた魔王の顔面へ向かいます。
「くそがっ」
魔王は横にステップを踏み避けます。
「ぷぎゃぐほおおおおおおおおおお」
ドゴーン!
避けたはずの拳が顔面にめり込み魔王が吹き飛ばされてしまいました。壁にめり込んでいます。生きているでしょうか?
「「「「「「「ブー!ブー!ブー!」」」」」」」
「男女平等過ぎいいいいいいいいい!」
「最低ええええええええええええ!」
「これだからヤマダはモテナイんだよ!」
「「「「「「「鬼畜!鬼畜!鬼畜!」」」」」」」
「煩いお前ら!ちゃんと治すから!」
<<ヒール>>
「そういう問題じゃないんだよ!」
「魔王ちゃんが可愛そうだ!」
「女の敵!」
「煩いお前ら!ちょっと黙ってて!」
ペチペチ。
勇者様が魔王の頬を手でペチペチしています。
「はっ、私は……」
「起きたかこの世界の魔王よ、強ければ生き弱ければ死ぬ。強いものに従え、我に下れ」
「私は負けたのか……そうかでは、今は下ろう」
「よい、挑戦は受け付けてやる。魔王と名乗ることも許可しよう。存分に暴れるがいい」
「私を殺さなかったことを後悔させてやる」
「名はなんという」
「カッサンドラだ。カッサンドラ・アルマーニ、お前を打ち殺すものの名だ!」
「カッサンドラだな、覚えておく」
勇者様が魔王カッサンドラさんの側から離れると魔王軍のメンバーが駆け寄ります。
「「「魔王様!」」」
「今は下った。それでもついてきてくれるか?」
「「「はっ!」」」
空中に表示された地図の魔国の部分が赤に染まります。魔国の侵攻部分の大陸中部と北部の東側一帯が赤くなりました。魔国の西側が赤くなりません。どうしてでしょう?




