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王女ですが、可愛いウエイトレス目指します!  作者: 浦 かすみ


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19/27

悪癖

更新遅れまして申し訳御座いません



 つ……疲れた。朝から夜会の準備で大忙しだった。


 今晩の夜会に向けてお風呂→頭皮マッサージ→オイルで全身マッサージ→蒸しタオルでマッサージ。


 今、小腹が空いたのでクッキーを食べている。この後、ドレスを装着(敢えて装着と表現)してから髪を整えて、いざ夜会へ……となるわけだ。


 陰キャ気味の私は、社交が一番苦手なんだよね。よりにもよって今日は隣には凄すぎる比較対象なシュリーデがいる訳だし。


 先程から何度も溜め息をついていると、私の事を良く知っているネリーが、ホットミルクの入ったカップを差し出しながら聞いてきた。


「姫様、また緊張されてますぅ?」


「緊張しない人が信じられないわ」


 とか、言っていたのだけれど、そうだった。緊張が一切顔に出ない人と一緒に夜会に出るんだった。


 夕刻、準備を整えて玄関ホールに向かうとシュリーデが先に来て待っていた。


 ふあぁぁぁ……カッコイイ!


 王の白銀色の髪が神々しく輝き、その美麗な眼差しでこちらを見詰めている。その覗く瞳の色は紺碧色、確かに白銀の王に似てるわ~シュリーデやっぱりイケメーーン!


 私が近付いて来たのに気が付いたのか、シュリーデがこちらを見た。


「ローズベルガ、今日は一段と美しい。今宵、殿下の美しさをお傍近くで愛でさせて頂ける喜びを嬉しく思います」


「!?」


 何故、何故ぇそんな薔薇の花が飛び散ってそうな台詞を真顔で言えるのよぉ!?


 シュリーデは膝を折って私を出迎えた後、流れるような動きで私に手を差し出した。


 その間ピクリとも表情は動かない。あ、表情筋の死滅がシュリーデの通常運転だったね。


 そのままシュリーデにエスコートされて馬車に乗り込んだ。


「実は先程」


 シュリーデは馬車が動き出した途端に話し出した。 


 相変わらず饒舌なのよね、表情とお喋りが一致しないけど。


「マーガレド伯爵からご連絡を頂いていて、今日の夜会にファンナ=マーガレド伯爵令嬢がこられると、俺とローズに話したいことがあるとのこと、何かな?」


 ん?ファンナ=マーガレド伯爵令嬢って誰?……あっ!


 シュリーデの婚約者、アエリカ=ラナウェル伯爵令嬢と駆け落ちしたギルバート=コンフラス侯爵子息の元婚約者のご令嬢ね!


「ファンナ=マーガレド様」


 私が呟くと、シュリーデは頷いてから話しを続けた。


「その当時、ファンナ嬢はギルバートの裏切りに遭われたのに、逆に醜聞の的にされてしまった。恥ずかしい事なのに、夜会に来ている恥知らずな令嬢とまで噂されていたと聞いた。おかしいと思わないか?悪いのはアエリカ=ラナウェル嬢とギルバートなのに、理不尽だよ」


 シュリーデは悔しそうな表情を浮かべた。


 うん……理不尽だよね。あっちが悪いのに捨てられた方が嘲笑されるなんて。


「マーガレド伯爵令嬢は、王家主催の会以外は欠席することが多くなったんだ。恐らく今回の出席は俺がローズと婚姻したことで、何か話があるのかも?いや女性の心理は分からないな。もしかして詰られるのかな」


「え?確かに……すみません」


 私が詰られるの言葉に反応すると、シュリーデが珍しく?表情を暗くした。


 私がこれほど不幸なのにお前は何で幸せなんだよ!と、八つ当たりをする人間はどこにでもいる。


 ファンナ=マーガレド様がそんなご令嬢かもしれないという気持ちも分かる。


 でも確かファンナ=マーガレド様って、そんな風な雰囲気の方ではなかったはず?私もご挨拶程度でしかお話ししたこと無かったけど、自信ないな。


 という訳で、ちょっと落ち込んでいるシュリーデと共に夜会会場(王家主催)の王城に到着した。


 そして流石はシュリーデ、会場に着いた途端に公爵子息のスイッチでも入ったのか、表情筋を笑顔に固定したまま、優雅に微笑みながら私をエスコートしていく。


 ああ……この顔だわ。いつも夜会で見ていた顔は、今なら分かる。笑顔で固定しているだけで表情筋が動いていないことが分かる。


 胡散臭い笑み、これだね。


「ローズ、顔が強張ってるけど、緊張している?」


 のわっ!?耳元でシュリーデが息を吹きかけながら聞いてきた。思わず耳を押さえながらシュリーデを軽く睨んだ。


「緊張しない方がおかしいわ」


 シュリーデが胡散臭い笑みから、蕩けるような微笑みに変えた。周りからホォというような賛美の溜め息が聞こえた。


「それでいつも不機嫌な表情をしていたの?あれって緊張してたんだ」


 黙って頷くと、背中に回したシュリーデの手に力が籠り、腰をシュリーデの方へ引き寄せられた。


 そのままグイグイと引っ張られて国王陛下、国王妃、ベリオリーガお兄様、ルコルデードお兄様の前まで歩いて行った。


 近付きながらお父様達に笑顔を向けると、皆は一斉にホッとしたような顔を見せてた。


 シュリーデと私の仲のことで、心配させてるんだよね。


 シュリーデとふたり、国王陛下の前でご挨拶をして、近付いて来るお兄様二人を見上げた。


「ローズ!ドレス良く似合ってるぞ~シュリーデの贈り物か!」


 ガハハと笑いながら長兄のベリオリーガお兄様が、シュリーデと仲良しアピールをしてくれている。


 多分、周りに聞こえるように褒めてくれているのだと思われる。


 暑苦しいけど、優しいのよね。ベリお兄様って。


 ルコルデードお兄様はシュリーデに近付くと、何か耳打ちしている。シュリーデは何度か頷き返している。


 シュリーデは私の方を見ると耳元に顔を近付けて来た。


「ファンナ=マーガレド伯爵令嬢が別室で待っているそうだ。どうやら殿下方にも話が通っているようだな、令嬢に詰め寄られたりはなさそうか」


 まだ心配してたのかな?意外にも癇癪を起した女の子への対応は苦手みたい。


 暫く知り合いの令嬢や子息方とご挨拶をかわしてから、お兄様方に付き添われて貴賓室へと移動した。


 室内に入ると、燃えるような赤い髪をした令嬢が腰を落としてカーテシーをされていた。


 そうだわ、ファンナ=マーガレド伯爵令嬢はこの印象的な赤色の綺麗な髪のすごい美人だった。


「お久しぶりで御座います、ファンナ=マーガレドでございます」


「ファンナ=マーガレド伯爵令嬢、ご健勝でありましたか?」


 シュリーデはそう言って、ファンナ様の前に立たれた。


 顔を上げられたファンナ=マーガレド伯爵令嬢は美しかった。女性の私から見ても羨ましいほどの透き通るほどの白い肌で瞳は新緑色。意志の強そうな瞳の美しい令嬢だった。


 私の方を見られたファンナ=マーガレド伯爵令嬢は嬉しそうに微笑まれている。


「プレミオルテ子息、良かったですわ、本当に」


 あれ?何故だか思っていた反応と違うし、おまけに本当に嬉しそうにされてる?


 ファンナ様はベリお兄様に促されて、ソファに腰かけたので、私とシュリーデも対面のソファに座った。


 ファンナ様は先程の笑顔から一転、硬い表情になられている。


「ベリオリーガ殿下、ルコルデード殿下、本日はこのような席を設けて頂き、感謝致します」


 ファンナ様の言葉にお兄様達は頷いて微笑みを浮かべている。


 ファンナ様は幾分表情を和らげると、シュリーデに話しかけた。


「いつかはお話ししようと思っていました。ただ確証が無いと申しますか、私の思い込みだと言われてしまうと納得をせざるを得ないことだと思うことですが、今なら……過去と決別してローズベルガ殿下と共に歩まれようとされているプレミオルテ子息なら、お聞きくださるのではと考えました」


 何をお話しされるんだろう?ファンナ様が私の方もご覧になられたので、頷き返すと少し微笑まれた。


「私の元婚約者のギルバート=コンフラス侯爵子息と駆け落ちしたとされる、アエリカ=ラナウェル伯爵令嬢に、私は執拗に執着されていたように思うのです」


「執着……とは具体的にどうしたのだ?」


 ベリお兄様が訪ねると、ファンナ様は悔しそうな悲しそうなお顔をされていた。


「ある茶会に出席した時に、アエリカ様が私と同じドレス、靴、宝石を身に着けていたのです。私はそんな偶然ある訳ないと思っていますし、その茶会でアエリカ様は私に向かって『私と同じ物を揃えて浅ましい子ね!』と罵り、おまけに自分の方が似合っているだろう、と声高に笑っていました」


「!」


「私の傍仕えのメイドからの情報をアエリカ様が手に入れていたと思われます。両親も気味の悪いことだとしつつも、確証が得られないのでそのままになりました。それからは私の所持するドレス、宝石は悉くアエリカ様が先に所持して茶会や夜会で会う度に、私を盗人と呼び、罵声まで浴びせるようになりました」


「酷いな」


「その話は公爵家のキアリアから聞いたことがある。聞くに堪えられない罵声を浴びせていたと。他のご令嬢方からも聞き及んでいる」


 ベリお兄様の言葉に皆が頷き返した。ファンナ様はお兄様に微笑みかけた後、話を続けた。


「幸いにも、私がそんな嫌がらせをする性分では無いことは、友人知人達が知っておりましたので、アエリカ様が一方的に突っかかってきているということは周りの知ることになっていました。ただ、私には分からないのです。何故そこまでして私の所持しているドレスや宝石と同じ物を手に入れてご自分で持ちたいのかが」


「うん、変わった嗜好の持ち主だな。あ、私の元婚約者だが」


 シュリーデが変な注釈を入れている。変わった性癖?はシュリーデのせいじゃないから気にしなくていいんじゃない?


 それにしても他人の物を欲しがる女、か。ということは……もしかして?


「ではアエリカ様は、ギルバート様のことも欲しがったのでは?」


 私がズバリと聞くと、ファンナ様は顔を強張らせて首を傾げながら頷いている。


「確証はないのです。両親もアエリカ様に情報を漏らしていたらしいメイドを解雇して、暫くはアエリカ様に真似?をされることも無くなっておりました。そのせいで油断とでもいいましょうか、まさか今度は人……私の婚約者を欲しくなるなんてと、思いもしなかったのです」


「ああ、そうなるか」


「なるほどなぁ……こうなると人のものばかりが欲しくなる悪癖ということだな~」


 お兄様達が、大きな溜め息をついた。


 ファンナ様は体を震わせていた。


「アエリカ様がギルバート様を私から奪いたくて、このような結末を迎えたのではないかと思うと、それに巻き込んでしまったプレミオルテ子息に申し訳なくこんな戯言と称されても仕方ない話をお聞かせすることになりました。本当に私のせいで申し訳ありま……」


 謝罪を口にするファンナ様の言葉を、シュリーデが鋭く制した。


「ファンナ嬢のせいではありませんっ!す、すみません。口調が荒くなりまして。ですが、重ねて申し上げますが、決してご令嬢が悪い訳ではありません。そのような浅ましい気持ちを抱いていた私の元婚約者の悪癖のせいですし、それに影響されてあなたの気持ちを踏みにじったギルバートが悪いのです。ファンナ嬢が謝られることも、気に病まれることも無い。堂々と胸を張って公の場にお出になって下さい。令嬢が沈み、人目を避けていることの方がアエリカを悦ばせて増長させているのではと推察します」


「そうよっ!そのとおりっシュリーデ流石っ!……すみません、お話の続きどうぞ」


 思わずシュリーデに向かって拍手をしてしまった。私の旦那様ぐう正論で最高にカッコ良かった。


 ファンナ様は肩を震わせると、とうとう泣き出してしまった。


 するとベリオリーガお兄様がファンナ様の側に来られて、ファンナ様の肩を擦ってあげている。


 美男美女の綺麗な絵図だ。ぽ〜っと見惚れている私達に向かって、ルコルお兄様が言った。


「つまりさ~そのアエリカ嬢が人の持ち物が欲しくて、かっさらうのが趣味な訳でしょ?その手に入れた後ってどうなってるんだろう?」


 ルコルお兄様の発言に私達はお互いの顔を見回した。


今はギルバート様ってどうなっているんだろう?



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