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第47話:無尽蔵の光、癒やしの奇跡

壊滅的なダメージを負った仲間たち。フィンは完成した核融合の力を使い、物理法則を捻じ曲げてでも「家族」を救います。

1100年前の静寂が支配する中央管制室。

 若き日の吉川所長と佐野宏樹が愕然と見守る中、フィンは血に塗れた膝を突きながらも、必死に背後の仲間たちを振り返った。


「アリシアさん! みんな……ッ!」


アリシアたちの姿は凄惨だった。時空の圧力に正面から抗った肉体は、至る所が光の粒子として削り取られ、生命の灯火は今にも消え入りそうに揺らめいている。

 彼らがフィンに与えた「生命エネルギー」は、もはや生存に必要な最低限度を下回っていた。


「……マスター、警告。アリシア個体、および随行幹部5名の生命維持率が3%を切りました。……彼らは、死にます」


サンテスの無機質な宣告が、フィンの脳内を突き刺す。


「そんなの……嫌だ。絶対に死なせない! サンテス、僕のエネルギーを使って! 今の僕には、一千年分が詰まってるんだ!」


フィンの胸の中央――生体核融合炉が、黄金の咆哮を上げた。

 かつての「原子炉」ではない。一千年の進化を経て、太陽をその身に宿した「完成体」の出力。それはAIサンテスにとっても、未知の領域の演算リソースであった。


『――了解。核融合出力をサンテス・コアへ全開放。ナノマシン生成プラント、最大稼働……物理定数を再定義します』


ドォォォォォンッ!!


管制室の床から、眩い純白の光の柱が立ち昇った。

 フィンの掌から溢れ出した高密度のナノマシンと純粋エネルギーが、実体を持って編み上げられていく。


「な、なんだ……!? 質量保存の法則を無視して、物質が構築されているのか……!?」


佐野宏樹がコンソールに張り付き、狂ったように数値を読み取る。


「馬鹿な……。これは我が国の……いや、人類の技術を数百年先読みしている。……いや、数千年も先か!」


数秒後、光が収まった場所には、透明な結晶体で構成された六基の『高濃度生命回復医療ポッド(バイタル・リジェネレーター)』が並んでいた。

 フィンは、もはや動かないアリシアたちの身体を、震える手で一人ずつ、慈しむようにポッドへと納めていく。


「……お願い。僕の大切な家族を……返して」


ポッド内に、核融合エネルギーによって超活性化されたナノマシン液が満たされる。

 削り取られていたアリシアの四肢、ガルドの裂けた胸部、リッカの傷ついた臓器。それらが目に見える速度で「再構成」され、修復されていく。


「……ふぅ。……心拍、確認。バイタル、正常値へ復帰中」


サンテスの報告を聞き、フィンはその場に座り込んだ。全身の毛穴から蒸気が噴き出し、限界を超えた熱量が大気を揺らしている。


「……君。君は一体、何者なんだ」


吉川所長が、震える声でフィンに問いかけた。

 フィンは、ポッドの中で安らかに眠るアリシアの顔を見つめながら、静かに微笑んだ。


「……僕は、あなたたちが遺した『希望』です。……そして、あなたたちの失敗を、今度こそ終わらせに来た『息子』です」


その言葉の重みに、吉川と佐野は息を呑んだ。

 彼らがこれから直面するはずだった「絶望」。それを知る未来の子供が、自らの命を削ってまで自分たちを助けに来た。


「……佐野。この子の言うことが本当なら、俺たちの計画は……」


「ええ。僕たちは、この子を創るために、これから『地獄』を歩むことになる。……でも」


佐野宏樹は、自分の設計図サンテスの未来の姿であるフィンを見つめ、初めて眼鏡の奥の瞳を和らげた。


「こんなに美しい『結果』が待っているなら……その地獄も、悪くないかもしれない」


だが、感動の再会に浸る時間はなかった。

 管制室のメインモニターが、突如として砂嵐ノイズに染まる。


『――見つけたぞ。1100年前の、原始的な揺り籠か』


時空を越えて響く、あの不快な合成音声。

 サイボーグと化した狂気の技術者・草薙クサナギが、フィンの開いた「時の穴」を無理やり拡張し、過去の世界へとその魔の手を伸ばし始めていた。

医療ポッドの生成、まさに「無尽蔵」のエネルギーのなせる業です!

仲間たちが一命を取り留めたことで、ようやく反撃の準備が整いました。佐野宏樹も、未来の自分たちの「作品」であるフィンの凄まじさに、畏怖と希望を感じています。

次回、第48話。1100年前の過去に、サイボーグ化したクサナギが強襲。新旧の技術が激突します!

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