表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/36

第24話:伝説の遺児と、静まり返った森

森の深部でフィンが出会ったのは、自分と同じ「独りぼっち」でした。

「……なんだ、この静けさは」


副団長のガルドが、低く唸るような声を出した。

エリュシオン大森林のさらに深部。いつもなら魔物の咆哮や羽音が絶えないはずの場所が、今は死に絶えたように静まり返っている。


「フィン、私の後ろから離れるなよ。ここは……何かがおかしい」


団長のアリシアが、冗談抜きの真剣な表情で大剣の柄に手をかけた。今回の討伐には、「自分も強くなりたい」と志願したフィンも同行している。だが、周囲に漂うのは、生物の本能を逆撫でするような「無機質な死」の気配だった。


一行が木々の開けた場所に辿り着いた瞬間、その光景に息を呑んだ。


「これは……伝説の魔物、『フィンリル』か……?」


そこには、巨大な銀色の狼が横たわっていた。神話に語られる森の守護獣。それが、抵抗した形跡すらほとんどなく、腹部を「何か」によって正確に貫かれ、息絶えていた。


「クゥ……ン……」


冷え切った親の死体の影から、小さな、本当に小さな銀色の塊が這い出してきた。フィンリルの子供だ。親を失い、恐怖に震えながら、冷たくなった親の体に必死に鼻先を押し付けている。


「……生き残りがいたのか」


リッカが近づこうとしたが、子狼は鋭い牙を剥き、全身の毛を逆立てて威嚇した。その瞳には深い絶望と、世界への拒絶が宿っている。


「僕が行きます」


フィンが静かに歩み出た。


「待てフィン! 弱っているとはいえ伝説の魔物の仔だ、危ない!」


「大丈夫です。この子は、僕と同じだから……」


フィンは、かつて村が焼かれ、父を奪われ、独りきりになった時の自分を重ねていた。

彼は子狼の前に膝をつくと、ゆっくりと手を伸ばす。


「もう、怖がらなくていいよ。……君を独りにはしない」


フィンの手から、温かな『マナ』が溢れ出す。それは傷を癒やす魔法ではなく、ただひたすらに寄り添うための柔らかな波長。量子AI「サンテス」が、子狼の乱れた精神波を解析し、フィンを通じて最も安らぐ周波数を送り届けていた。


「クゥ……?」


子狼の警戒が、ふっと解けた。

自分に向けられたのが「獲物を見る目」でも「利用する目」でもなく、ただ純粋な「共鳴」であることを理解したのだ。子狼は恐るおそるフィンの指先を舐め、やがてその胸に飛び込んで顔を埋めた。


『――対象との精神結合を確認。従魔契約を承認しますか?』


脳内に響くサンテスの声に、フィンは心の中で頷いた。


しかし、再会を喜ぶ暇はなかった。

ガルドがフィンリルの死体を検分し、顔を強張らせる。


「姉御、見てくれ。この傷口……魔物の爪や牙じゃない。……熱線で焼かれたような、極めて滑らかな断面だ。それにこの金属片……見たこともねえ材質だぜ」


アリシアがその破片を手に取り、忌々しそうに北の空を睨んだ。


「フィンリルを子供も守れねえほど一撃で仕留める『何か』が、この先にいやがる。……野郎共、一度撤退だ! フィンとこのチビを連れて、村へ戻るぞ!」


一行は、背後に忍び寄る「未知の脅威」の視線を感じながら、急ぎ森を後にした。

新しい家族(?)が増えましたね!でも、フィンリルを倒した相手は一体……。

次回、子狼とのほのぼの生活。フィンの可愛さが爆発します!

面白かったら、ブックマークや評価、お待ちしております!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ