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第44話:再会の咆哮、そして「未完の光」

明かされるマリアンの正体と、フィンの存在理由。一千年の時をかけた「進化」が、ついに完成の時を迎えます。

魔王城の深淵、心臓部を囲む円環状の回廊。

 突如、壁面がスライドし、闇の中から無数の赤い眼光が灯った。かつてハクの親を屠った個体を遥かに凌ぐ、原発防衛用ガーディアン――その数、優に百体。


「……っ、この数、一気に来られたら持たないよ!」


アリシアが冷汗を流し、折れたばかりの心を無理やり奮い立たせて『エクスカリバー』を構える。だが、殺戮の機械群が跳躍しようとしたその刹那、一人の女性がその前に立ちはだかった。


「――止まりなさい。父様の守護者ガーディアンたち!」


《鉄の梟》の幹部であり、魔族のなかでも異質な美貌を持つマリアンだ。彼女のその一声に、狂犬のように牙を剥いていた百体の機械たちが、回路を焼き切ったかのような沈黙と共に停止した。


『……な、ぜだ。なぜ個体名「マリアン」が、管理コードを使用できる……』


管理人格アビスのホログラムが激しく明滅し、その輪郭が崩れる。マリアンは悲しげに、けれど真っ直ぐにサーバーを見つめた。


「やめて、お父様。もう、こんな悲しいことは終わりにしましょう」


『……ま、まさか。真理子まりこ……。真理子なのか!?』


アビスの絶叫。世界を憎む怪物へと変えたのは、誰よりも愛した愛娘・真理子が魔素に侵され、目の前で人ならざる「変異種(魔族)」へと変わり果てていった絶望だったのだ。

 理性を失い森を彷徨った数百年の果て、彼女は記憶を取り戻し、父の過ちを止めるために「運命の子」を探し続けていた。それが彼女が《鉄の梟》に身を置いていた真の目的だった。


「お父様、あなたが最初に目指したのは『浄化』ではなく、この星と共生するための『廃炉』だったはずよ。そのための鍵……未来の希望は、今ここにいます」


マリアンが指し示した先には、呆然と立ち尽くすフィンがいた。


マリアンの介入によって生まれた僅かな静寂の中、フィンの脳内でAIサンテスの演算が爆発的に加速した。かつての開発者・佐野宏樹がサンテスに遺した「真のプログラム」が、フィンの深層意識で解凍されていく。


「……サンテス、分かったよ。廃炉に必要なのは、爆発的なエネルギーを『消す』ための、さらに巨大な『無尽蔵のエネルギー』なんだね」


『肯定します。炉心に固着した超高濃度魔素を中和し、安定化させるには、核分裂を遥かに凌駕する「核融合」の出力が必要です。しかし、太陽の如き熱量を閉じ込める「炉」の素材が、この世界にも、かつての世界にも存在しませんでした』


異世界のあらゆる魔鉱石を試しても、核融合の熱には耐えられなかった。そこで佐野宏樹とサンテスが辿り着いた、狂気とも言える「解決策」。


――それは、人工生命体の肉体を用い、一千年という悠久の時間をかけて「生体組織と融合した核融合炉」を育て上げること。


「……じゃあ、サンテス族のみんながマイクロ原子炉を積んでいたのは……」


『ええ。一族が世代を重ね、その環境に適応し、原子炉を自らの臓器として完全に制御できる個体が現れるのを待っていたのです。マスター……貴方の胸にあるのは、原子炉ではありません』


フィンの胸が、青白い光ではなく、透き通るような純白の輝きを放ち始める。


『それは、一千年の進化の果てに完成した「生体核融合炉」。貴方自身が、この原発を永久に眠らせるための、唯一の「リアクター」なのです』


フィンは、自分の胸を強く押さえた。

 自分は所長を呼び覚ます鍵ではない。所長の絶望を、その命の輝きで包み込み、永劫の安らぎを与えるために生まれてきた存在なのだ。


「アビス……。いいえ、吉川所長。見ていてください。僕が、あなたの悲しみを全部、溶かしてみせます」


少年の小さな身体から、太陽の鼓動が溢れ出した。

マリアン(真理子)さんが所長の娘だったという衝撃の展開! そしてフィンくんの胸にあるのが「核融合炉」……。一千年の世代交代は、この一撃のためだったのですね。

次回、第45話。この光を狙うクサナギの裏切り、そして将軍の死。

物語は最高潮の熱量で加速します!

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