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第4話 氷の眼差し、鋼の計算

「……報告しろ」


将軍の率いる群は先細の50名を除いてすでに1キロほど離れた森の中にいた。


将軍の低く、乾いた声が響いた。


その視線の先には、先ほどリンが「光の星」となって砕け散った爆心地がある。


地面はガラス状に溶け、周囲の空気はいまだに異常な熱を帯びていた。


「はっ。兵士の一人が命令を破り村民の胸を突いたものと思われます。全員遺体は跡形もなく……」


副官は、事務的な口調で淡々と数字を読み上げる。


彼にとっては、一人の少女の死も、ひとつの街が消えるほどの閃光も、イレギュラーだとは言え、起きてしまえば貴重なデータとして無駄にしなければいいだけだ。


将軍は無表情で頷くと、視線を移した。


そこには、家畜のように搬送用の檻に押し込められた首を切り落とされた男の胴体――フィンの父、ガイルの姿があった。


「……そちらの男の胴体は無事か。自爆を試みたようだが、戻って研究機関で調べれば何か見つかるかもしれぬ」


「はい。実際に伝承の類ではないことが解ったので本国へ移送後、くまなく調べ、あれだけの威力、再構築リビルドの素体としてうまくいけば我らの強力な兵器として使用可能かと」


「よかろう。サンテス族のマナと魔素の両極を制御するそのからくり、我々が正しく使ってやるのが彼らにとっても本望だろう」


将軍は冷たく笑い、石畳に転がっていた「何か」を軍靴の先で転がした。


それは、かつて誰かの身元の証明ともなる耳飾りを無造作に足で払った。


「再度兵を放ち生存者がいないか、探索しますか」


副官の問いに、将軍は一度、黒く染まった北の森へ目を向けた。


だが、すぐに興味を失ったように背を向ける。


「不要だ。


あの爆心地から数キロ圏内にいたのだ。


衝撃波と高濃度魔素の暴露ばくろにより、内臓は既に焼き切れているだろう。


仮に生きていたとしても、サンテス族一人の力で何ができる。……時間の無駄だ」


「承知いたしました」


「全軍に告げよ。


撤収だ。次の目的地は鋼鉄都市アイゼン。


……あそこの技師共には、この『データ』をたっぷり見せてやる必要があるからな」


将軍の翻したマントが、風に舞う灰を散らした。


ガシャン、ガシャンという無機質な軍靴の音が遠ざかり、やがて巨大な輸送部隊がアイゼンへと向けて動き出す。


彼らが去った後に残されたのは、真っ黒にえぐれた大地と、

そこに唯一残された少年の、血を吐くような泣き声だけだった。

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